亡き父の後を追って女性騎手となった卯月璃乃と、優良な血統を持ちながらも勝てなかった競走馬ブルーフレアがコンビを組み、レースに挑んでいく物語。
オークスが牝馬のレースだと知らなかった私くらいの知識の読者にもすんなり読めるくらいに、専門用語に頼らず分かり易い文章で書かれており、競馬場の様子がよく伝わってくる。
それでいて、これはとてもマニアックに競馬について描いた作品でもある。おそらく、作者なりの世界が頭にあって、それを描いているのだろう。沢山の登場人物や競走馬が登場するが、各々のプロフィールや成績など、細部まで作りこまれた設定があるだろうことを窺わせる。
主人公、璃乃は天才と呼ばれた騎手の娘だ。つまりはサラブレッドと呼ばれる存在ではあるが、競馬の世界では良い血統同士を組み合わせることなど当たり前。
極限まで高められた才能同士のぶつかり合いだ。
そんな中で勝ち抜いていくためには、馬と騎手との信頼関係は絶対になくてはならないもの。二人がどうやって信頼を築き、勝ち抜いていくのか見ていきたい方は、一度読んで損はない一作だ。
私の友人は、高校の頃から競馬に夢中でした。
30代に入ってから、彼と別れました。
奥さんに隠れて馬券を買い、貯金を私に預けました。
そして、馬券の購入も私に委託するようになりました。
いつか、お金に手をつけたら友情は終わり。そう思い、私は預かっていた馬券とお金を返し、彼と決別しました。ギャンブルは人を変える。
私自身、ギャンブルにのめり込みそうになったことがあるからこその危機感でした。
この作品は、そういうギャンブル依存症とは無縁の物語ふぁという事はよく分かりました。でも、どうしても、前述のことが脳裏をよぎり、辛かった。
ごめんなさい。でも、この作品は、いい作品だと思います。
最初は主人公である女性騎手のライバルや師匠(調教師)といったところから始まり、徐々に話が広がっていきます。
競馬の世界を描くとなるとどうしても人物が多くなり、しかも完全に架空の世界ともなると読者が受け入れるのが大変なのですが、そのあたりは配慮を感じます。
架空の物語ですが、明らかに特定の人物や馬がモデルであると思われる部分もあるので、競馬ファンはにやりとするかも。
一方で戦績などは必ずしもイコールではなかったりするので、あくまでフィクションなのでしょう。
プロローグの時点で、物語のゴールはひとまず示されているようです。
果たして、そこに至るまでどのような展開が待っているのでしょうか。
(未完結につき暫定で★2つとします)
完全に競馬のことを『理解ってる』人が書いた小説です!
アナウンサーの方が喋る言葉一つ取っても、耳馴染みのあって競馬場やテレビの前にいるような感覚に陥ります。
他にも現実で用いられている用語・記号やモチーフがあったりと、普段から競馬を見ている人であれば、ニヤニヤしてしまうことがあるでしょう。
そして、二世騎手や女性騎手という現実の競馬界でも話題になる部分をモチーフにしているため、競馬好きとしては先が気になって仕方がないです。
馬の方も重賞だけでなく未勝利戦から扱うなど、華があるところだけを描くのではない所に好感がモテました。
競馬を詳しくない人だと専門用語などがわかりづらい部分があるかもしれませんが、臨場感や熱さは伝わるのではないかと思いますので、この作品で競馬に興味をもってもらえると嬉しいです。