第46話 賑やかになる我が家

「そろそろ暗くなってきたし帰ろう。絶歌にも長い時間突き合せちゃったけど大丈夫?」

「問題あらへんで~、うちは一人暮らしなもんで門限はないんや。」


 腹ごしらえをした私たちは驚異的な料理バフのお陰で破竹の勢いで魔物を蹂躙していた。既に空は夕暮れ近くなっており、夜になってしまうと目が見えない私たちはダンジョンから撤収することに。


「そういえば、二人は門限とか大丈夫なんか?ここから家は近いんか?」

「私は白ちゃんのうちに居候してるの。ここから少し歩いたところだから問題ないかな。」


 日向がそう伝えると絶歌は少し寂しそうだった。


「もしよかったら私の家に泊まる?」

「………いいんか?」

「うん!日向もいいかな。」

「もちろん!」

「ありがとうな。……なら美味しい料理をごちそうしたる!ちょっと買い出し行ってもいいか?」


 絶歌は私たちを連れて探索者通りで食材を買っていく。


「あとはこのスライム手袋を買えば買い物終了やな。付き合わせてすまんな。」

「その手袋どうするの?」


 水色の手袋を買って店から出てきた絶歌に私は尋ねる。


「うちはアレルギーで食材に触れられんからな、手袋せんと。」

「なるほどねぇ」


(私でいうところの日傘と同じかな。)


 闇夜に紛れた日傘をなでながら帰路を歩いていく。自身と似た境遇に親近感を感じながら。



「ほぉ~結構大きな家なんやな。親御さんはどうしたんや?挨拶しときたいんやが。」

「白ちゃんの親は世界一周旅行で出かけてるんだー。だから私たちだけだよ。」

「そうなんやなぁ、なら遠慮なく。お邪魔しますー」


 あ、そういえばまだ食器片してなかった!


「二人はゆっくりしててー!食器洗って来る!」

「ならうちも手伝うで?」


 小柄な体型の絶歌が私の隣にやってくる……んだけど……


「と、届かへん!?」


 思った通り私の家のキッチンって少し高いから届かないから届いてない。精一杯背伸びしてようやくシンクに手が出るくらいの絶歌は少し可愛い。


「少し待ってて?あとで台を持ってくるから……」


 可愛い様子に少し顔がにやけながら日向と同じようにソファーに移動させる。軽く小さな背中は少し暖かかった。



「そういえば、食べ物大体食べれないっていつもは何食べてるの?高校生になるまでダンジョンに入れないでしょ?」


 白ちゃんが食器を洗い終えるまで私は絶ちゃんと話すことにした。


「あー、基本的にほとんど食べられないのほうが正しかったかもなぁ。いつもはゼリーみたいな果物とかあとは乳製品は食べられたからそういうもんやな。」

「あ、牛乳は飲めたんだ。」

「今、背は伸びなかったのかとか思わんかった?ん?」


(バレてるー!)


「お、おもってないよ。」


 ソファーに座りながら不機嫌そうにこっちを見てくるけど絶ちゃんには悪いけど可愛い。こう、白ちゃんが綺麗とかそういう方の可愛いなら絶ちゃんはマスコット的な可愛いだ。


「まぁええわ、そんなわけで今日はシチューでも作ろうかな。」

「あぁなるほど、だから野菜とかかってたわけだ。でもそうすると絶ちゃん食べられなくない?」

「問題あらへんよ、悪食っていうスキルをもらえたお陰で食べられるようなったから。」


 悪食なんて言うスキル聞いたことないなぁ、白ちゃんの日光耐性みたいにユニークスキルだろうか。


「魔力が続く限りは毒だろうと食べられるスキルや。これのお陰で最近だと外でも普通の食事ができるようなったわけやな。この前のシフォンケーキなんかは今まで食べたことなくて美味しいんか分からんくて味見を頼んだわけやな、うん。」

「あーなるほど。だからいっぱいシフォンケーキがあったわけか!最近になって料理始めたんだ。」


 絶ちゃんは頬をかきながら恥ずかしそうに笑う。


「あはは、まぁそうなるな……あ、安心してぇな!?シチューならずいぶん前から作ってたから!」

「ほんとかなぁ~?」



◇◇


「お待たせ―……なんか二人で楽しそうだね?」


 日向と絶歌が楽しそうに話しているのを見ていると少し混ざりたかったと思う。

 まだ絶歌とは会って少ししか経っていないけどもう日向と仲良くなっているのを見ているとなぜか胸の奥の方がささくれ立ってくる。


「すまんなぁ、もう少し背が高ければいいんやが……」

「いいよ、はい台持ってきたよ。」

「よーし、美味しいシチューを作ったる!白は休んどいてな!」

「うん、そうさせてもらうね。」


 絶歌がキッチンに向かったのを確認した私は心の赴くままに行動を開始した。

 もちろん目標はテレビを見ながらソファーに座っている日向。ゆっくり近寄って耳を触る。この前弱いのは把握済み!


「ひょわ!?な、何するの!」


 ちょっとやきもちを始めて焼いたかもしれない私はブレーキを引っ込ぬいて行動する。飼い猫が初めて会った友人に自分以上になついてる時の感情に近いだろうか?もくもくと日向の耳を揉む。


「なになになに!?」

「………………」


 無言で揉んでいくと次第に日向の身体がソファーにしなだれる。丁度いいので日向の頭を太ももに乗せて続行する。


「ふぉわああ」


 完全に猫のような生態の日向を触りまくり優越感を浸っていると


「お待ち遠様ー!ん?どしたん?」


(もう少し触ってたかったのに!)


 タイミングの悪い料理人を見た後日向を解放して食事にする。日向はヨロヨロしながら私を上目遣いで見てたけど別に私は悪くない。


後書き

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