第10話 季節は巡る
季節は冬、商店街も楓と松ぼっくりの飾りから青色と雪をモチーフとした飾りへ様変わりしていた。
青葉書店も今年はイルミネーションのディスプレイをしようと いろはおばあちゃんからの提案だった。
白と青のLEDでシックに決めたいということで、今日の午前中は脚立を立てて軒先から飾りつけをしている。
前だったら、正樹君に手伝ってもらえたのだが、実はここ最近は正樹君が午前中に店にいることはなくなった。
あれは若洲海浜公園に釣り大会をしてから数日後の事だった。
その日、正樹君が青葉書店に来たのは午後3時頃だった。
「あら、正樹君、今日は学校に行ったのかな?」
「 ..
「 ..クシュン。 あ、ごめん。え? 何?」
私の鼻は秋の海風にあたりすぎて鼻水が止まらなかった。
いや、そんな事より、正樹君が俊さんに会いたいというので、東屋に電話をしてみた。
俊さんはちょうど非番で、タイゼリアで会うことにした。
私は居ない方がいいのでは?と思ったが、居てほしいと正樹君の願いだった。
テーブルにはアップルティとカプチーノ2つが置かれた。
「俊さん、僕ね、もっと専門に海洋学を学びたいんです。どうしたらいいと思いますか?」
「へ~.. まぁ、
「今は、僕、水族館で働きたいなって思ってるんだ。いろいろ学んで、それを活かして、多くの人に喜んでもらえるっていいかなって」
「ほ~。じゃあ、俺からアドバイスするとだな、まずは中学校にちゃんと行きなよ。君がどんな事で学校に行かないのか、俺にはわからない。けど、これは綺麗ごとではなく現実的な事を言えば、君は親を納得させなければならない。君がどういう経緯で海洋生物を学ぶかは別として専門の道は、それなりにお金がかかるんだよ。だから、親を納得させるには君がそれなりの頑張りを見せる必要があると思うよ。よく『頑張るな』と言う人もいるけど、それは場合によってだ。君がもし目指すものがあるなら、まず今の君にできることは中学校に行くことじゃないかな?」
「ねぇ、俊さん、私はあまり賛成できない。いじめって本当にえぐいんだ。だから—」
「ううん。万理望さん。僕、実はもう決めていたんだ。たぶん俊さんにそう言われるんじゃないかなってのもわかってた。万理望さんが僕の事を思ってくれることもね。だから、僕は一度挑戦してみるよ。僕も誰かを喜ばせたくなったんだ。賢治君の話を聞いてね。今なら、万理望さんや賢治君がいるから大丈夫だと思うんだ」
「そっか。よし、今日はこの俊さんのおごりだ! 正樹君、君の成功を願ってるよ。ただ、最後に一つだけ言わせてくれ。無理と頑張りを一緒にするなよ。無理なときは相談においで。俺は君の味方だよ」
「はい」
「 正樹君.. こうなったら、元気づけにケーキ頼んじゃおう! どうせ、俊さんのおごりだし」
それから私は風邪が悪化して3日間寝込んだ(+o+)
****
季節は冬、あと2週間もしたらクリスマスだ。
窓際に椅子をひとつ用意した。
今日から毎日、夕方5時になると いろはおばあちゃんのXmas Jazzギターが演奏される。
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