第11話 当て馬にされたら複雑だよね
ゲンキ君が運ばれていくのを何となく見ていると、スミちゃんが話しかけて来た。
「昨日のユウさんもだけど、ほんと手馴れてますねえ。学生のころ荒れてました?」
「いやいや、そんなことないですよ。それにヤンチャ自慢ほどダサいものはないでしょう?」
スミちゃんからの質問をごまかしつつ、ネンに問いかける
「ネン、おまえひょっとしてすごい奴だったりするのか?これからもお前の存在でその辺の奴に目を付けられるなんてやりにくいったらないんだが?」
まあ、ほとんど愚痴のつもりでそんなことを言うと、ネンが俺のポケットからスマホを奪い取り、何かを打ち込み始めた……なになに?
『そうなんだよ、アイツほんとにうっとおしくてさア。いっそ次に来た奴でアタシ目当てとかじゃない奴について行こうと思ってたんだよな。ほとんどアタシと契約したかった奴への当てつけでお前を選んだというか……、お前からしたら当て馬にされてるからいい気はしないだろう。そこは勘弁してくれ』
……こういう時は急にしゃべりだして「キエアアアアシャベッターーーーー!!!!」みたいなリアクションとるのがテンプレじゃないのん?それを、小さいネズミハンドで爆速フリック入力されたら反応に困るんだが……
『混乱はわかる。アタシの風よけにされたんだ。いろいろ言いたいこともあるだろう。だが板挟みになっているあの店の者がしんどそうなんでな』
ッ!!なんというかオーラっての?迫力というかプレッシャーみたいなのを急にビンビン感じるようになったんだが、こいつが本性を出したせいか?
「言いたいことは分かりました……ッス。自分あなたの風よけ当て馬なんにでもなりましょう。」
『おや、そんなにへりくだることはないんだよ?なんせ君はアタシの飼い主なんだぜ?』
いやいやいや、何言ってんだこのネズミ様はよ!なんていうか存在ちからがダンチというか、生き物としての格の違いを現在進行形で痛感してるんだが、あれか?異世界転生して王様に横柄な態度をとってなんか気に入られるアレみたいな事しろってか?勘弁してくれよこっちは並みの人間なんやぞ。
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一方その頃、吉田元気の視点
「クソッ、なんなんだアイツはあの本物の火鼠に認められたって事なのか?いいやそんなはずはない。そもそも術者としての修行も昨日今日始めた奴なんだろ?あああなんでだよ!」
医務室のソファに座り込み殴られて腫れている頬に氷を当てながら不満を爆発させている。
ゲンキは自分自身もその「最近オカルト関係者が少なくなってるから現地登用された元一般人」ということを棚に上げて怒りをあらわにする。
「なんだおまえは騒々しい!おまえはたしかゲンキと言ったか。いったい何があった?」
隣のベッドには陰陽師の家系に生まれたチャラ男で、大河さんがいた。
「大河さんどうしたんすかそのケガ、顔ボコボコじゃないですか。何にやられたんですか?」
すると大河さんは苦虫をかみつぶしたような顔をしながらも教えてくれた。
「こないだ来た冴えない男の二人組だ。あいつら、今度会ったら潰してやる。」
「大河さんそれってトシとかって言いました?」
「いいや、ユウとかって呼ばれてたな。いや、俺が戦ってないもう一人の方が確かトシと呼ばれてたな。」
「大河さん、俺はあなたの復讐に協力させてくれませんか?トシって奴に借りが出来たんすよ」
「良いだろう。いくら人員補充の為とはいえ誰彼構わず陰陽師にしていたら看板に傷が付くからな」
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「ちょっとしたハプニングもあったけど契約も済んだし、あとはどうします?」
墨田商店に帰ってきたら手持ちぶさたになったな
「あっ!そのネズミって!」
にげろっ!めんどくせえ!
「にげるな!君の名前をきかせてくれ!さぞかし高名な陰陽師なのであろう?!」
うわっ追いかけてくる!やっぱりこのネズミ厄ネタなんじゃねえの?
痛っ、え?このクソネズミ俺に止まれって?コイツやる気になってるんか?
「な、何で逃げるんですか?ちょっと話を聞きたかっただけなのに」
ううむ、どうしたものか、女の子っぽいから力づくでどうにかするのは気が引けるし、かといってスルーさせてくれなさそうだしな
「ヂュ!ヂュヂュ!」
「え?そうなんですか?」
「ヂューーチュウチュウ!」
「な、なるほど?大変なんですねえ……」
え?この子ネズミと会話してる?すっごい電波な光景。まあそういう術もあるんかな?
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