第34話 初心者の森
ゲートの前で私たちは入る前の準備をしていた。
「初めて入るダンジョンって楽しみだね。日向はどう思う?」
「私も楽しみ、早く魔纏を試してみたい。白ちゃんとの連携とかも磨いてあの狼たちにも負けないくらい強くなろう!」
ゲートを操作して初心者の森を選択するとゲートが淡く発光して起動する。
「「行こう!」」
二人同時にゲートに入る。いつものように眩しい光の後、目を開けると巨大な木の中に転移していた。大きな木のうろにいる状態の私たちは外に出ると見渡す限りの森が広がっていた。木が生い茂っていて草とかも生えてる。ここまで視界の悪いダンジョンは初めて。
「すごい……こんな広い森初めて見る。あっウサギがいる!」
近くにいたウサギに近づくと私に気が付いたウサギが振り向いた。
「頭に角が付いてる!?うわっ」
私の方を向いたウサギは前傾姿勢になった後、角を私に向けて突撃してきた。油断していた私は回避できなくて攻撃を食らいそうになる。
「もう、ダンジョンなんだから動物がいるわけないでしょ?」
日向が代わりにウサギを一撃で倒してくれた。
「ごめん、可愛くてつい。もう油断しないから。」
「周りに魔物がいないか索敵してみる。ここから少し行ったところにウサギと……四足歩行の魔物がいるよ!行ってみよう。」
日向が魔纏で聴覚を強化して索敵してくれた方向に歩いていくと本当にウサギと……角が石でできたシカがいた。
「確か、アルミラージとストーンディアだったかな。ウサギの方はさっきみたいに角で攻撃してくるよ。問題はシカの方かな。あの角に魔力をためて攻撃してくるらしいよ。」
「なら、私がウサギをここから倒すからそのあとにシカを二人で倒そう。」
「了解、それじゃ頼んだ!」
木が間に何本もあって狙いずらいけど何とかなるかな。槍だと余計に破壊しちゃう。矢で倒そう。
「【闇魔法】それから、視力も強化して……今っ」
射た矢は木の間を縫ってジャンプしたアルミラージの首を打ち抜く。シカに気が付かれる前に矢じりを破裂させて消滅させる。
「ナイス白ちゃん!すぐに片付けよう!【猫爪】」
「うん!」
日向が先に飛び出してシカの足を切って逃げられないようにする。私は槍を作って発射する。シカに突き刺さって日向が退避したタイミングで槍を爆破させる。
「よし!連携上手く行ったね。どうする?今度は一人でやってみる?」
「じゃあ私からやってみていいかな。障害物がある状態で魔法使う練習してみたい。」
さっきは何とかうまくいったけど、木とかの障害物を避けて当てる練習をしないといざって時に味方を避けて当てる必要とかあるかも。
「それじゃあもう一回探してみる……少し遠いけどさっきのシカがいるよ。」
「流石にここから狙えないから近づこうかな。」
魔纏で魔力も消しながら近づいていくと弓の射程に2体鹿を見つけた。
「ここから狙ってみる、もしこっちに攻撃してきた時は任せてもいい?」
「勿論、安心して撃っていいよ。」
日向にもしもの時のフォローを頼んで私は矢をつがえる。
木が邪魔で上手く狙えない……!もう少し左に移動してくれたらなぁ。
鹿がちょうどいい場所まで移動するまで待つ。すると丁度いい位置に移動した。
「今だ!」
木の間から頭を出している鹿に狙いを定めて矢を撃つ。しかし、草を食べているのか下を向いていた鹿が急に頭を上げてしまった。そのせいで矢は地面に刺さってしまう。
「ごめん外した!」
「大丈夫、私がしと…める。あれ、逃げちゃった。」
自身の近くに飛んできた矢に驚いたのか二体とも二人から逃げてしまった。
「そんなぁ、魔物でも逃げることあるの?しょうがない、別の魔物を探そう。」
その後も何度かやってみるけど動かれたり、木に隠れてしまって避けられたりしちゃった。
「ごめん、日向。せっかく探してくれるのに数体しか倒せなかったよ。」
「気にしない気にしない!始めて来たダンジョンなんだから上手くいかない時だってあるよ!」
日向が励ましてくれて、元気が出て来たけど問題は真っ直ぐにしか攻撃できないこと……だよね。日向の場合追いかければいいけど私は真っ直ぐにしか飛ばせないから木の間を全速力で逃げられるともう当たらない。
「何とかしないと。取り敢えず私は今日はいいから今度は日向の番。周りから来る魔物は私が何とかするから。」
「ありがとう、それならあっちに魔物がいるからそいつを倒しに行こう!」
その後は日向が鹿やウサギを倒して回って今日は引き上げることにした。
「どうにかして矢を曲げたりできるようにならないと。平原ならともかく今日みたいな場所だと何も出来なくなっちゃう。」
「そんな事ないけど確かに矢を曲げられるようになれたらもっと戦闘に自由さが増すよね。」
こういう時、頼れる人がいると良いんだけど……そうだ!明日、聖さんに聞いてみよう。
魔法ならあの人に聞けば何かわかるかも。
後書き
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