第22話

「何?」


 主犯とされる魔法師を拘束し、拘置所へ転送している最中のことだった。より学園側での爆発に驚いた。

 あちら側は全くと言っていいほど整備されておらず獣道すらない森であった。故に報復に来るのではとよんだのは正面だった。だが、まさか裏というのには驚きが勝った。


「おい、さっきの爆発ー」

「あとは任せた!」


 妙な胸騒ぎを覚え、爆発の方向へと向かった。


「ったく…俺は生徒会じゃないつーの」


 太閤が拘束を引き継ごうと振り向いたときには彼らの姿は塵とかしていた。

 周囲に気配などはなかった。

 誰かがやったのか、はたまた逃げられないと知ったことで自身で抹殺したのか。


「ちっ、分かんねーな…」


 頭を掻きながら、呟くしかなかった。






「周辺を警戒しろ。先程の発砲で増援が来るはずだ。そちらに備えろ」


 男の号令で、左右の戦車が散開していく。彼らも魔法師の驚異をわかっているようで、すぐさま戦線を離脱するようだ。


「やってくれたわね…」


 その場に立ち上がるカナリア。

 煙による顔の汚れこそあるもののほぼ無傷だ。


「やはり化け物…くそっ!」


 男はマシンガンを取り出し、カナリアに向けその一点だけをめがけ連射した。

 ダダダダダダダダダダダダ………。

 何百発とはなったが、彼女を覆うシャポン玉に似たもので防がれる。


「もう…いいかしら?」


 彼女はそう言って大剣を取り出し横に一閃した。

 一瞬の時間の静寂の後に戦車は横に真っ二つにされると同時に血しぶきも上がった。


「最後は…あんたよ」

「………やっぱり、化け物だー」


 カナリアはもう一度横に一閃した。剣を一閃した音もなく血しぶきがどびちっていった。






 学園近くの森の中…。この学園は山の7合目のところに平行になるように少し山をえぐって作られている。故にここは東側の頂上から見下ろせる形となる。


「………」


 コート姿の男が、その状況を見下ろしていた。服により少しばかり膨らんでるが、痩せ型の部類である。かと言って顔はいかにも中堅貴族という出で立ちで、細い目をしている。

 その表情は爆発があっても特に代わり映えしない。

 しばらく見つめたあと、ため息を付いて後ろを振り向いた。


「やあ、こんちはー」

「……どうされたのかな?」


 彼は目を見開きつつも声には出さず冷静だった。帽子を被り直しながら、そう聞いてきた。


「質問に質問で返していいかわかんねえけど、どうされたい?」

「たしかに不謹慎だ。…でも、答えよう。そこを通してもらえるかな? 帰りたいんだ」


 笑顔を作りつつもその細い目で俺をにらみつける。

 確かに俺の後ろには透明な壁を用意させてもらった。


「どこにだ? 俺的には地獄がいいと思うんだけどなー」

「ふざけてんのか?」


 俺はさらに挑発した。

 さすがにこれには腹が立ったのか、よりにらみが強くなった。


「ふざけてねぇ。お前のしたことに比べればな。どうして自衛隊まで焚き付けた?」


 怒気は強めず、淡々と声に出した。


「なんのことでしょう…私にはさっぱり…」

「おい、それで騙せると思ってんのか? 自分で語っておいて…なあ、アレン」

「…………」


 急にコートの男は黙り込む。睨みつけは継続しつつもより誠に対する警戒心を上げた感じだ。


「どうして私の名を? 君に名乗ったことありましたっけ?」

「アレン・ジファンド。フランス院魔法学園卒業後。表向きは貴族として議員をやってるのか。裏はもちろんノバドによる民の支配ってところか。もっと喋ってもいいんだぜ…」

「黙りなさい!」


 アレンという男は、手のひらを誠の方へ突き出した。すると、竜巻状の風が誠の方へ飛んでいった。

 誠は軽々とその風を切り裂いた。手刀の形で。


「あの短時間で覚醒したのか!?」

「ああ、そうかもな」


 そう言いながら自己加速でアレンに急接近、手を出そうかというところで『ファクトブレイク』と唱えた。


「まさかー」


 以前の男のように塵とかして消えた。

 落ち着くと風の流れを感じることができた。

 彼はため息をつくと、元の彼に戻った。

 学園とそれに囲まれた自然の景色を見ながら、深呼吸した。

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魔法世界に憧れて 小椋鉄平 @ogura-teppei

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