第30話 銭湯
「それでさ、大福だけどどうやって連れて行くの?」
「え?」
普通に家に連れて行こうかなって思ったんだけど……
「他の魔物とかならまだしもスライムだとちょっとした事で死んじゃうかもでしょ?だから何かスキルでできることないかなぁって。」
うーん、そう言うのは別にないんだよね……あ、でもさっきみたいに何かすれば新しくスキルが手に入るかも?
「大福、私と一緒に行くには死なないようにしないとなんだけど出来ることないかな?」
私は思い浮かばないから大福に任せることにした。そうしたら私の考えを読み取ったのかグネグネしだす大福。
「な、何してるんだろう。わかる白ちゃん?」
「わかんない、けど大丈夫だと思う。」
しばらくして大福が動きをやめたら突然消え始めた。
「「えっ!?」」
大福ー!?死んじゃったの?え、なんで!
大福がいた場所には魔石に見えるがまるでカットされたように綺麗な宝石が落ちていた。
「なんだろう、これ。」
手に取った瞬間またあの声が聞こえてきた。
『召喚石を手に入れました。これにより、眷属召喚のスキルを入手しました。』
つまり、大福を召喚できるってこと!?すぐに召喚しよう!
「【眷属召喚】!おいで、大福!」
スキルを発動すると先ほど拾った宝石が光り、大福が召喚された。
「良かったー死んじゃったかと思ったよー。心臓に悪いなぁ、もう。」
スキル詳細を見てみよう。わからないときは見た方が早いからね!
ーーーーーーーーーーー
眷属召喚
種類:アクティブ
自身の血を分けた眷属を召喚する。普段は召喚石におり、石に溜まった主人の魔力で顕現する。
ーーーーーーーーーーー
なるほど。つまり私の魔力を一定値使って召喚して、またこの宝石に戻るんだね。
「どう?白ちゃん、使えそうなスキルだった?」
「うん!ただ何体も出せないし、今のところ大福だけかな。」
まぁ、狼も魔石はあるから眷属にできないこともないんだけど……もう少し時間が欲しいかな。まだ少し怖い。
「日向はどうだった?【魔纏】習得できそう?」
私が質問すると日向はニヤニヤして笑いはじめた。
「ふっふっふ。見て驚けー?【魔纏】!」
日向は身体に魔力を纏って見せた。その後すぐに感じなくなったけどよく観察したら魔力を纏ってることがわかる。
「凄い、もう習得できたの!?うー置いてかれたかー。私も頑張らないとなぁ。」
「まぁこればっかりは感覚としかいえないからなぁ。私と魔纏は結構相性良かったみたい。今まで以上に早く動けるようになったし、耳も良くなったかも。」
何回やっても内側に魔力を纏うイメージが湧かないんだよね。闇魔法も手に覆う形で出てくるし。
「そろそろ今日は帰ろうか。日も沈んできたことだし!」
既に日が傾きはじめて赤くなっていた。朝から来たのにそんなにここで練習してたのかと時間が過ぎるのが早く感じる。
「そうだ、白ちゃん。この後近くの銭湯に行かない?二人で入るには家だと狭いでしょ?」
「銭湯かぁ最近行ってなかったな。うん、行こう!」
身体を見られるからあまり銭湯とか温泉は行かなくなったけど日向となら楽しめるかな。
一旦帰宅して着替えを持って銭湯に向けて歩く。
「白ちゃん良いの?着替えまで借りちゃって。」
「良いの。むしろ私なんかので大丈夫?大きさとかは合ってると思うけど……。」
日向が家に帰れないから私の下着と着替えを渡したけど大丈夫だよね?渋々って感じじゃなかったし。
「うん、それは問題ないかな。あるとすれば意外と大胆なんだなって。まさかあんなに可愛いのとかあるとは。」
「そこ気にしないでよぉ。服がおしゃれできなくてそう言うところしか可愛いの買えなかったんだから。って何外でこんな話ししてるの、私!?恥ずかしいぃ。」
そんな事もありながら近くの銭湯に到着した。
「ここ、結構探索者が来るらしくてここなら白ちゃんを変な目で見る人もいないでしょ。アバターなんて髪色とか肌色とか変えてない人の方が少ないし。」
「そうだよね……」
中に入ると木目のある床と銭湯特有の香りがする。
靴を脱いで靴箱に入れて女湯に向かう。中には私たちと同じくらいの人からお母さんくらいの人までいっぱいいた。
「ほらほら、早く着替えよう?ここ、源泉掛け流しだって書いてあったから楽しみだね。」
「すぐに着替えるから先に行ってて?」
「少しくらい待つよ、だから着替えて?」
日向に見られるの恥ずかしかったから先に行ってもらおうと思ったのに……しょうがない。
私は諦めて服を脱いでいく。太陽で焼けてない肌は陶器のように白くて不健康そうだといつも思う。
「わぁーお肌真っ白!私すぐ日焼けしちゃうから憧れるなぁ。」
「そう?私はもう少し血色が良くなると良いなって思うけど。」
そんなに良いものだと思えないけどなぁ。寒い……早く入ろう。
日向と風呂場に入ると思ったより広かった。お風呂が6つくらいあって外にも露天風呂のようなものがあった。
身体を洗って近くのお風呂に浸かると全身の疲れが取れる気がした。
「はふぅ、久しぶりに来たけど気持ちいいね?」
「うん、今日は頑張ったから疲れた身体に染みるなぁ。」
少しすると日向が露天風呂に行こうと誘ってきた。
「ごめんね、流石に外は体が焼けちゃうから。」
「あ、そっか。じゃあサウナならどう?」
「それなら大丈夫かな。少しなら入れると思う。」
私たちは端の方にあったサウナに入ることにした。中には数人いて、この前、講習で見かけた小柄な人もいた。
「暑い……身体から汗がいっぱい出てくるね。日向は大丈夫?」
「なんとかぁー。」
既に地獄のような暑さになっていたサウナで温まっているとふと思った。
この暑さを魔力で再現したら上手くいくかも。体の奥から湧いてくるイメージ……!いける!それはそれとして……………もう無理!
私は暑さに耐えかねて外に出た。すぐに隣にあった水風呂に入って身体を冷やす。その後お風呂に浸かっていると日向も出てきた。
「暑かったー!でも汗たくさん出してスッキリした気がする。」
日向が出てくるのとほぼ同時にあの小柄な人が水風呂に飛び込んでいくのが見えた。
私と日向は伸ばせないうちに上がることにした。あの人はずっと水風呂の中で鼻歌を歌っていた。寒くないのかな。
「いやーお風呂上がりのフルーツ牛乳は美味しいね♪」
「コーヒー牛乳の方が私は好きかなぁ。」
火照った体を冷やしながらゴザの上でくつろいで話す。
「もしかしたら【魔纏】できるようになるかも。」
「ほんと?なら、来週から初心者の森で対狼戦の練習始められそうだね!」
「うん、明日の放課後頑張ってみる!」
そうして、私たちは家に帰って眠りについた。
後書き
ここまで読んでくれてありがとうございます!
面白いと思ったら星とフォローをお願いします!作者が狂喜乱舞して喜びます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます