第28話 家出猫
「いや〜数時間前に別れたのに押しかけちゃってごめん、白ちゃん。」
「いいよ、それでどうしたの?家に帰ったんじゃ無かったの?」
私は自分の部屋に日向を通して話を聞くことにした。
お父さんがうるさいからって家に帰ったはずなんだけど……何かあったのかな。
日向は気まずそうに頭を掻く。
「その、お父さんと喧嘩しちゃって。あはは……。」
「えっ!?何か喧嘩することがあったの?」
日向の話を聞いてる限り二人の仲は良好でそうそう喧嘩することはないと勝手に思ってたんだけど。
「家に帰ったら凄い勢いで抱きしめられてね。まぁ、それはたまにあるからいいんだけど。どこから聞きつけたのか私たちが全滅したことを知ってたの。」
あぁ、なるほど。それで喧嘩になったのかな。え、じゃあ私にも原因あるんじゃ?
「それについてはまぁ気にはしてなくて。ただ、お父さんが二人だと危険だからってクランから同い年の探索者をパーティーに入れようとしてそれで口論になっちゃった。」
追加メンバーはちゃんと私たちで決めたいもんね。特にお互い人と接するのが怖いから。
「で、喧嘩になって売り文句に買い文句で飛び出してきたの。」
「今頃日向のこと探してる気がするけどそれは良いの?」
ものすごく心配かけちゃうんじゃ……
私がそう考えていると日向は苦虫を噛み潰したように答えた。
「多分、探してると思うけどしばらくここに居させて。あの人誰連れてきたと思う!?男の人でしかも!前に私にコネでいいからクランに入らせてなんて言ってきたやつだよ?ふざけんなッ!」
あー日向のお父さん地雷踏んじゃったかぁ。確かにしばらくここに居てもらって熱を覚ましたほうがいいかも。
「じゃあここにしばらく居ていいよ?私も一人だと寂しかったから嬉しい。」
「ありがとうー!白ちゃん優しいなぁ。あ、そういえば何かしてたりしてない?急に来ちゃったから邪魔しちゃったりしてないかな?」
頭に思い浮かぶのは先ほどまで日向の匂いを嗅いで寝ようとしていた自分。すごく恥ずかしくなって耳が真っ赤になる。
顔まで赤くしなかったのは我ながら良くやったと言いたい。
「いや?何もしてなかったよ。」
「ならさ、少し練習に付き合ってくれない?この前、白ちゃんが寝る時に魔力コントロールしてるって言ってたでしょ?だから試してみたいなって。」
うーん、と言っても特別なことはしてないんだけどな……
「寝る前にこのくらいの大きさの闇の玉を作って形を変えたりしてるくらいだよ。」
日向の前で三角や四角、さらには回転させて細長くしたりしてみせた。
「私にできる気がしないことをサラッとやるあたり、白ちゃんってほんと魔法が得意だよね。」
「そうかなぁ、聖さんに教えてもらうまで手から離れることすらできなかったけど。」
「私も教えてもらおうかなぁ……あ、そうだ!白ちゃん魔力流ししてみてよ。それなら感覚掴めるかも。」
魔力流しって聖さんのやってたやつだよね?
私はベットに腰掛けた日向と手を合わせて魔力を流し込む。
「日向、魔力を出して操作してみて?」
「こ、こう?」
何となく日向の魔力がどう動いてるのか分かってきた。何というか凄くムラがあるんだ。ある時は強く動いて、ある時は弱く動いてる感じ。
「少し、私が動かしてみるよ?」
「えっ、ちょっと待って……!?んっ!?」
出来るだけ一定になるように私の魔力で宥めていく。出力のムラの割に素直な魔力はすぐに一定の出力になった。
「どう?少し魔力が使いやすく―——ってあれ?日向どうしたの?」
日向は私のベットに力無く寝そべっていた。息が荒くなってて少し汗ばんだ様子で手で顔を隠してる。
「はぁはぁ、これ、やばいって。ちょっと外出てるね……」
フラフラした足取りで日向は部屋の外に出ていった。心配だったけど追いかけるのも悪いかなと思い部屋で待つことにした。
しばらくしたら日向が部屋に戻ってきた。
「なんとなく出来る気がする。ふぬぬぬぬ!」
日向は小さなビー玉くらいの魔力を出して丸から三角に形を変えることに成功した。
「出来たよ!白ちゃん出来たよ私!」
「凄い凄い!やったね日向!」
まるで自分のことのように喜んだ私はやはり、日向のムラのある魔力出力が原因だと思った。
「日向の魔力を触ってみて思ったんだけど凄く出力にムラがあるんだよね。強い時は強くて弱い時は本当に微弱なせいでコントロールが難しいんじゃないかな。」
「確かに。上手くいきそうってところで急にコントロールが崩れちゃったりはしてたかな。白ちゃんがしてくれたみたいに一定の出力にできるようになったほうがいいのかな。」
でも、勿体無い気がするんだよね……。
「聖さんは魔力にはその人の個性が出るって言ってた。かなり扱いにくそうだけど瞬間的な出力ならムラのある方がいいと思う。」
その気になれば一定にすることができる、の方がいい気がする。元々日向はデメリットで魔法は使えないから特に。
「結局、練習あるのみってことかなー。」
後書き
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