2章 変化する日常
第44話 新たなる
「「疲れた……」」
現在、白と日向は屋上にある日陰で空を見上げながらぼーっとしていた。何故2人がここまで疲れているかと言うとそれは赤い狼を討伐した後まで遡る。
◆
ゲートに転移した私たちを待ち受けていたのは大量の探索者とフラッシュの光だった。
眩しッ!?え、私死ぬ!?いや、アバターじゃないから死なないけど。
「あの2人だ!逸材だぞ!!」
「クランには所属しているのか!?」
「パーティーに誘いてぇ、いやむしろ俺が入りたい。」
「「「おい、百合の間に入るのは許さん。」」」
沢山の人に囲まれて若干人酔いしてきた。日向はこんな時でも冷静な顔をしてる。流石だなぁ、あれ?日向?おーい。……立ったまま気絶してる!?
「日向起きて、1人にしないで!?私1人じゃどうにもならないよ!?いっそのこと私も気絶すれば……!」
慣れない群衆の真ん中で混乱していると大きな背中が私たちの前に立ち塞がった。ギルマスさんだ。
「お前ら散れ散れ!後でギルドから正式に発表すっから帰れ!疲れてんだ、家に帰らせてやれ。」
私たちを隠して守ってくれた背中は大きくて暖かかった。そうして、私たちは家に帰れたのだが。
「黒音さん!これ黒音さんだよね!?」
「もう1人のこの可愛い子誰!?」
「バカ、夜雀さんだろこれ!」
こんな感じで一躍みんなに知れ渡ったせいで学校のどこに居ても話しかけられて私たちは疲れてしまったのだった。
「私さー私自身が有名になってお父さんを超えるって言ったけどあの時だけは揺らいだよ〜。人の圧っていうの?よくお父さん平気そうな顔してるよ。予想以上に疲れる……」
「まさか、ここまで皆に知られてるとは思わなかったよ〜あのゲートの前の人たちだけじゃないの?」
そう、日向が緊急で生放送したからゲート付近の巨大ディスプレイ以外には映らないはずなのだ。しかし。
「別にディスプレイをスマホで映すことならできるからね……ネットで拡散されまくってる。白ちゃんは外に出た時ローブ被ったたからまだマシ。私はアバターとあまり変化が無いからすぐバレたし。というかお父さんの事呼んじゃったから普通にバレてるしね。」
「はぁ、まあしょうがないよ。それでどうするの?今だってパーティーの誘いが凄いでしょ。ギルマスさんが教えてくれた選択肢どれにするの?」
ギルドマスターが提示した選択肢、大型クランに所属して守ってもらう、このまま2人で探索する、私たちのクランを作るの3つ。
日向の夢を実現するには大型クランに所属はしたく無いところではある。
「うーん、私たちはあの狼をいいところまで追い詰めたっていう実績はあるけど寄ってくる悪意に対処する術が無いからクランに所属するっていう手もなしじゃ無いんだよね〜。でも少し問題があるんだよね。」
「問題?」
この前ギルドに寄った時はものすごいいっぱいクラン加入勧誘がいっぱい来てたけど?
「私ってお父さんの娘でしょ?だから他の大型クランに所属すると変な軋轢とか生まれちゃうかもなんだよね。私が言うのもなんだけど『黒豹の牙のクランマスターの娘】っていう肩書きは想像以上に厄介なんだ。」
難しいんだなぁ、やっぱりクランを作るしか無いのかな。でもギルマスさんが言うには……
「クランの設立には少なくとも5人はメンバーがいる。そう言う規則なんだ。だから後3人見つけてくれ。」
正直、今パーティーに入りたいって人と探索したく無いな。日向の言葉を借りるなら私たちを見てないから。
「しばらくはこのまま2人で探索しよう、この前の戦いで私たちは強くなったけど2人じゃ限界がある。とはいえ変な人をパーティーに入れたく無い。」
「うん、白ちゃんに賛成。」
そう2人でしばらく探索する事を決めた矢先、屋上の扉が開いた。
「うーん、気持ちえぇなぁ!ん?あの時の二人やないか!久しぶりやなぁ。」
屋上に現れたのは以前、部活見学の際シフォンケーキを食べさせてくれた人だった。というか他のところでも見た気がする?
「お久しぶりです、ここにはどうして?」
「んー創作料理を考える時、縮こまってても何もいいの出てこんから外の空気を吸いに来たんや。そうそう、聞いたでー?なんやすっごい強い魔物倒したらしいな?」
あ、この人もパーティーに入りたい人なのかな?うーんどうしよう。
「なぁなぁ!そいつの肉持ってへん!?」
「えっ?」
白に駆け寄って訪ねる小柄な料理人は鼻息荒くする。パーティーとかは微塵も気にせず食材のことだけ考えている姿勢はどこか白に通ずるものがあった。
えぇ?パーティーとかの話じゃないの!?てっきりパーティーに入りたいとかだと思ったんだけど。
「確か少しなら肉があった筈。それをどうするの?」
日向が私にのそばにいるこの人に質問をする。どんな返答が来るのか私はドキドキした。なんとなくシンパシーのようなものを感じた。
「勿論、食べる!ウチな、魔物料理を食べてみたいんや。」
「それなら探索者通りで売ってるでしょ?あれで良いじゃない。」
「ダメなんや……ウチはアレルギーが酷くてな。大抵の食べ物は食べれへん、それは魔物食材でも同じや。が!アバターなら違う。ウチは食べれた。やから是非、その魔物の食材をダンジョンで料理させてくれへんか!?」
私と日向は二人して顔を見合わせた。二人ともあの日のことを思い出したからだ。
「物凄いデジャブを感じたんだけど?ねぇ白ちゃん。」
「うん、ここまで似てると運命を感じるくらいだよ。」
私たちの会話についてこれないこの人は頭に?を浮かべていた。
「「いいよ、そのかわり!一緒にダンジョンに潜って欲しい!」」
「ほんまか!こちらこそよろしゅう!ウチは【
後書き
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