第31話 悪意なき悪意
「おはよう、日向。」
「おはよう。」
朝起きた私たちはいつも通りにパンを焼いて学校の準備をしていた。家出してくるときに制服とかいるものは持ってきていたおかげで家に帰らなくても大丈夫だった。
「そういえば、お母さんの方には連絡とかしなくていいの?」
日向のお母さんがどんな人なのか知らないけど連絡くらいしておいた方がいい気がする。間違って行方不明なんてされたら大変だし。
「それに関しては大丈夫。家出するときに荷物まとめたのお母さんだから。今頃お父さんを締め上げてる頃かなぁ。私がお父さんの七光りによって来る人が苦手なこと相談してたから。」
「そうなんだ、ならよかった。なら、もうすぐ帰れるね!」
そう話すと日向の顔が少し申し訳なさそうになりながら話し出す。
「白ちゃんがいいならさ、もう少しだけここに居させて?お父さんのことは好きだけど目標のために少し距離を置きたいから。」
「もちろんいいに決まってるよ。私は日向がいてくれて楽しいし、お母さんたちはしばらく帰ってこないから。」
正式に日向が私の家に居候することが決まり嬉しい気持ちでいっぱいになりながら私は通学路を歩く。そういえば日向と登校するのは初めてかも。
教室につくと何人かのグループになって話してた。とぎれとぎれにダンジョンとかスキルとか聞こえるからパーティを組んでるだと思った。
すると不意にクラスメイトの一人が話しかけてきた。
「夜雀さん、俺たちのパーティーに入らない?俺たちダンジョン中継してるんだけど野郎ばっかで花がなくてさ、夜雀さんが入ってくれたらきっと人気出ると思うんだ。どうかな?」
パ、パーティーにわたしを!?いやいや私なんかを入れたところで人気になんてならないよ!それに私は日向ともうパーティー組んでるし……
「夜雀さんは何もしなくていいからさ!映像の華やかさアップのためにお願いっ!」
何もしなくていい?それって私である必要ある?
人とかかわってこなかった私でも少しむかついてきた。日向は私と探索したいって言ってくれたのに、この人たちは私のことは見てない。きっと画面の先の人たちのことしか見えてないんだ。
「もう白ちゃんは私とパーティー組んでるから無理だよー?何、私から奪うわけ?」
日向もこの人たちの言い分に腹が立ったのか語彙が強くなってる。
「黒音さんも俺たちのパーティ―に入ろうぜ?女二人なんて大変だろ、俺たちが倒してやるから後ろで攻撃するだけでいいからさ!そうしたらきっとにん」
「絶対にパーティ―には入りません!!私と日向でダンジョンには潜りますから!」
もうこれ以上この人たちの話を聞いていたくなかった。確かにダンジョン中継で人気になれば日向もお父さん以上になれるかもしれない。でもこの人たちは私たちを見てない!舞台装置とか賑やかしとかと同じに見てる。そんな人たちとダンジョンに潜りたくない!
「ちっ後から入れてくれって言われても入れないからな!」
あの失礼な人たちはすごすごと私たちから離れていった。私の声で教室の目線は集中していた、普段こんな大きな声出さないからね。そんなに目立ちたいなら教室の視線くらい気にしなければいいのにね。
「ごめんね日向、私がすぐに断らなかったせいで日向まで不快な思いさせちゃった。……日向?」
日向は驚いた顔をして私を見てた。なんでだろう。
「いや、白ちゃんがそこまで大きな声で拒絶するの初めてで驚いちゃった。ありがとう、私の分も怒ってくれて。」
「ううん、私もあの人たちの言い分には腹が立ったから。日向の気持ちわかった気がするよ。私に話しかけてるのに私を見てない感覚ってこんなに嫌な気持ちになるんだね……」
キーンコーンカーンコーン
始業のチャイムと同時に担任の先生が教室に入ってきた。
「席につけ、授業を始める。」
先生の短いこと名に含まれた怒気に全員すぐに席に座った。何かあったのかな?
「まず、そこのお前、ダンジョン中継はなぜ行われているか答えろ。」
「え?ダンジョンの攻略を放送して楽しませるためですか……?」
「確かにその側面もある実際、ゲート付近ではそれを楽しみにしているやつもいるからな。だが、本来は緊急性のある事柄などを伝える目的の連絡手段だ。そこを間違えてはいけない。それに、お前らが人気がないのはお前らが弱いからだ。決して、華がないからだとかの理由ではない。人気になりたくば強くなれ。弱い奴の中継など見る奴は少ない。」
先生の言い分はすべて正しく感じて誰も反論はしなかった。私たちの声を聴いていてこの話をしたんだ。私も肝に銘じよう。
「さて、耳障りな声が聞こえたから説教をしたがここからが本来の連絡事項だ。今日より部活動の体験入部が開始される。仮入部期間は2週間だがそのあとでも入部は可能だ。よく考えて決めるように。では授業を始める。」
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