第24話 本音

「「ごちそうさまでした~」」


 おいしかったー。初めて食べたのもそうだけど、日向と一緒に食べたのもあっておいしく感じた気がする。また来たいな。


「またお越しください。」


 子猫の憩い亭を出た私たちは探索者通りを歩いていた。9時を過ぎているのにお店は閉まっているところが見えなくてお祭り騒ぎみたい。


「この通りは探索者とその関係者がいっぱい来る関係で昼は探索の準備、夜は探索帰りの人たちが入りびたる不夜通りなんだ!いつでもお祭り騒ぎで退屈しないでしょ?」

「うん、みんな楽しそう。」


 ちょっと日向と離れたくないなぁ一人になったら今日のこと思い出しちゃうかも。でも日向は帰らないとだよね……


 すると日向が振り返った。


「あのさ、終電なくなっちゃったし白ちゃんの家泊めてくれない?」

「え?あっそう言えばもうそんな時間!?お、お父さんには伝えたの?」

「実は白ちゃんが起きる前にそうなるかもとは言ってあったんだ。ちょっと二人で話したいこともあったし。」


 話したいことっていうのがよく分からないけど日向と一緒にいられるのは嬉しい。もちろん、断らない。


「うん、良いよ。私も日向ともう少し話したかったから。」

「やった!あ、白ちゃんの親に連絡したほうがいいんじゃ……。」

「今、家にいないの。だから大丈夫かな。」


 しばらく戻って来なそうだし、良いよね?


 私と日向は初めて同じ帰り道を歩いた。自分の家を教えるのは初めてで少し、緊張する。


「ここが私の家だよ、入って?」

「想像してたより大きいんだね……お邪魔しまーす。」


 家に入ってリビングの電気をつける。そういえばまだ食器を洗ってなかったな。


「そこらへんでくつろいでて?私は食器を片付けないといけないから。」

「手伝おうかー?」

「大丈夫!すぐに終わるから。」


 家に日向を招き入れているという状況にワクワクやら緊張やらで胸が高鳴る。自分の家に友達を招くってこんなに楽しいんだ!


 洗い物を終えた私はソファーに座る日向がテレビ横に置いてある写真を見ていることに気がつく。


「白ちゃんのお父さんとお母さん?」

「うん、今はどこで何してるのか分からないけどね。」

「お母さんもアルビノだったの?」

「私ほど重症じゃ無いけどね。お母さんは日焼けクリームを塗ればなんとかなるから。それに少しなら日焼けもできたし。」


 遺伝とは言われてたけどそれでも私は何故かお母さんよりも酷い症状だった。


「そうなんだ。日向ぼっこをしたいって思ったのはお母さんの影響?」

「うーん、どうだろう。小さい頃はそこまでしたいと思わなかったんだけどね。傘を刺さないでも外を歩けるお母さんとか周りの楽しそうにしてる子たちを見て私もしたいって思ったのは確かかな。」


 きっと普通の生活に憧れてたんだと思う。普通じゃない生活、普通じゃない体質。だからこそ。


「昔ね、虐められてたんだ。この身体の事で。気持ち悪いとかへんな身体とか言われたかな?ずっと自分と他の人の間で線引きがされてて、いつの間にか自分自身でも離れるようにしてた。だから、日向が入学式のあの時話しかけられて本当にびっくりしたんだから。」

「あの時は私も必死だったんだよ。」


 必死?そこまで私に何か話したいことがあったのかな……あの時が初対面だと思うんだけど。


「私のお父さんが探索者だっていうのは話したよね?」

「うん。」


 蓮さんですら追いつけないと思った凄い人。


「【黒豹の牙】Sランク探索者が束ねる日本トップクラスのクランのリーダーが私のお父さん。」

「そうなの!?あっだから日向はダンジョンに詳しいんだね!」


 そっか、それで日向は授業の時にSランク探索者の文字を見てたんだ。でも、あの時の日向は自慢とかそう言う感じじゃなかった気がする。


「私ものね、白ちゃんと似たようなものなんだ。中学生の時、お父さんのことがクラスに知られて私はクラスの中心にいたの。でも、それは私じゃなくてSランク探索者の娘っていう肩書きにだった。だから、私自身を見てもらうためにお父さんより強くなりたかった。」


「それが、日向がしたい事?」


「最初はね。校門で囲まれた時にちょうど白ちゃんが通っていくのが見えたの。私を知らないこの子なら友達になれるって思った。一緒にダンジョンに潜ってくれるかなって。案の定、名前を言っても反応なかったしね?」


 あの時はクランとかSランク探索者とか知らなかったしなぁ。知っていても気にしなかったと思うけど。


「私も日向が入学式の列に連れていってくれた時に手を離しちゃったことあるでしょ?」

「あの時の白ちゃんの慌てっぷりは今でも思い出せるよ!」

「あの時、もう一度手を取ってくれて嬉しかった。その後もそう。パーティーに誘ってくれて嬉しかった。私ね、日向ぼっこをしたいけど同じくらい日向と一緒に居たい。日向の夢を応援したい。」


 いつか、外でも日傘なしで日向と歩いたり話したり、日向を歩きたい。それが新しい夢。


「白ちゃんと強くなってお父さんを超えたいなんていう私の独りよがりな夢だけど……いいの?」

「もちろん!それに、私の日光耐性を外でも使えるくらいまで付き合ってもらわないと!むしろ、私の方が夢まで長いかも?」


 きっとダンジョンで日向ぼっこ出来るくらいじゃ外だとまだ無理だ。だから、日向の心配してることは意味ないこと。


「しょうがないなぁ、お互いの夢のために頑張るとしますか!」

「うん!」


 ちょっと眠くなってきた。もうそろそろ寝る時間だ。明日は休日だから学校は休みだけど。


「日向はどうする?お母さんのベットで寝る?」

「うーん、申し訳ないからこのソファーで寝ることにするよ。」


 えぇ!?春先とはいえまだ少し寒いよね?あっそうだ!


「私のベットで寝る?ちょっと大きめだから二人でも寝られるよ!」

「良いの?流石に狭くなると思うけど。」


 正直なところ、今日の死んだ事を夢に見そうだから日向にいてほしい。きっと日向がいてくれれば安心できるから。


「大丈夫!ほら、こっち。」


 日向を私の部屋に案内する。


「おお、綺麗にされてる!私の部屋なんかより女の子っぽい。お、ぬいぐるみもあるじゃん。」


 日向に物色される前にベットに連れ込まなくては!!


「日向こっちに来て!」


 引っ張ってベットに連れ込む。抱き合うようにして転がり込んだ私たちは向き合って笑う。


「もう、そんなに恥ずかしがらなくても……」

「急に物色し始めるからでしょー?ほら、寝よう!」


 電気を消して寝ようとする私たちは少しの沈黙の後、話し始める。


「あの、白さん?何故抱きついてくるんです?」

「ちょっと狼が夢に出そうなので。」


すーはーすーはー


「思いっきり匂い嗅いでるよね!?犬じゃないんだから。」

「日向が太陽の匂いするのがいけないの。罪悪感あるなら大人しくしてて!」

「ぐぬぬ、しょうがないなぁ。おやすみ!」

「おやすみ。」



後書き

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