第3話 初めてのクリスマス


(あと、30分。うう、私服でふともも出すなんて小学校振りだよ!……黒いキュロットさんひざ上ストッキングさん、クリスマス、なのです。私を、お姉さんっぽく見せて下さいね?……も少し笑顔の練習!にこっ。にこにこー!ふにゃー。にひひー)


「……ショーウィンドウで笑顔の練習をしているお嬢さん、こんにちは」


(ふっふのふー……え?私?!……黒のコートを着た人が私の後ろにいる。高校生か大学生っぽいし、高月君が私にそんな事言わないよね。回避!)


「ああっ!高月だよ!」


「高月君を出せば振り向くと思ったかぁ!ってホントだ!……はぅ?!」


「おはよ中濱さん。今叫びながら振り向いてたよね……うわ、近い?!え?ど、どうしたの!僕、何か変?!」


(か、か!カッコいいー!バンドやってる人みたい!これはぁ!はぅはぅはぅ!)


「な、中濱さん、全部聞こえちゃってるから!周りにも!やめてー!」


「はい!いったんお口チャックします。じいいぃぃ、んんんん。……んんんんぁあ、にゃー!!開けました!でね、バンドの人みたい!」


「お口チャック五秒……。これ、従兄弟が着てるの見て欲しくなって、どこで売ってるのか聞いたら譲ってもらえたんだ。従兄弟はバンドやってるんだ……え!頬膨れてる?何で?!」


「……高月君がカッコいいお洋服で私をナンパした!ナンパ……する、の?」


「ナンパした事なんかないよ!あの、中濱さんが……その、可愛くて。今日一緒にいられるのが嬉しくて。だから、ふざけすぎちゃった。ごめんなさい。そんなウルウルした目しないで?頬へこませて?」


「むー。そんなこと言ったって中濱さんはごまかされないんだから……なら、どのあたりがカワイイですか!20文字以内でお願いします!今日、おめかししてみたの!清水きよみずの舞台から飛び降りてみたの!」


「と、飛び降りちゃったんだ。20文字?!うん、でも可愛い所は20文字以内じゃ言い切れない、かな。今日の服もとっても似合ってる、可愛い」


「はぅ?!」


「髪の毛、いつもよりふわっ、クルッとしてる。その髪型も可愛い」


「ひゃ!ひゃあ!」


「今日も周りの人に『僕の大好きな、自慢の彼女なんです!』って見せびらかしたいくらい、ドキドキしてる」


「……ひあー!」


「ええ!?歩道に座り込んだら汚れちゃうよ!それに太もも、丸見え……!は、早く立ってえ!」


「ご、ごめんね、ありがと!あまりのうれしさに、天国のおばあちゃんが『よかったのぅ☆』って横ピースしてるのが見えたよ」


「魂抜けたらダメ!すごく愉快なお祖母ちゃんだね……」


「もう、高月君ほめすぎだよ!えへへのうひひーだよお盆と夏休みとお正月とクリスマスとバレンタインが一気にやってきた感じだよ!もー!」


「すっごい大集合だ……。時間より早く集合しちゃったけど、どうする?このままバスに乗っちゃう?」


「うん!で、ショッピングモールでご飯食べて、映画見て遊んで、夕方近くなったら砂浜に行くんだよね!」


「中濱さん、元気でよろしいです。じゃあ、はぐれないように僕の手をしっかり握ったら出発しましょう」


「はい!出発なのです!海行きのバスに、あの優しい運転手さんいないかなあ。全部あの運転手さんならいいのに」


「運転手さん倒れちゃうよ?!でも、会いたいね」


「うん!また図書館行きのバスに乗れば会えるよね!」





「ショッピングモール、おっきーい!」


「平日だから、まだ人多くないね。冬休みだから学生は多いかな……中濱さん、スゴく密着してませんか?!」


「今、高校生っぽいお姉さん達が高月君をちらちら見てたよ!ラブいちゃ攻撃ぃ!」


「その攻撃、僕に一番クリティカルヒットしてる!」


「高月君がカッコよすぎなんだよ!もう……あ、あれ!今日は一日中つけててほしいです!」


「は、鼻メガネ……。一緒につけるなら、検討します」


「えー、せっかく可愛いカッコしてきたのに……ひあ!おはあのいはうおお鼻伸びちゃうよ?!のいる伸びるー!のいはうー!!」





「ううう、ぐすっ、ぐしっ」


「ラスト、僕も泣いちゃった。感動した……!はい、チーンする?ハンカチの方がいい?」


「ティシュでらいじょぶ大丈夫……あいがとありがと。……二人が幸せになれてよかったぁ!うわーん!」


「僕の服でチーンしちゃったねー(可愛い……)」





「風つめたーい!!」


「海風冷たいね、大丈夫?シート小さく置いて座ろっか」


「うん!だいじょーぶー!冬も海、いいね!私たちの思い出の海ー!」


「海ー!……あ、良かったらプレゼント、今受け取ってくれる?」


「あ!寒いから今、いいかも!」


「じゃあ、メリークリスマス」


「メリークリスマス!」


「……マフラーだ!あはは!嬉しい!すっごい深い青……!ありがとう!」


「あっ!マフラー!みっつの色が並んですっごいかわいい!やったあ!嬉しい!ありがとう高月君!」


「プレゼントお揃いだったね」


「そうだね!なんか……気持ちがつながってる感じ……」


「僕も思った!ではでは、さっそく」


「うん!」


「すごく暖かいというか、嬉しくて体温が上がった。暖かくなった?」


「びっくりするくらい、胸がポッカポカです!」





「もう、お日様沈んじゃうね……」


「そうだね。でも、また見に来ようよ。来年は受験あるから頻繁には無理かもだけど、気晴らしに。二人の思い出の場所に、来年も、これからも」


「……うん!うん!」


「もうそろそろ帰ろっか、バスの時間もあるし」


「そ、だね!そう、にゃのですが……いっこだけお願いが……あぅ!やっぱりいいや、忘れてください!」


「……ぼ、僕も。中濱さん、先どうぞ!」


「高月君、お先どうぞ!私は今度?いつかで全然いいよ!」


「あの、あのさ!中濱さんとキ、キスが……したい、です。も!もちろん!無理だったらいいよ!急ぐことじゃないし!うわー!うわ!ごめんなさい!」


「……!!……………………………」


「(中濱さん、目を閉じた。こ、これって)……キスしてもいいの?」


「……一緒、なの。キス……したい、です」


「!!」




「「………………ん」」




「……お、お鼻も一緒にキ、キスしちゃった、ね」


「……ご、ごめん!」


「じゃあ……今のは、れ、練習、だね」


「そ、そっか……」




「「………………ん」」




「……今度は大成功だね!にひひー」


「大成功、だね。幸せすぎて、海に向かって叫びたい」


「私も私も!」


「何て叫ぼうか?」


「大好きだって叫びたいです!」






「「大好きだー!!!」」





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