小さな幸せ
三咲みき
小さな幸せ
結局終わらせることができなかった。今日も帰って仕事をしないといけない。
一日の疲労と、仕事が終わらない焦りと、自身の不甲斐なさと、いろんな気持ちがごちゃ混ぜになって、泣きたくなる。
ここから逃げ出したい。何度そう思ったことか。
仕事が終わらないのは、単純に仕事量が多いということもあるが、私の作業効率が悪いせいもある。自分にも非があるから、何も言えない。タスクが多いと、どうにも焦ってしまって、効率よく仕事ができない。あっという間に10分、30分が経過する。
仕事が嫌で、夜は眠れない。寝不足になって、昼は眠すぎて集中できず、効率が落ちる。また仕事が終わらなくて、嫌で、眠れない。
会社は残業を許してくれない。定時になれば強制退社。だからこうして家に仕事を持ち帰っている。明日から連休だけど、少しでも仕事を進めなければ。明日は美容室に行って、少し遠出をしようと思っていたけど、全部キャンセルだ。
もう生きていたくないなって思うときもある。たかが仕事が嫌なだけで大げさかもしれないけれど、誰にだって、そういう瞬間はあると思う。
すべてが嫌になって、全部投げ出したくなる。仕事だけではなくて色んなことが煩わしい。こういうとき、一人暮らしでよかったと思う反面、誰も助けてくれないから、自分でどうにかするしかないなと思う。
私は、負の感情に押しつぶされそうになったら、小さな幸せを強制的に感じるようにしている。
さっきコンビニで買ったばかりのチキンを見つめた。まだ温かい。かぶりつくと、口いっぱいにやわらかくて、香ばしい味が広がった。お腹が限界まですいていた身体には、たかがコンビニのチキンでも最高においしい。
家に帰ってから食べるのでは、ダメ。帰り道に食べるのがたまらなく幸せ。お腹が少し満たされ、冷たい夜風にあたると、少しばかり冷静になる。お腹が満たされただけで、現実は何も変わらない。家に帰れば仕事はあるし、月曜日からまた憂鬱な一週間が始まる。でも、お腹が満たされるだけで、まだ頑張れるかもしれないと思えるのだ。
私にとって、コンビニのチキンは、心の処方箋なのだ。
小さな幸せ 三咲みき @misakimaru
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