第2話 夏休みの終わりに
(今日のお弁当は、頑張った!早く高月君に食べてほしいな。ふわふわに包めた玉子焼きに、足の長さ違っちゃったけどタコさんウィンナーに……あ!)
「
「にひひー。まあまあ、座りたまえ高月君」
「あの、そんなに高速で椅子を叩かなくても……」
「くるしゅーない!わらわの隣が嫌だと
「あはは!滅相もござりませぬ。では、姫様。失礼
「か、カッコいい!はぅはぅはぅはぅ!」
「中濱さん近い!近いです!」
「……くぅ~ん、きゅんきゅん……」
「そんな切なそうな表情しないでぇ!じ、実は嬉しかった……です」
「はぅはぅはぅはぅ!うにゃー!」
「堂々巡りだよ!あっうそ、何で嚙もうとするの?!引っ掻くの?!く、くすぐったいってば!」
●
「今日もお弁当作ってもらっちゃってごめんね、いつも本当にありがとう!」
「私が好きで作ってるんだから、いいのです!にひひー。今日のお弁当、自信作なんだ!」
(むふー。海でお弁当を食べた高月君が、『いつもお弁当、ありがとう。今日のは特に美味しいよ!中濱さんをお嫁さんにする人は幸せだよね(ちらっちらっ)』とか言われちゃったらどーしよ……)
「ほ?……何でほっぺたツンってするの?!しーっ、て何で?……あああ、また?!き、記憶を……!あー、手を掴んじゃダメなの!ふにゅううううぅぅぅっ!」
「揺さぶり禁止、くっ……あの、さ!真横に座ってれば……聞こえちゃうよね?!い、以外に力強い……!」
「そこを何とか!そこを何とかぁ!」
「あっ……うそ、捕まったー」
「捕まえたぁ!揺さぶるよ?うやあー!あ!でもでも中濱さんの事は忘れないでね!忘れたら怒るよ!めちゃめちゃ怒るよ?!やだやだ、ひどいよぉ!」
「う。僕が、現在、進行形で、ひどい、目に、あってー」
【ピンポーン。仲良しのお二人様、仲良しのお二人様。本日もバスの車内では、お静かに願います。】
「「は、はい!ごめんなさいいぃぃ!」」
「な、仲良しぃ?えへへ!でも、優しい運転手さんごめんなさい!そしてまた高月君に乙女の秘密を……」
(私……高月君の事、『好き』じゃなくて、こんなに大好きだったんだ……)
●
「おおお!海!海だよ、高月君!」
「天気いいし、よかったね!レジャーシート持ってきたから、あの海の家でビーチパラソル借りよっか。ワクワクしてきたね!」
「うん!私も!」
(私と一緒だから、とかウソでもいいから言ってくれないかなぁ……)
●
「じゃっじゃーん!今日のお弁当、自信あり!ほっぺた、落とさないでね!見たい?見たいー?」
「えっ、さっき着いたばっかり……あっ、わかったから唇尖らせないで?!……朝から動き回ったから、小腹空いてきたー、お腹鳴っちゃうかも。お弁当食べる?」
「え?高月君、早くない?まだ朝の10時だよ?……ひあ!
「まったく、もう……!まあでも食べちゃって、後でお腹が空いたら海の家で軽くとかもいいよね、今食べる?お弁当を楽しみにして、朝ご飯食べてないんだ」
「食べる!私もお弁当作ってて食べてなかったの」
「おー!今日も美味しそうなお弁当!ありがとう!」
「私の料理の勉強に付き合わせちゃってごめんね?いただきます!今日はですね。タコさんウインナーでミニトマトを包み込んでぇ」
「ミニトマトがタコに襲われてるように見えるよ?!」
「にひひー。驚いた?」
「何かミニトマトを応援したい……あ、これも美味しい」
「やったぁ!」
(もしかして!周りから見たら、高月君の彼女に見られてたりするのかな……!)
