第37話 side黒音豹牙
日向が出ていってから聞いた話だが、どうやら俺の七光りだとか言われんのが嫌だったらしい。あいつには才能があるし、努力もする。
そんなやつはねじふせられるとおもってたんだが意外と気にしてたらしいな。
「はぁ、どこ行ったんだ日向のやつ。もう3日も会ってないんだぞ?きっと今頃……ダメだ、彼氏なんて認めん。俺より強くないとダメに決まってる!」
豹牙が一人はしゃいでいると部屋のドアが開く。
「五月蝿いです、クランの皆までその情けない声が聞こえてますよ。日向ちゃんが心配なのはわかりますが仕事をしてください。」
「あぁ?日向より大切なことなんてあるわけねぇだろ!なぁ?」
部屋に入って来たザブマスター【鳥野 美涼】に怒られる豹牙は反論する。
「それはそうですが、公私は分けてください。報告書です。」
美涼が渡した紙を引ったくるようにして受け取った豹牙はおもしろそうな顔をして笑った。
「へぇ、まさか日向とそのお友達がネームドのなりそこないを倒したとはなぁ?もし世間に知られたら一気にSランクかぁ?」
「そんなわけないでしょう、まだ幼体。それもFランクだからこそあの日向ちゃんたちでも倒せたんですよ。」
白が倒したあの赤い狼、実はあれはネームドに変化する兆しを見せた魔物であった。それは通りがかった探索者が持ってきた素材によって判明した。
「ったく、めんどくせぇなぁ。Sランクだって言ってやれば良いのによ。そうしたらお父さんって日向が言って帰ってくるのによ。」
「少なくとも、それだけはないです。」
この時、日向がどこにいて何をしているのか豹牙だけが知らない状態だったのだが、蓮から伝えないように言われた美涼は豹牙には報告していない。
「ん?あっちに日向の気配がする!この匂いは蓮か!!あのやろう俺に黙ってやがったな!」
「あ、待ちなさい!まだ仕事が……!あのバカ猫!きっと子猫の憩い亭ね。はぁ、何で私がザブマスターなのよぉ〜。日向ちゃんを愛でたかっただけなのにぃ。」
そうして、豹牙は子猫の憩い亭に向かった日向と出くわしたのだった。
◆
ギルドマスターの執務室にて
「はぁ、頭の痛い話だなぁ。確かに生放送で見るくらい強くなってほしいと入ったけどよぉ〜まさか、ネームドの幼体倒すとは思わないじゃん。しかも映像も残ってないし。」
「まぁまぁ、まだ誰もそのことを知らないんですから……」
ギルドマスターと受付の一人、白と仲のいいあの人が話していた。するといきなり扉が開く。
「なぁ、日向のランク上げられねぇの?」
豹牙その人である。
「テメェ、人様の扉破壊して入って来んなよ。で、何のようだよ。」
いつも破壊しているのはギルマスなんだよなぁと思った受付嬢は黙って外に出て行くことにする。
「しらばっくれんなよ、日向たちがネームドの幼体倒したんだって?そりゃあ、ランクの一つでも上げるべきなんじゃねぇの?」
ギルマスの脳裏には先程の会話が残っていたが鎌をかけている可能性も考えてしらばっくれることにした。
「何の話だ?そんな報告は受けてないが。」
「おいおい、俺とお前の仲だろ?そういうのは無しで行こうぜ。」
確実に知っている風なので諦めて話すことにする。
「どこで知ったのか知らんが、無理だ。素材は別の探索者が、映像は残ってない。そんな状況で上げたらそれこそ七光りとか言われかねんぞ。」
先ほどまで日向と訓練していた豹牙にはこれがよく効いた。
「ぐっ確かにそれを言われて恨まれたりでもしたら立ち直れねぇ。なら、出来るだけ日向が活躍しやすいように整えるくらいしとけよ?俺にバレてるくらいだ他の奴らも注目してんだからよ。」
そう言って豹牙は立ち去っていく。
「はぁ、巷じゃ動物園とか騒がれてるが猛獣の群れの間違いじゃないのか?絶対最後の注告が本題だろうが。」
ギルマスはそのクマのような図体を屈ませて腹をさする。最近は胃薬の多用で効かなくなっていることが悩みである。
後書き
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