第1話 30歳になったら死んでやる

目が覚める。

もうとっくに太陽は昇っていて部屋が明るい。

心臓が高鳴り、冷や汗が出てくる。


しまった、今は何時だ、完全に遅刻だとりあえず会社に連絡しないと…。


枕元にある携帯に手を伸ばす、上司からのメールが来てないことを不思議に思いつつも慣れた手つきでパスワードを入力し電話をかけようとする、その瞬間頭を殴られたようにハッと気がつく。


「そうだ、俺会社辞めたんだった。」


全身から一気に力が抜け時計を確認するとまだ7時30分だった。

安心すると急に眠気が襲ってきた、どうせ何をしなきゃいけない訳でもないんだ。

二度寝することを決めて布団の中に潜り込む。


別に会社に不満があったわけじゃない。

よくあるブラックだからとか人間関係がみたいな理由も特にない。


世間一般で見たら俺の勤めていた会社はいわゆるホワイト企業ってやつだった。

上司は優しいし同期もいい人たちばかりで恵まれた環境にいた。


仕事内容もそりゃ少しは大変なこともあるけど無理難題を押し付けられる訳でもなかった。


じゃあなんで辞めるんだよ。

親とか友達、同期にもよく言われた。


その理由は1つ。

俺は自分の人生に満足できなくなってしまっていた。


高校を卒業して以来何となくで就職し何となく働き、何となくで今日まで過ごしてきた。

目標だとか夢とか大層なものも勿論持ってない。


ただ毎朝電車に揺られ、昼は働き、夕方また電車に揺られ、夜になればゲームをやったりアニメを見たりして寝る。

そんな生活を繰り返していた。


こんな当たり前な日常に満足も不満足もしていなかった。


ただある時青春系アニメを見ていてふと考えてしまった。


俺は一生この繰り返しで終わるのかと。

65歳、いや俺たちの年代なら75歳までは働くことになるだろう。


彼女などいないから結婚する予定もなく延々と独りこんな日常を送っていくのかと。



死ぬその瞬間に満足のいく人生だったと言えるのかと。


子供の頃の自分に胸を誇れるような人生を俺は送れているのかと。


そんなことを考えたら急に自分の人生がとてもつまらなく、もしかしたら生きてる意味すらないのかも知れない。そんなことまで思ってしまった。


まあつまり自分の人生に絶望したんだ。


だから俺は人生懸けてもいいと思えるくらい本気で好きなものを、生きる理由を見つけたいと思った。


どうすれば本気で好きなものを見つけられるか、色々と考えた結果今までやりたいと思ったことを全部やっていくことにした。


そのために俺は会社を辞めた、先ずは自由になってみたかった。


え?さすがにそれは軽率じゃないかって?


いいんだよ高校卒業してから貯金を続けてたからお金はある程度あるし、何より30歳までに生きる理由が見つからなかったら死んでやるんだから。


25歳 夏


タイムリミットまで後5年

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30歳になったら死んでやる @Gryouu

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