第45話 常在厨房
新しい仲間、絶歌を連れ早速3人はダンジョンにやってきていた。ダンジョンは初心者の森。狼平原は先のネームド騒ぎによって封鎖されており入れなくなっているためだ。
「仲間がいるってええなぁ!いっつもコソコソ一体でいる魔物を探してたから楽やわぁ。」
いつものように私と日向の連携で魔物を倒して行く。絶歌はと言うとドロップした魔石と素材を集めていた。
「いやー大量大量。こりゃ良い料理ができそうやな。」
満足そうに笑う絶歌の背後からストーンディアが迫る。私が気がついた時には間に合わない距離だった。
「食材があったからきてくれるなんて偉い子や。【常在厨房・断頭包丁】ほいっ!」
突然半透明の包丁の形をした何かが現れて鹿の首を切った。首を無くした鹿は絶歌に当たる前に消滅して鹿肉を落とす。
「ん?どうしたん、何か変なことでもあったか?」
「いやそのスキル凄すぎてビックリしたというか……絶歌って戦えたんだね。」
「絶ちゃんがこういう戦闘スタイルとなると本格的にタンクが欲しくなってくるね。」
正直なところ戦えるとは思ってなかった。ダンジョンに入るとき「
「そのスキルってどう言う効果なの?」
「うちのスキル【常在厨房】は文字通り厨房にあるもんなら使えるんや、【果物ナイフ】な?とはいえ弱点なしっちゅうわけやない。」
果物ナイフを持ちながら近くの木を切り付ける絶歌はその木を指差した。
ナイフの傷があるはずの木には何もキズはなかった。
「食材じゃないとこのスキルはなんの効果も発揮せん。さっきのは鹿だからよかったけどな。」
「そんなに万能ってわけでもないんだね。」
「そうやなぁそうだ、お腹空いてへん?うちの料理振る舞ったる!」
ダンジョンの中で料理するとは言ってたけどまさかここで!?魔物だってまだ居るのに……
「もう少し開けた場所でやらない?ここだと魔物が来ちゃうよ。」
「大丈夫大丈夫、【常在厨房・料理人の聖域】」
私たちの周りに光のサークルが広がって行く。それはちょうど半径10メートルくらいで止まる。
「これは……」
日向が何か言いかける前に近くを鹿が通りかかる。私たちに気がついたのかこっちに向かってくる鹿はサークルの前で壁のようなもので阻まれてこっちに来れないみたい。
「厨房に無法もんなんか通さへん、通すのは食材になってからや。」
再び包丁を出現させて一瞬で鹿を倒す絶歌に驚愕する私たち。
「結界……?セーフゾーンと似た効果の?そんなのってあり!?」
「そんなに変か?」
「「変って言うか強すぎる!」」
本人にあまり自覚がないのか平然としているから余計温度差が酷い。
「ちなみにここから出るには料理を作って食べないといかんから。」
「一応の制約はあるのね……いや、軽すぎだけど。」
「でも、どうやって料理するの?料理道具なんて持ってきてないよ?」
「そこは大丈夫や!【土魔法】【火魔法】【常在厨房・フライパン】」
次々にキッチンを土から作っていく絶歌に口が塞がらない私たち。
「ちょっと待っててなー」
私たちのことを気にせずさっき倒した鹿の肉を捌いていき肉を焼いていく絶歌。香ばしい匂いが鼻を抜けていく。背中に背負っていた荷物には調味料が入っていたのか塩胡椒以外にもハーブなども見えた。
「はい、鹿肉のブロックステーキや。」
「…………本当に料理してる。しかもすごく美味しそう。白ちゃん、よく分からないけどお腹空いたし食べようか。」
「うん、魔物が入ってこないのは分かったから落ち着いて食べれるね。」
「「「いただきます」」」
食べた鹿肉はハーブのお陰で臭みなどは無く、噛みごたえのある肉から肉汁が滴ってきて絶品だった。
「美味しい!レッドボアとはまた違った味わいでなんて言うか美味しい!」
「良かったわぁ、うん、おいひぃ〜」
日向の壊滅的な食レポは何とかならないのかな。いや、言葉を失うくらい美味しいのだけども。それに、一番美味しそうに食べてるのが絶歌だから余計美味しく感じる。
「ぷはーご馳走様でした!ダンジョンで料理するって言うからどんなものかと思ったけど想像以上の味だったよ。」
「ダンジョンなのに魔物を気にしなくて良いのも良いね。」
「いやあそこまで褒められると照れるなぁ。うん、お粗末さまでした。さて、腹ごしらえも終わったことやし、食後の運動のお時間や。」
鹿やウサギ、中には羊なんてのも結界の外に居た。
「だね、このまま帰ったら太っちゃう!」
「ハッ!それはまずい!?」
「食べたら運動!それが健康の秘訣やな!」
食事が終わったことで解けた結界から飛び出て私たちは魔物を蹂躙した。
「はぁはぁはぁ、こ、これで食べた分は消費した、かな?」
「たぶん……」
「そこまでカロリー無いはずなんやけどなぁ、魔物食材は。」
魔物の肉は魔力と肉で出来た
「そういえばいつもより足が速い気がするんだけどもしかして料理のせい?」
「うちの料理は素材の力を引き出すからな、鹿肉ならあの突進のスピードを少し受けられるちゅうことやろ。」
(なんでもありだ、この人……)
どこまでも有能な戦場料理人が仲間になったと自覚した二人であった。
後書き
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