第32話 部活見学

 放課後、私たちはまだ教室にいた。


「白ちゃん、今日だけダンジョンに行くのやめて部活見学行かない?」

「うん、せっかく高校性になったんだから見てみたいよね。」


 二人の意見が一致したことで二人で部活見学をすることにした。日向の要望で先に屋外の部活を見ることにした。


「探索者を輩出する目的もあって運動場は広いよねぇ。最近だと探索者でも大会で参加できるようになったし気合入ってるね。あそこに行ってみよ?」


 私と日向は陸上競技場に入って練習風景を見ることにした。


「長距離より私は短距離の方が向いてそうだなぁ。部活に入部するかどうかはともかくとして、走り方は参考になる。切り返しとか私は素人だから聞いてみたいな。」


 確かに日向のスピードに磨きがかかるならありかも。私は確実に走れないから見てることしかできないのが残念だけど。早く日光耐性を上げないとなぁ。


「よし、次はどこに行こうか。白ちゃんができる運動だと……そうだ弓道とかどう?半分屋内だから白ちゃんでもいけるかも。」

「ほんとに!?行ってみたい。どこにあるの?」

「武道場の隣だからこっちだね。」


 私たちが武道場のある方まで歩いているとはかま姿の女の人が向こうから歩いてきた。


「ん?もしかして仮入部希望者かな。今、弓の引き方講座をしてるからぜひ行ってみてね!」


 すれ違いざまに宣伝して言ってどこかに歩いて行ってしまった。けど、さっきの格好私でも着れる服装だったなぁ。


 日光に当たる可能性なある服を着れない私にとってそのことはかなりプラスに感じた。

 更に歩いて弓道場に来た私たちは先ほどの人が言っていた弓引き体験をさせてもらうことにした。


「背筋を伸ばして弓と言を垂直に、そうそう。で息を整えて自分のタイミングで的に撃ってみて?」


 言われたとおりに引き絞る。ぎりぎりと音がなる弓を横目に的を狙って手を離した。すると初めてながら的に中った。


「おぉ!白ちゃん当たったよ!凄い凄い!!」

「初めてで当てる人初めて見ました。かなりセンスありますよ、何かやられていたので?」


 そんな褒められると照れちゃうなぁ、別に何もしていないけど……。もしかしたら、魔法の練習が役に立ったのかな?


「特には……魔法を最近使ってたのでそのおかげかもしれないです。もう一回やってもいいですか?」

「どうぞどうぞ!夜雀さんフォーム綺麗だから見てて楽しいんだよね。」

 

 そんなに褒めても何も出ないよ!?集中しよう……心の中を夜の闇のように静かに。息を整えて矢をつがえる。闇の槍が細く早く鋭くすることを意識しているからかな、次も当たる気がする。


「フッ」


  急にかちっっとハマったような感覚がして矢を射たら今度は真ん中に当たった。やった!真ん中にちゃんと当たったよ、日向!


「いやー魔法得意だからもしかしてと思ったけど本当に才能あるなんてびっくりしたよ……」

「夜雀さん!ぜひうちの部活に入らないか!?君の才能がぜひ欲しい!」


 さっきのパーティー勧誘の人と違って私を必要としてるからすごい悩む。ダンジョンにも行きたいしでも、弓楽しかったなぁ。


「ごめんなさい、やっぱりダンジョンに潜りたいので入部しません。せっかく体験までさせてもらったのに申し訳ないです。」


 さすがにダンジョンの方が行きたいし、日向ぼっこしたい。毎日これないし、いつ来るかもわからない人を入部なんてできないだろうしね。


「籍をうちに置くだけでもいいからさ!どう?たまにでもいいから入部しない?お願い!」


 やけに追いすがるこの人を見て理由を聞いてみる。


「うちの学校って探索者を輩出するのを推進する学校だろ?その影響でダンジョンで自分の役に立ちそうな部活に所属する人が多いんだ……みんな剣道とか、陸上とかにいっぱい人を取られちゃってね。わかると思うけど、矢が有限の弓道は敬遠されがちなんだ。僕も二年、他にいる部員も数名で正直部活の存続が危うくて……部費会議であと一人部員がいないと廃部同然になっちゃうところなんだよね、ははは。」