●
「ね!足だけ海に入ろ!きっと冷たくて気持ちーよ!」
「そだね、行ってみよっか!」
「じゃあ競争!よーい、どっ?!あつーい!砂ぁ!!」
「中濱さん!スタートした瞬間に転んでる?!もうほら、手を掴んでー、よいしょ!うわ、砂だら……え?!ちょっと待っ……!」
「お覚悟ぉ!人を呪わば穴二つぅ!」
「死なばもろともだよね?!それ二人ともコケ、あ!」
「えやあー!どーだぁ、あああぁ?!」
「「ぶふぅ!あっつー!!」」
(抱きついちゃった!やったぁ!嬉しい!やったぁ!)
●
(きれいな夕陽。でも、もう……こんな時間。もう少ししたら帰らなきゃ。もっと一緒にいたいよ……時間、全然足りないよ)
「パラソル返してきたよ。うわー……夕陽、綺麗だね」
「……ね!座って一緒に見ようよ!」
「うん」
(手、つなぎたい。でもでも、嫌がられたら)
「いっぱい遊んだねー。日焼け止め使ったのにヒリヒリしてる。中濱さんは痛くない?大丈夫?」
「日焼け止めとUVカットは乙女の夏の基本だよ!SPFとPAがすっごいの、お母さんから借りてきたのだ!」
「わからないけど、何かスゴそうだね……」
(好きって……好き、って言ったらどんな……でも、断られたらきっともうこんな風に一緒にいれなくなっちゃう。やだよ……やだよぅ!)
「楽しい時間って、あっという間だね。……中濱さん大丈夫?疲れちゃった?」
「ううん!今日一日楽しかったなぁって」
(ずっと話しかけてたら、もっと一緒にいれるかな。お話ししたいの。横にいたいの。もう少しだけ……)
「そっか、だったらいいけど……時間的に、もうそろそろ帰らないと、だね」
「!……だね!いっぱい遊んだー!また、その、機会があったら来ようよ!みんなと一緒で……たまに二人でも!」
「……そう、だね」
(えっ……あんまりって感じっぽい?もしかして、楽しかったのって私だけ?一人ではしゃいで騒いで、迷惑に思われた?……泣きそう。ダメ……まだ泣いちゃダメ!)
「あの、さ。中濱さん」
「はーい!中濱明里でーす!……どしたの?高月君、疲れちゃったなら早く……帰ろ?今日は楽しかったー!」
(……泣きたくなるような事、言っちゃヤダ。せめて、せめて……まだ片想いで、いさせてほしいよ)
「……中濱さん」
「は、い……」
「好きです」
「……えっ?」
●
「去年席が隣同士になって、その時から好きでした。
この夏休みでもっと、好きになった」
「も!もう!か、からかってるんでしょ?!私はいつも騒がしくてだだ漏れで、女の子っぽくない中濱さんだよ?」
「今日、告白しようって思ってた。本気です」
「そんな事言ったら、私、本気にするよ?本気にしちゃうよ?!『ちょっと待って、やっぱりなし』は、だめなんだから!じゅーう、きゅーう、はーち」
「ゼロ」
「……!!」
「振られる覚悟で、告白、してます。返事はいつでもいいから、気持ちをいつか……あ、な、泣かないで!そんなに嫌だった、え?私の方が先に好き?……手を繋ぎたい?嬉しい!嬉しい!その前に、はい、ちーん、しよっか」
「えぐ、ぐす、ぐす…………ちーん!」
「うわ!めちゃめちゃ可愛……こ、こほん。とりあえず、時間も時間だし帰ろっか。て、手……つなぎながら!帰り道、たくさんいろいろな話しようよ!」
「あ、てて、手ぇですねっ!ふちゅちゅかもにょにょ右手でしがっ?!……右手と私っ!よろしくお願いします!」
「
「はいっ!!!」
(ウソ、ウソ!夢みたい!両想いだったんだ!夢じゃないよね?冗談じゃないよね?!高月君と手、つないでる!嬉しい!嬉しい!嬉しいっ!)
「あ!一緒に、ちーん、しよっか。僕も嬉しすぎて……」
「はいっ!!!」
「「ちーん!!」」
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