第2話 ファーストラック

アップデートVer.12.48.0550


新しい景色。新しい兵器。新しい技術。新しい魔法。


いつものシステムアップデートではない。


中身がガラッと入れ替わるアップデート。


これで戦争が大幅に変わる。


特にロボット乗りの傭兵は特に。


今回追加される新型ロボットHBMヒューマンバトルメックはいままでの量産型とは違いオリジナル系統に位置すると考えられてきた。


それを示唆するのはVer.12.48.0550のPV。


いつもとは違う花束が地面に倒れている所から始まる。


曇り空で暗い中複数の兵士がその周りを走り、花束は蹴っ飛ばされ、その場に残った兵士の足跡を一回り大きい足が踏み潰した。


HBMの足だ。泥で汚れ、塗装が剥げ、ぶつけたのか凹み傷もあり、よく使われた人みたいな足。


カメラが上がり全貌が見える。


背中から生えた3本目の腕。赤く輝く複眼の顔。飛んでくる鉛玉を弾く重厚な装甲。


そして、特徴的な背中のロケットブースター。


ロケットブースターが点火した。


そして空へ飛び、急斜面を下り、目の前の林から突如出てきた別のHBMへ左手の銃口を向ける。


それで終わり。


その2機が今後の戦況を変える。


そう考えられたのだ。


「アップデートから5分。流石にまだ見つかってないでしょ」


アップデートが始まった後。


それは情報戦の始まりである。


怪しい場所。推察。ミッション。様々な情報を買い、売り、騙し、協力し、裏切り、裏切られる。


ここで勝つなら一人で動く事だ。それを知ってるのは実力のある極少数。


と、実力は無いが知ってる人。残念だが彼は後者である。


だが、知ってるだけではない。一応考えてはいた。


「なんかここだけマップと合わないんだよな……地形が」


それはとある崖。マザークロードマインと言われる地雷原付近の崖である。


大戦時。大量の地雷を仕掛けたが最終的に引っ掛からずに負けた敗戦国の名残。はた迷惑。


だが、マップの地形図と見比べると確かに高低差がおかしい。


何か穴があるような……


C4爆薬セット……3.2.1.爆破」


なのでとりあえず爆破させてみる。


建物破壊表現のあるゲームでは偶に破壊しないといけない障害物があったりする。


なのでもしかしてと思い爆破してみた。


「………マジか」


大当たりだ。川で偶然見つけた宝石のようにこの崖に穴という宝箱があった。


あとはその中身。開けてびっくり玉手箱。襲われてびっくりミミックちゃん。


な〜んてならない事を祈りながら入る。


「研究所?何故こんな所に?」


中は狭い通路が迷路のように張り巡らされている小さな研究所だった。


地下一階、二階、三階と降りたが、見つかったのは日記と何かの説明書。


まずは日記から読んでみる事にした。


「えっと……『周りを囲まれてから何日立ったのだろうか?自らを守る最強の防壁が今や収監所の鉄格子のようになってしまった。食料はあと僅か。ならばせめてこの子だけでも旅立てるよう命を』『完成した。だが、旅立つ為の食料がもう無い。だからここに書いておこう。主人公よ。私達の娘を頼む。そして死ね、未来のために』なんだこれ?」


最強の防壁が収監所の鉄格子?私達の娘?そして死ね?意味がわからない。


「まあ、だがなんとなく何かを遺して死んだっぽいな。あと地下に一階ある……そこで吉と出るか凶と出るか……だな」


エレベーターの地下四階を押す。


エレベーターの扉が閉まる。そして、降り始めた。


何秒……何十秒……いや、何分だろうか?


長い時間降りてやっと停止したエレベーターの扉が開く。


「は、ははは……なんだよ………これ……?」


何故こうなったのだろうか?


腐敗した酷い悪臭。


ミキサーにかけられたようにミンチの肉。


真新しい血。


そして、視界の奥にひざまずく大きな何かが……


「どういう事だ……?」


彼は一歩退いた。





――――――――――





※大戦時。大量の地雷を仕掛け身を守ろうとしたが、最終的に忘れ去られ、出られずに餓死した廃研究所。設備はまだ動き、極少量ながら兵器の研究をしていた。

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第210特殊部隊オンデューネ VRMMO戦記 デルタイオン @min-0042

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