4.成人式
「ね、あの誘導のひとの制服、かっこいいね」と美月が言う。
誘導?
オレが
黒い帽子に紅いロングコート。なんかコスプレみたい。……何かに似てる。
「ほんとだ。ワンピースの空島に出てくるキャラの制服に似てない? へそって言って、背中に羽が生えてるやつ」
「似てる!」
美月がワンピース読んでいてよかった。
「ねえ、
うーん、どんな、というかいろいろだなあ。てゆうか、美月、そんなにゲーム好きだったかな? 琴子はゲーム好きだけど、美月はそこまでゲーム好きじゃなかった気がする。見せた方が早いけど、いまスマホ使えないし。
「いろいろ。――いま、スマホ見れねーから、あとで見せるよ」
「ありがと」
美月がにっこりと笑う。……かわいい。
手をつなぎたい! と思いつつタイミングがつかめず、またネックウォーマーを鼻の辺りまで上げた。
美月を見ると、頭のてっぺんが見えて、それもかわいい。やばい。まじやばい。
オレは意識を美月からそらすため、視線を上へ上げた。すると、左手に巨大モニターがあった。
流鏑馬かな? と思える映像や、巫女らしき装束に身を包んだ女性たちによる何かの儀式の映像が流れた。そのあと、成人式の映像が流れる。
「ねえ、あれ、成人式かな? ほら、左のモニター」
「ほんとだ、成人式だね。……きれいだなあ、いいなあ、着物」
着物を着た美月、見たい! チョー見たい。
「うん。オレたちはまだ先だけど。……美月、着物、似合うよ」
いや、着物以外でもなんでも似合うんだけど。今日の服もかわいいし。
「え?」
と小首を傾げる美月もかわいくて、思わず笑顔になる。
「星も着物、着るのかなあ」
「いやあ、オレは男子だし、きっと着ない」
めんどくさいし、とこころの中で付け加える。
「そう? 見てみたいな」
オレは美月の着物姿が見られれば、それでよし。
「綿菓子」と美月がつぶやく。
「え?」
綿菓子、食べたいのかな? 買ってあげたい。
「あ、ごめん、あそこ、お母さんが綿菓子あげてるなって」
美月の視線の先を見ると、ぽっかり空間があって、なるほど小学生だから空間があるように見えるんだと思った。そして、小学生の兄弟が母親から綿菓子をもらって食べていた。待ち時間長いから、食べて誤魔化しているんだろう。オレもよくそんなことがあったような気がする。
「ほんとだ……一生懸命食べてる」
「うん、かわいい」
かわいいのは美月だけど。
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