6.お守り
石段を昇って、さらに並んで参拝する。
「脱帽、二礼二拍手一礼って書いてあるよ」
背が低い
お賽銭を投げ入れる段になって、つないでいた手を放す。少し名残惜しい気持ちで。
美月の隣で手を合わせ、祈る。
秋に学園祭があったとき、先輩が彼女を連れてきていた。オレはそれがすごくすごく羨ましかった。だから。
今度の学園祭は美月といっしょにまわれますように!
彼女として!
友だちじゃ、まずい。餌食になってしまう!
それまでに美月とつきあっていて、それで彼女として誘えますように!
オレは真剣に真剣に祈った。
目を開けると、美月と目が合った。
「やっと参拝出来たね」
「うん」
「長かった!」
いや、オレは長く感じなかったけど。でも、とりあえず「ほんと」と応える。
右の方から出て、おみくじの箱を見つける。
「美月、おみくじしよう」
「うん」
恋みくじは無理なので(!)普通のおみくじの箱から、おみくじを引く。
中吉かあ。…… “待ち人来る”! いいかも!
「
“待ち人来る”ににやけていたら、美月が泣きそうな顔で言う。美月、初詣で凶とは!
「すげ、レア!」
「え?」
「初詣に凶引くなんて、逆にすげー確率じゃね?」
「えー、でもやだよー」
「内容、読んだ?」
「……あんま、読んでない」
「読んでみなよ。内容が大事だから」
これは古典好きな姉貴から教えてもらったこと。姉貴はおみくじやら御朱印が大好きなんだ。
「……うん」
「そんなに悪くないでしょ?」
凶でもひどい内容ばかりじゃない。逆に大吉でもいい内容ばかりじゃない。
美月のおみくじを覗き込む。なかなかいいことが書いてある。
「……今は月の光が遮られているけれど、いずれ射すってあるね。いいじゃん。美月の名前にも『月』があるし。きっといいことあるよ」
おみくじの和歌を読んで、言う。いい和歌だった。
「お守り、買う?」
オレ、今日の記念に美月に何か買ってあげたいな。
「あ、かわいい!」
美月が鳩鈴守を手にとって言う。
「ほんとだ」
「あたしは金色のがいいな」
「オレは銀色かな――すみません、これふたつください」
これを美月へのプレゼントにしよう。おそろいだし!
「はい、美月の」
お金を払おうとする美月に「美月、凶だったし!」とか何とか言って、とにかく受け取ってもらう。
「……ありがとう。……大事にする」と言われ、口元が緩みそうになり、ネックウォーマーをまた上に上げた。「ありがとう」は、オレの台詞だよ。
ふと見ると、凶を入れる赤い箱があったので、美月に教える。オレのは普通の中吉だから、石段のところの紐に結んだ。
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