第10話 因縁の関係にはなりたくないよね
「それで、トシ君。名前は決まってるのかい?」
のり子さんがそう僕に問いかけてくる。ううむ……そうだな……火でねずみだからカチューとかどうなんだろ
「やめときなさい。何を考えてるかは知らないけれど、良くない感じがしたわよ?」
「アッハイ、スミさん。モウシワケゴザイマセン」
「まったくもう。ねえチューちゃん?かわいい名前が良いわよね?」
そのスミちゃんの声に応えるようにチューチューと鳴く。くっ、このネズミ、すでにパワーバランスを把握してやがるな!
「こういうのは下手になやんで凝ったのを付けると後々後悔するんだ。カソだろ……かそ、もえる……ねんしょうのネンってのはどうだ?ネンって呼んでもいいか?」
カソはじいっっと俺を見つめた後にチュッといい肩に乗ってきた。よろしくなネン。
「ああっ!おまえ!そいつに何してる!俺のイフリートを返せよ!!!」
どかどかと店内に入ってきた大学生くらいの男が俺を指さして大声を上げる。
「イフリート?この子はいまのり子さんから預かった子でネンって名前なんだが」
「カソの血筋のネズミで霊獣に片足突っ込んでる個体なんだ。俺が目を付けてたのを横取りしたのか!!」
叫ぶ男にのり子さんがぴしゃりと言い放つ
「バカな事いつまでも言ってんじゃないよ!自分の受け入れた子としっかり関係を築いて行くんだね。あんた、もう何度も来て相手にされてなかったじゃないか!」
「あのー……ネンって目を付けられてるぐらいには特別な子だったりするんです?俺が引き取るのまずかったりしないんで?」
「ああ!その獣は俺にこそふさわしいから契約破棄しぎゃあっ!」
やべっ、なんか男をネンが焼いたんだが、そんなにこの男がうるさかったのかな
「てめえ!ここまで人の事をコケにしやがって!決闘だ!訓練場にでてこい!」
「バカ言ってんじゃないよ。そこの敏典って男は昨日今日ここに来たんだ。あんたと同じ雇われでね。先輩なんだからちょっとは落ち着いた所をみせてみたらどうだい?」
「後輩ならなおさら先輩は敬うもんじゃあないのかってんだよ!」
「まーまーまーまー、のり子さんすみませんねやかましくして。そんでそこの、名前を聞いてないが、戦いたいんだな?どうせ血なまぐさい業界に片足突っ込んだんだ。胸を貸してもらおうか」
「へえ、良い度胸じゃん。俺が勝ったらそのネズミは俺と契約するんだぞ!」
「じゃあ、俺が勝ったらこの先一年間この子の食費を貰いましょうか。ネン~最高級のペレットを詫びとしてアイツがかってくれるんだってさ~」
ネンは嬉しそうにチューチュー鳴いていた。
──────────
しばらくして、俺はこの間ユウがバーベキューした場所に店で騒いだ男と向かい合って立っていた。
「俺は吉田元気。いまからお前をボコボコにする男の名だ」
「おれは藤田敏典。いくらファンタジーな世界があったからってちょっと気取り過ぎじゃない?恥ずかしくないの?」
ぎりぎりと俺を睨みつけている元気。ううむ、ずいぶん恨まれたものだなあ
いかにも小説投稿サイトのテンプレみたいなムーヴしてるけど自分で自分が小物臭いなあとか思ったりしないんだろうか。
「はじめっ!」
審判の声と同時に一メートルほどの大きさのトカゲを召喚するゲンキ、うわっなにあれ
「サラマンダー!そいつに噛みつけっ!」
咄嗟に横に避けるとさっきまで俺がいたところにガチン!と突っ込んできたトカゲが牙を鳴らしていた。
「やべっ、サラマンダーって本物か?!ゲームとかで聞いたことある有名どころやんけ!だったらうちの子に執着しなくてもええやんけ!」
俺が叫ぶとその答えは観客席から返ってきた。
「その子はゲンキさんの能力的支援を受けているだけの火トカゲです。なぜかこいつはドラゴンになりそうだとか言って……契約にもずいぶんかかったんですよ?」
「そうかっ、たいへんっ、だったなっ!」
トカゲの噛みつきや尻尾を間一髪避けながらゲンキに近づこうとするが、なかなか近寄れないな、
「ハッ!!あのイフリートが素直について行こうとした男だからどんな奴かと思ったら逃げてばっかりじゃないか!いったい何を対価に払ったんだ?さぞかし高い対価を払ったんだろうなあ!」
「いや……そんなのないけど?」
「んなっ!その場でお前に気を許しただと?!」
「いや、特には無かったが?」
「そんなはずはない!そんなはずはないだろう!!」
あっ、取り乱したらトカゲの動きが鈍ったな。いまだっ!
いっきに近づいてゲンキに殴りかかる。一発殴ると相手はめちゃくちゃに手足を振り回して暴れだす。
「来るなっ!来るなあ!」
俺はストレートを頬に叩き込んで大地にゲンキを沈めた
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