第二章 6
「分からないや…」
そう、分からない。自分が神谷の事を好きなのか。あの日、目の前で同級生が死んだ時神谷の姿を見て怖くなった。だけれどその反面、神谷を、本当の神谷を取り戻したいと思った。
なぜそう思ったのかは自分でも疑問に思う。
「風島君と愛が付き合ったって聞いた時、西鷹君はショックを受けた?」
ピクっと肩が動く。ショックは、した。本当は悲しかった。寂しかった。神谷までもが僕から離れてしまったら、本当に一人ぼっちになってしまうから。
僕の顔を見て察したのか、村井は早歩きをして僕の前に立って止まった。
「ショック受けたり、悲しいって思ったらそれは好きってことじゃないの?」
拳を握りしめる。
「…そう…なんだ」
「あ、なんかごめんね。問い詰めちゃって…。ただ知りたくて西鷹君は愛のことを好きなのか」
「……昔は本当に大好きだった。ずっと一緒にいたいって思った。だけど何年も離れて久々に会った時は本当に嬉しかった。けど……」
変わり果てた彼女の姿を見て混乱した。困っている人たちを助けるのは変わっていない。変わったのは、助けるために人を犠牲にしていること。
「神谷さ、昔とすこし変わったんだ。そりゃあ何年も経てば誰だって変わるだろうけど。僕は昔の神谷が好きだった。だから今好きなのか分からない。けど村井の言葉を聞いて改めて好きなのが分かった。ありがとう」
「ううん。……話してたらお腹すいちゃった。どっか食べに行かない?行ってみたいところがあるんだ」
「いいよ」
村井はすぐ前を向いて歩き出した。その後ろ姿がどうにも寂しそうに見える。なんでだろう。
村井が立ち止まったのは一軒のカフェだった。
「ここ!ここのパンケーキ美味しいんだって。ずっと来たかったんだ」
外見からしてオシャレだった。透明なガラスから見える中は色んな人が美味しそうにご飯を食べている。
「…僕と来て大丈夫なのか?他の友達誘った方が」
「本当は愛ときたかったんだけど風島君と出かけるって言われて。一人で行く気もなくて、そしたら西鷹君を思い出して誘うって思った」
「そっか…行こっか」
店内は予想通りオシャレだった。最近の女子高生が好きそうな場所。SNS映えしそうなお店だ。
「何頼む?私はこのふわふわかまど焼きパンケーキ」
「僕は…アイスコーヒーでいいや」
特にお腹が空いているわけじゃないし。
「ええ、せっかく来たんだし、なんか食べようよ!お腹空いてないならこの小さめなパンケーキにしたら?」
「…いいね。これにするよ」
せっかく勧めてくれたのだからこれにしよう。こんなオシャレなカフェに来るのは初めてだ。優雅な音楽がゆったりと流れていて眠たくなる。
周りを見渡せば女子高生やカップルがいる。カップルといえば奥に座るカップルはどこか見たことがある背中のような…
「え…神谷?」
彼女の方が後ろを振り向いてきた。それは神谷だった。
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