第20話 死亡

 初戦闘から何度か日向とグラスウルフを倒して連携も上手になったと思う。


「白ちゃん結構魔力コントロール上手いよね。練習とかしてるの?」

「うん、寝る前とかに手元に作ってくるくる回したりしてる。あとはアイマスクみたいにして寝たりもするかな。」


 私の魔力は夜みたいな雰囲気がするせいかすごく安心する。もちろん、日光が好きではあるんだけど何も気にしないでいられる時間っていうのは私にとって特別な時間だから。


「なるほどねー。後は称号の効果とかかな。ちなみに近距離で戦えたりはするの?」

「無理だと思う……運動なんてできなかったから咄嗟に動けないかな。それに闇魔法自体、遠距離でしか使ったことないし。」


 多分、この前石を投げた時みたいにやるだけ無駄だと思う。槍だけだといつか効かなくなるとは思うけどそれでも、近距離で戦うのは無理。


「そうだ、日向少し試したいことがあるから見ててくれないかな。」

「?まぁ良いけど何をするの?」

「うまく行くと良いんだけど……」


 4体の狼の群れを見つけた私は手のひらに極小の闇の月を生み出して撃ち出す。この前スライムに使った月の二回りくらい小さい月は狼の少し上空に止まった後、大爆発を引き起こした。


「よし!成功できた。見てた、日向?」

「……………………」


 あ、しまった。これ槍の爆発見せた時と同じだ。


「いや、うん。槍が爆発するからもしかしたらとは思ったけどやばいね。あれって複数出せるの?」

「ううん。今のところひとつだけ。後ひとつ試して良い?」

「もうここまで来たら怖いもの見たさで楽しみになってきた……!今度は何をするの?」

「昨日スライムを倒そうとした時に失敗した技をやってみようかなって。」


 掃除機を思い浮かべたら凄い勢いで吸い込み始めたんだよね。スライムだからくっついて問題なかったけど狼ならどうなるんだろう。


「えいっ」


 私は横に伸びた闇をさっき倒した狼の近くにいた群れに放出した。その闇は掃除機みたいに吸い込み始めて数体飲み込んだ。何とか耐えてる個体もいて闇の槍で攻撃して倒せた。


「ちょっと待って。明らかに今目の前で起こってることが異常自体なんだけど。なんでブラックホール作ってるの?」

「ブラックホール?あはは、そんな凄いもの私が作れるわけないでしょ。掃除機を思い浮かべて月を作っちゃってスライムを合体させちゃった技なんだ、これ。」


 結局、スライムは倒せなくて大きくなっちゃったんだよね。


「……掃除機?これが?称号のせいなのか白ちゃんが魔法の天才なのかわからないけど取り敢えず封印ね。」

「えぇ!?な、何で。」

「だってほら、素材がボロボロ。倒した後に素材ごと中でぐるぐるしてポイってしてるから査定額が死ぬほど下がっちゃう。緊急時だけの魔法かな。」


 そうだった……ただ倒せば良いってものじゃないんだよね。


「とはいえ、すごく強い技だし、危ない時はじゃんじゃん使ってね。」

「うん。」


 日向は私のことを気遣ってくれるから優しいなぁ。やらかしちゃった分頑張るぞー!目指せ、レベル5!


 その後も私と日向で連携しながら狼を倒していった。順調に倒せていた私たちにピンチは訪れた。


「よし、今度はあそこの群れを倒そう!白ちゃん、用意はいい?」

「うん!あと少しでレベルも上がるし頑張る!」


 いつも通り日向が群れを引きつけて私が日向の撃ち漏らしを倒していく……筈だった。


「ワオォォォォォン!!」


 一体だけ赤い狼が吠えた瞬間、群れの動きに変化が見えてきた。私の攻撃が当たらなくなって日向がどんどん囲まれていっちゃった。


「日向!私が手前を倒すからそのうちに戻ってきて!?」


 このままじゃ日向がやられちゃう!どうにかして退路を作ってあげなきゃ。


 私が闇の槍を作った瞬間、またあの狼が遠吠えをした。急いで圧縮を開始するけど狙いは日向じゃなかった。


「えっ急にどこに向かって!?まさか……!逃げて白ちゃん!!」


 何故か私の方に狼がやってきた。


 何で!?私の気配は消えてる筈……もしかして匂いと魔力で見つかったの!?今までそんなことなかったのに!


「こ、来ないでっ」


 闇の槍を狼の手前辺りに刺して爆発させたけどあの赤い狼が他の狼に指示を出して避けさせてる!


「この、邪魔!白ちゃんから潰す気!?私の攻撃力が弱いのを見透かして?明らかに普通じゃない!」


 日向は5体くらいの狼に囲まれて動けないでいた。向かってくる狼を早く倒して助けなきゃ!


 私はブラックホールって日向が呼んでた技を使うことにした。そこまでしてやっと狼の足が止まった。後は槍で倒すだけ。


「待ってて、日向。すぐに行くから!」


 私は槍を動けない狼たちに射出する。爆発に巻き込まれた狼たちの断末魔で倒したことを確信した私はブラックホールを消す。


「はぁはぁ、流石に疲れた。日向は……まだ生きてる。良かった。」


 あれ、日向が何か叫んでる……何処かで似たような事があったような。


 魔力の使いすぎで思考が鈍っていた白は爆発の中から飛び出す赤い影を見落としていた。


「いっぁぁぁあ"あ"あ"!?」


 痛い痛い痛い痛い痛い!?どうして、倒した筈、痛い痛い!!


 初めて感じる痛みと恐怖。何故生きているのかと言う疑問すら痛みによって彼方に吹き飛んでいく。身体から流れ出る命の雫が刻一刻と白の命があと数分だと知らせていく。


 怖い、痛い、死ぬ?


 私の意識は朦朧とし始めて痛みすら遠のいていく。死ぬことは初めてではない。ただ、死因が消滅か外傷かの違い。しかし、その死因が問題だった。


 死ぬのってこんなに怖いの?嫌だ、死にたくない!怖いよぉ、日向!


 私は日向に助けを求めようとして思い出す。もし、自分がやられたら次は日向の番だと言うことに。


 嫌だ。死ぬのは怖いけど、それ以上に私を大切に思ってくれる日向が死ぬのはもっと嫌。私に普通に接してくれる日向に恩返しがしたいんだ!!


「【血…液…操作】!」


 未だ噛み付いている狼を身体から流れ出る命の雫を持って貫く。


「ぁ……」


 ダメだ、この狼を倒すので精一杯。でも、普通の狼なら日向だけなら助かるよね。


 白は自身に噛み付いた狼と共に消滅した。



後書き

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