第2話 板

板はとても古く、小さな板でした。


板は昔、大きな船の一部でした。

多くの人や荷物を運んでいましたが、ずっと昔、船は嵐で沈んでしまいました。


船は沈みましたが、板は船から剥がれ、ひとりぼっちになってしまいました。


それからずっと、長い間、一人で海を彷徨っていました。


もう、沈んでしまいたいと思いましたが、木なので沈むことができません。


板には、腐りたくない気持ちが残っていて、腐る事ができませんでした。


ある夜、一匹の犬が近づいて来ました。


犬は板に乗り、眠り始めました。


板は、犬の暖かみを感じて、心が安らぎました。


翌朝、板は、犬を見て、とても綺麗だ。

と思った。


犬は板に乗り、陸地を目指して漕ぎ出しました。


しばらく、板は犬と一緒に過ごしました。


ずっと一人だった板にとって、とても楽しい時間でした。


温かく、幸せな時間でした。


陸地が近づくと、板は、犬が泳いでいった方が速いのに、と思いました。


それでも、犬は板から降りず、水をかきます。


板は、犬が自分を陸地まで運びたいのだと理解しました。


犬と板は、ようやく浜辺に着きました。


犬は板を咥えて森へ連れていこうとします。


しかし、森の入口で板は草が絡み、動かなくなってしまいました。


ここまで連れてきてくれて、ありがとう。


私を置いて行って下さい。


あなたには、この先に、美しい未来が待っています。


と板は思いました。


犬は森へ行きました。


板はまた、ひとりぼっちになりました。


しかし、上から種が落ちてきました。


やがて、種から若い芽が出てきました。


種は根を出し、板を突き破りました。


板は割れて、粉々になりました。


海を彷徨っていた板は、苗床になり、ようやく、板は土に帰る事が出来ました。

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犬と板 三九ななな @kazu_goodfield

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