そういうことなら別に入部してもいいんだけど……


「まだ全部回りきってないのでそのあとでもいいですか?」

「もちろん!」


 そういうわけで私は保留にしたまま弓道場を後にした。


「日向も陸上部に入ったりしないの?向いてると思うけど……」

「あそこは毎日来ないといけないし、ダンジョンに潜りたい私には向いてないかな。」


 そっか、そういう部活もあるんだよね……弓道部の人はダンジョンを優先してくれていいって言ってくれたから他もそうなのかなって思ってたよ。


「それじゃあ今度は屋内の部活を見学してみようか!どこに行ってみたい?」


 日向は先生からもらった部活一覧を見ながら質問してきた。かなりの数があって同好会とかもある。その中でもひと際目に留まったのは。


「魔道具研究会と薬学部と魔法研究会かな?」

「魔道具と魔法は分かるけどなんで薬学?」


 薬屋のおばあさんの薬みたいに作れないかなっていうのともう一つは……


「お母さんみたいに日光に焼けないクリームとか作れないかなって。ダンジョンはともかく外で傘なしで日向と歩きたいから。」

「普通の日焼け止めだと効かないって言ってたもんね。なら先に薬学部に行ってみようか。」


 薬学部の部室に行くと甘い匂いが香ってきた。


「ここが薬学部、すみません部活見学に来たんですけど……」


 日向が扉を開けると壺で何かを煮込んでいる人と目が合った。そのせいで一瞬手が止まった壺が急に発光し始める。


「あっしまっ―——————」


 部員さんの声の後部室中に煙が充満した。


「げほごほごほっ!?あーなにかな?体験入部の人?」


 けだるけそうに聞いてくる部員の人は目の下に隈ができている。髪もぼさぼさでくたびれた白衣を着てる。もしかして寝てないのかな……


「ポーションとか見て少し興味があって。今はなにを作っていたんですか?」

「これ?成功したら3日は寝なくていい元気ポーションさ!眠りたくても眠れなくて。それなら眠らなくていい薬を作ればいいじゃないか!ということで作ってたんだ。」


 この人今すぐにでも眠らせた方がいいのでは!?発想がぶっ飛びすぎだよ!


「あの、すこしいいですか?」


 私は魔力流しで部員さんに魔力を流していく。私の魔力は夜みたいだからもしかしたら寝てくれるかも。


 魔力を流してすぐに白の魔力によってリラックスしたのか眠ってしまった。


「眠らせちゃて良かったの?日焼けクリームとか作りたくて話を聞きに来たんじゃなかった?」

「また今度くればいいから。眠れなさそうにしてたからかわいそうで。」


 眠ってる部員さんを近くにあったソファーに寝かせて私たちは部室を後にした。


「さて、あとは魔道具と魔法どっちに行く?たぶん、あと一つくらいしか行けなさそうだけど。」

「うーん、なら魔法かなぁ。闇魔法についてもう少し知りたいかな。」


 私たちは廊下を歩いて魔法研究会に向かう。その途中で美味しそうな匂いがしてきた。料理研究会という場所からで、そこには昨日サウナにいた人が料理を作っていた。


「おいしそー!ちょっと入ってみようよ。」


 日向に連れられて料理研究会のいる調理室にお邪魔すると作ってあったお菓子を試食させてくれた。


「うちは食べれへんから食べておいしいとか食レポ頼むわ!味見も手探りでなぁ。」


  制服を見ると私たちと同じ一年生だった。


「あ、おいしい!このシフォンケーキおいしいよ!」

「ほんとか!何回かやり直してようやっと成功したかぁ」


 シフォンケーキを食べた後、私たちは魔法研究会に向かった。


「すみません、見学しに来たんですけど……」


 今度は私が先に入ると大量の資料が積み重なった光景が目に飛び込んできた。が、ドミノ倒しの要領でどんどん倒れていくのも見えた。


「あ、見学の人?ごめんね~?ちょっとそれどころじゃないからまた今度にしてもらえる?」

「あ、わかりました。」


 結局、シフォンケーキを食べて見学は終わったのだった。


後書き

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