第12話 目標が出来ないと宙ぶらりんだしね
「なあ、トシ。おまえやるなあ。あんなかわいい娘をひっかけちまって」
「そんなラノベじゃないんだから一日二日で惚れた腫れたなんてなる訳ないだろ。あの娘の目的はこいつだよ」
トシの懐からは大きめのネズミが顔をのぞかせており、しきりに生米をかじっていた。
「あっ!おまえいつの間にコメため込んでるんだ。ポケットの中にコメがいっぱい……」
「いいじゃないか。俺が仲良くなったのはカッパだぜ?なんかカエルの神様みたいなのに気に入られたんだけどさあ「カッパの神様に気に入られた!?その話詳しく聞かせてくれませんか?!」
トシの後ろについてきていた子が食いついてくる。ううむ、どうしたもんか……何かあのカエル神様も思う所あるみたいだしなあ
「ええと、ところであなた様の名前をお聞かせ願えませんか?自分はここにきて浅いので恥ずかしながら存じ上げないのです」
(おいユウ、ずいぶん下手に出るじゃないか!)
(だって明らかに良いとこのお嬢様じゃないか!俺ぁこの子に下手なこと言ってお偉いさんに詰められるの。)
(ああ、ここに来てすぐの時の取り調べとかキツかったよな)
(ほんと、あの時のおじさんみたいなのが後ろにいるかもだし)
「ちょっと!聞いてるんですか?!私の名前は吉田方子。ホウコというんです!考えてみたら名前を名乗らないのは無礼ですもんね!失敬しました。でもトシさんには昨日名乗ったはずですよね?ちゃんと覚えててくださいね!」
「い、いやあ、逆恨みされると思ってつい……」
「その話はネンちゃんから聞きました!ネンちゃんをシッカリ守って一緒に強くなってくださいね!」
そう言うと方子はささっとどこかに消えていった。なんかあの子は底知れない感じがして怖いなあ。
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今俺たちは廃ビルにいた。
先日のように異世界からモンスターが漏れてきているから倒してきてくれと依頼を受け、二人でやってきたこの廃ビル、なんか嫌な感じがするな(ヽ''ω`)
一歩踏み入れると中にいた餓鬼がいっせいにこちらに振り向く。ヨシ、カエル神様にコミットしたパワーを見せてやるよ!
まっすぐに向かって来たヤツを思いっきり蹴り飛ばして持っていたこん棒を奪うと、別の餓鬼に投げつける。
後ろでは、ネズミをスタンドみたいにしたトシが燃える拳で別の餓鬼を殴り飛ばしていた。
「やべえ、これは調子に乗ってしまうのも分かるな。パンチでこんなにぶっ飛ばしてると確かに気分いいな」
「と言っても俺の力じゃなくて力を貸してくれてる神様の力だからな」
「わかってるよ。ラノベにありがちな小物みたいなムーヴはしたくないしな」
発生源を突き止めるためにくまなくビルを探索しつつ、出てくる妖怪をぶっ飛ばしながら進み、残すところ地下の部屋の一角となった。
「異世界の扉があったらどうする?」
「言わなかったっけ、ゲームのできない世界なんてごめんだよ」
軋む扉を開けるとナニカが渦巻いていた。これが今陰陽師さんたちが苦労して潰して回ってるアレか。って、え?
ドンッと衝撃を感じ、後ろから誰かに突き飛ばされる。気づくと俺とトシは異世界の渦に落ちていた。
視界の端には俺がこないだシバいたチャラチャラした陰陽師の大河、アイツの下卑た笑顔だった。
「てめえェ!キンタマついてんのかアアァァァァ!」
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「しらない天井だ……」
気づくと洞窟のどっかに俺は転がっていた。
たぶんここ異世界なんやろな。この話はローファンタジーのはずじゃないんか?このまま異世界ものになったらジャンル詐欺も良い所じゃないか!
「はやく現代日本に帰らなきゃな。とりあえずここから出るか」
たぶんゴブリンの巣だったのだろう。嫌なにおいが立ち込めてる穴倉を、そこに生活していてであろう住人を掃除しながら出口を目指す。
で?どっちに行けば出口になるんだろうか、確かなんかの漫画で風が流れる方向に行けば出られるって見た気がするな。
指をゴブの血で濡らして立てる。わずかに右側が冷たいから右から風が来てるか?よし、右に進もう。しばらく右に進むとそこはゴブの炊事場だったのだろうか、何かの皮と骨が散乱しているところに出た。見渡す限り骨骨骨、頭蓋骨頭蓋骨、磔にされてる女の人、頭蓋骨、骨で作られた祭壇、骨の盃、なんか魔法陣っぽいの。邪神像っぽい置物、倒した人間からはぎ取ったであろう装備の山。使えるの無いかな……って違う!あれは人か?とりあえず生きてたら第一異世界人発見だな。
「もし、そこの人。生きていますか?この辺のゴブは一通り対処したから。今助けてる。安心してくれ」
骨で出来た磔台を破壊して女の人を抱える意識は無い様で反応は無い。ハードな展開にありがちなアレソレはされてなさそうなのが救いかな
ローファンタジーって良いよね。不思議パワーには憧れるけど、異世界とかちょっと……実際問題として現代日本は離れたくないよね コトプロス @okokok838
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