第51話 強くなりたい

 店主に問われた私はすぐに答える。


「勿論です、私は何をしてでも強くなりたい。白ちゃんはさらに強くなってる、絶ちゃんもきっと。私だけが停滞したままでいつも助けられてばかり。だから、強くなりたい。」


 赤い狼なんかに負けてられない。少なくとも心だけは負けたくないと言う意志を店主に伝えると


「あっそ、口だけなら何とでも言える。」

「はぁ!?じゃあなんで聞いたんですか!」

「最終確認だよ、お前がこれからやることへの。」


 最終確認?どう言うことだろうと私は首を傾げる。素材を武器にするだけでは無いのかな。


「初めに言っとくけどな、俺が意志があるかと聞いたのはコイツがお前を認めてないからだ。」


 店主は私が持ってきた素材を指して更に言葉を紡いでいく。


「爪や牙、それから皮に関しては討伐には関わってるがお前と一緒に行きたいと思うほど認めてねぇ。

 魔石に至っては既に他のやつを認めちまってお前は絶対認めねぇって感じ。」

「…………」


 確かにこの人の言う通りだ……私はあくまで時間稼ぎしかできなかった。止めは白ちゃんがしたし、時間稼ぎだって白ちゃんの狼と一緒にだ。


「つまり、お前はこの爪と牙に宿ってる遺志にお前の武器になってやっても良いと思わせなきゃらなねぇ。その為の最終確認だ。」

「どうすれば認められるんですか?何だってやります、だから武器を、力をください!」


 私がそう言うと店主は私の前に素材を持ってきた。確かによく見るとオーラのような物があるようにも感じる。


「今から俺のスキルでコイツの遺志に会わせてやる。あとは好きにしろ。ただし、死ぬなよ?死んだらダンジョンみたいに戻れるとかそんな事ないからな。」


 店主は死んだらそのままの意味で死ぬと言うことを伝えてきた。死んだら終わりという言葉が私の心に強くのしかかって冷や汗が出てくる。


「分かりました、お願いします!」

「行くぞ、【遺魂巡り】」


 視界が暗くなってまた見えるようになったそこはあのダンジョンだった。


「ここ……狼平原。」


 辺りを見渡すとあの赤い狼がいた。横たわって今すぐこっちに攻撃を仕掛けてくるような様子はない。


「認められるなんてどうすれば良いの?」


 心の声が思わず出てしまった。

 しかし、その声に反応したのか赤狼は立ち上がって私を見る。敵意は感じない、でも見定めてる様な気がする。


「私はあなたを使ってもっと強くなりたい!白ちゃんと一緒に強くなるって誓ったんだ……いつまでも足手まといになんてなってられないのォ!」


 私の強くなりたい意志を狼に伝える。すると狼は『ガゥ』と言った。もしかして、私の言ってること理解してる?


 その次の瞬間、狼は思いっきり息を吸い込んだ。


(あれはあの時の!!)


 放たれるは魂の芯まで響く様な咆哮。かつて、至近距離で浴びて意識を失った技。


「動け、ない……」


 攻撃してくると思ったけど狼は追撃はして来ない。それどころかじっと私を見てる。


(私がこれを破るのを待ってる?これが試練だっていうの?白ちゃんは代償を払ってこれを脱出したんだよね……なら!)


「私だって抜け出して見せる!ううううううううああああッ!」


 まるで石の様に固まった体を何とか動かそうと必死になる。しかし、びくともしない。


『グラァッ!!』

「!?」


 私を見ていた狼が突如吠えた。別に攻撃してくるわけでもなくただその場で。でも何故か、私はその意味がわかった気がした。


(うん、今までのことも本音。でも一番のことを隠してちゃダメなんだよね……)


「私はッ白ちゃんの一番が良いッこれからどんな仲間が来ても!白ちゃんの隣は私じゃないと嫌なんだーー!!」


 醜い本音、加わってとても頼もしくすぐに新しい役割を持った絶歌を私は嫉妬していた。

 大して役に立たない囮しかできない私より絶歌を頼りにしてしまうんじゃないかという嫉妬心が私の本音だった。


 醜い嫉妬心を剥き出しにした時、私から黒猫が飛び出して来た。それと同時に拘束から抜け出した。


「そっか。あなたは私のこの気持ちが生み出した子なんだ。今まで見て来なくてごめん。」

『にゃあ』


 一鳴きするといつの間にか近くまで来ていた赤狼の頭にとてとて登って行った。

 赤狼は私の前に右脚を出す。お手かな……?


 私も手を出した瞬間、顔に肉球が当たる。急すぎて私は尻餅をつく。


「ブハッお手じゃないなら紛らわしいことすんな!」

『グフッ!』


 コイツ、笑ったなぁ!?器用に口角上げて笑うなぁ!!


 起きあがろうとすると赤狼がまた息を吸い込み始めた。また咆哮が来るのかと構えるけど今度は違った。


『ルォオオオオオオオオオ!』

『にゃぁぁぁぁあ』


 狼とついでに黒猫の遠吠えを聞いたあと二匹は私の中に粒子となって入っていった。



「おい、起きろ。」

「ぅえ?」

「その様子だと成功みたいだな。」


 気がつくと元の鍛冶場に戻っていた。


「どうやら、素材の遺志もお前を認めたようだ。これから武器を作るが………取り敢えずヨダレ拭いとけ。」

「ぇ、あ、じゅるッゴメンナサイ。」


 え、もしかして寝顔どころかヨダレ垂らしてるところまで見られた!?ここに白ちゃんいなくて良かった……


「んで?武器はどんなのが良いんだ?」

「えっと私の攻撃手段が【猫爪】って言う手に連動する斬撃しか無いので出来れば手につけるようなものだと嬉しいです。」

「…………クローみたいなものか……だが、コイツはそんなのじゃ無いよな………よし、一週間待て。そのくらいになったらまた来い。それとコイツを倒した仲間も連れて来い。」

「わかりました、お願いします!」


 こうして私の新しい武器探しは終わった。


後書き


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