第25話 ダンジョン講習

 うぅなんか苦しい。柔らかい何かにしめつけられてるような……ってそうだ日向と寝てるんだった!


 自分から抱きつきにいって寝た白だったが朝になり起きてみると逆に日向が白に抱きついていると言う構図になっていた。


「日向、起きてっ起きてってば!」


 白の部屋は朝になり日差しが入らないように締め切られている。遮光カーテンの上から厚い布のカーテンで締め切られているという徹底っぷりのせいで体内時計が狂っている日向は上手く起きられないでいた。


「ぅうん?まだ夜でしょー?もう少し寝ようよぉ。」


「もう朝だって!そろそろ起きないと。離してー。」


 既に7時を過ぎている事を目覚ましで確認した白はどうにか日向から脱出する方法を探す。だが、完全に腕も足もホールドされた状態では声を出す以外にできることはなかった。動かなかったのだ。


「こうなったらッ!ふ〜。」

「ふにゃあ!?」


 日向の耳に息を吹きかけることを決行した白は耳が弱点なことに気がつく。


「フフッ耳が弱いんだぁ?はむっ。」

「ミッ!?」


 白は更に日向の耳を甘噛みして起こそうとする。日向は猫の獣人のステータスを得たこともあり耳が良くなった弊害で敏感になっていた。


「あ、起きるッ起きるからそれやめてー!?」

「なんか楽しくなってきたかも。」

「〜〜〜〜!」


 言葉にならない悲鳴を発して日向は飛び起きる。


「はぁはぁはぁ、ごめんって。起きるから……。もうしないで……?」


 少し顔を赤らめて息を荒くする日向を見て嗜虐心がくすぐられた白。


「ちゃんと起きたらね、可愛かったよ?」

「白ちゃんのばかぁ!!」


 全力で日向を揶揄うことに決めた白。それを聞いて更に顔を赤らめた日向は傍にあった枕を投げつけるのだった。



「全くもう、意外と白ちゃんがドSだなんて知らなかったよ。」

「ごめんって。なんだか日向が可愛かったから。食パンでいいかなぁ?いちごジャムあるけどいる?」


 普段とは違う朝にテンションが上がっていることを自覚しつつそれを楽しむ白。


「うん、いちごジャム好きだから貰おうかな。白ちゃんってパン派なんだ。コーヒー豆も結構揃ってるね。」

「朝は早く起きてゆっくりして今日1日頑張るぞってやるのが日課だったから。コーヒーは好きだし趣味かなぁ。」


 最近は日向に早く会いたくて飲んでないけど。


「今日はダンジョンに行かないで講習を受けようかなって思うんだけどいいかな?まだ私たちはFランクダンジョンについて知らないことがあるし、私と白ちゃんでも知識差があるから。」


 確かに私は日向の知識に頼りきりな面があるよね。いざって時に咄嗟に判断できるようにならないと。


「賛成!この前みたいなことにならないためにもいった方がいいと思う。」

「それじゃあ食べたら行こっか!」



「凄い人の数……休日なのにこんなに人がいるなんてびっくりだよ。」


 ギルドに来た私は休日なのに探索者がいっぱいいることに驚いた。もちろん、土日が探索禁止なんてことはないのだけど。


「探索者だけじゃなくて依頼する人も来てるからごった返してるんだね。素材を発注したりして来週に備えてるんだ。」


 なるほど……そういえば講習ってどこでやるんだろ。


「入り口で止まってても良くないし早く行こう?受付で聞けばわかるかな。」


 人混みを掻き分けて受付に進んでいく。若干見られているのがわかって気が滅入るなぁ。なんで見てくるんだろ。


「あ、白さん日向さん。今日はどうされました?」

「Fランクダンジョンに入るには知識不足を感じて講習を受けたいなって。どうしたらいいですか?」

「それでしたらあと30分後にギルドが定期的に行う講習が始まるので左手奥の講堂に行ってください。」

「わかりました。」


 日向と教えられた講堂に入ると私と同じくらいの歳の人たちが何人か既にいた。できるだけ後ろの光の当たらない位置に日向と座る。


「白ちゃんはこっちね。私が影になってあげる。」

「ありがとう、助かるよー!」


 しばらくしてギルドの制服を着た男の人が入ってきた。


「えーこれより定期ダンジョン講習を始めます。最初に言っておきますが、出入り自由で私語なども自由、質問も適宜していただいて結構です。では、始めますね。」


 それからギルドの職員さんはアバターとは、ステータスとは、スキルとは。いろんな説明をしてくれた。特に食いつきが多かったのは魔法について。


 私は聖さんに教えてもらったけどこう言う講習に出ないとうまく使えない人は多そうだよね。


「次にダンジョンの種類についてです。」


 ギルドの職員さんは後ろにある黒板に絵を描いていった。


「フラットタイプ、迷宮タイプ、階層タイプ、異界タイプの計4つです。

 まず、フラットタイプ。皆さんも体験したスライムのいる平原のタイプですね。どこまでも広がる平坦なダンジョンです。この手のダンジョンはダンジョンコアを持たないので踏破は出来ません。」


 そうなんだ。って事はあの狼のいるダンジョンもそうなのかな。


「次に迷宮タイプ。これは迷路のようになっている屋内型のダンジョンです。そこらじゅうにさまざまな罠がある初心者殺しのダンジョンです。落とし穴や転がる鉄球は勿論のこと毒ガスなどの意地の悪い罠もあるので注意が必要ですね。」


 ど、毒ガス!?吸い込んだら大変じゃない!あ、だからポーションが必要なのかな。今度薬屋のお婆さんに聞いてみよう。


「三つ目が階層タイプ。一つ一つが層のようになっていて狭い代わりに何階かあり、門番のような魔物が生息しています。宝箱のようなものを落とすことがあり、アーティファクトなども入っていることがあると聞きます。」


 その中に日光耐性とかのアーティファクトないかなぁ。


「ただし、ミミックと呼ばれる宝箱に擬態した魔物もいるので注意です。魔力を帯びているので感知することで見分けてから開けることをお勧めしますよ?」


 職員さんの目からは「やらなかった場合食われるぞ」と言う言葉が伝わってきた。怖いよ!


「最後に異界タイプですね。これは本当に珍しいタイプです。箱庭のようになっている空間に主と呼ばれる魔物があり、通常とは違った物理法則が働いています。確認されているものだと地面が磁力を持った異界や魔力を阻害される異界などが確認されています。」


 少し気になっているんだけど確認されているってまるでみたいに聞こえるなぁ。


「確認されているってダンジョンの数は変化してるっちゅうことか?」


 手前の席にいた小柄な女の人が質問してた。


「はい。条件などは不明ですが『気が付いたら行けるダンジョンが増えていた。』と言った報告があります。新しく発見したダンジョンを報告するとギルドから礼金を貰えるので是非情報提供を。」


 もしかしたら海のダンジョンとかあるのかな?水着とか着れなかったから着てみたいなぁ。


「最後にこれはあまり関係のないことなのですが、【魔物濁流スタンピード】で確認されるネームドはダンジョンを強制的に異界タイプに変質させていくことが確認されています。異変を感じたらすぐに退避することをお勧めします。

以上で講習を終了します。」


 なんだかいろんなことを聞いて疲れちゃったなぁ。ネームドかぁ、日向のお父さんは倒したことあるんだよね。いつか日向と私も倒しに行くのかな。


後書き

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