トライアンドエラー

第8話 探索者

 私は真っ暗な部屋で目を覚ました。日光が入らないように閉じ切ったこの暗い部屋。

 前までは憂鬱な気分になる原因の一つだったこの部屋も昨日とは違って見える。


 日向に会える。誰かに会うことを楽しみにするなんて今まで無かった。でも今は違う!


「急いで準備しないと!」


 早く日向に会いたい一心で私は朝ごはんを準備する。制服に着替え、学校で使うものをバックに適当に詰める。その間にパンは焼けた良い匂いを醸し出す。

 いちごジャムを塗りたくって食べる。いつもと同じ生活。一つ違うのはインスタント珈琲を入れないこと。

 

 だって私は周りのことを気にするより日向に会うことの方が大事になったから。


「美味しかった!皿洗いは帰ってきてからやろう。」


 私は玄関で身だしなみを整える。いつもは見るのも嫌なものだけど今はあまり感じない。


 日向が私の髪を誉めてくれたから?それとも。


 私の目には一瞬、自分の姿がアバターの姿と重なって見えた。


「行ってきます!」


 誰も返してくれないけどこの挨拶も私を元気付けるものじゃなくなった。


 学校の校門前、私は日向がいないかなと思いながら探していた。でも、見当たらない。それどころか他の生徒もいない。


 楽しみすぎて早くきちゃった。こんな時間に来る必要ないのに。日向はいるわけないよね。


 雲がかかって暗いなか、私は何でこんなに早く来たんだろう、とはしゃぎ過ぎた自分を笑いながら校門を抜ける。


「白ちゃーーん!!待ってーーー!」


 私は日向の声がして校門前に飛び出して周囲を見渡す。姿は一向に見えない。

 

 日向に会いたくて空耳でも聞こえたのかな。


 私が居ないと思って学校に入ろうとしたら。


「おはよう!白ちゃん」


 物凄く近くに日向がいた。

 びっくりして言葉が出なかったけど、私の体は勝手に動いた。


「うわっ白ちゃん結構体冷えてる!つ、冷たいっ」


 持っていた傘が地面に落ちる。

 私は日向を抱きしめていた。ほとんど無意識に動いていた。


 「おはよう!日向。」


 私はやっと動いた喉から言葉を絞り出す。そのあと、私は自分が何をしているか思い出した。


 あれ、私今、日向を抱きしめてる!?校門の真ん中で?は、恥ずかしい!


「おやおや、体温が上がってきたねぇ?意外と情熱的な、ん、だ、ね?」


 私は自分の顔がリンゴみたいになるのを感じる。肌が雪みたいに白いからわかりやすい。


「あうぅぅ。」


 すごく恥ずかしぃ。今にでも顔を隠したい。あっそうだ、傘!


 私は駆け寄った時に投げ捨てた傘を取りに行く。曇りだったおかげで火傷もしないで済んだ。


「それじゃ、学校に入ろう?真っ赤な白ちゃん。」


 私は日向に揶揄われながら学校の中に入っていく。日向に外見のことで揶揄われてるのに何故か楽しくなるのが不思議だ。


 二人が中に入って行くと空を覆っていた暗闇が次第に晴れて行くのだった。


 そのあと始業時間まで日向とダンジョンのことを話して時間を潰した。今日は日向が予定があるとかで行けないらしい。


 なら、一人でダンジョンに行ってみようかな。もし、日光耐性を上げられたら日向ともっと楽しめるはず!


 私は日光浴をするために探索者になったはずが日向とダンジョンに潜ることを楽しみにしている自分に苦笑する。


キーンコーンカーンコーン!


 始業の鐘が鳴ると東雲先生が入ってきた。


「今日は探索学についてだ。だいたいのものは知っていると思うが一応確認のためな。」


 あ、私あまり知らない。指されたらどうしよう!


 私が不安になっていると東雲先生は教室にある大きいディスプレイに画像を写した。


「まず、探索者の資格についてだ。一番前の席のメガネ!探索者のランクは?」


 一番前の席の頭の良さそうな人に東雲先生が質問する。私だったら答えられないよ!


「Gランクから始まり最上位はSランクです。」


 へぇーそうなんだ。確か私はGだよね?


「そうだ。特にSともなればこの日本には5人しかいない。何故かわかるか?」


 へぇ、そんな凄い人たちがいるんだ。私には遠い世界のお話だね。私は日向とダンジョンに行ければそれで良い。

 そう考えていたら日向が手を上げた。


「Sランクは他のランクとは違い桁外れの力を持つ人たちのランクだからです。達成したダンジョン数でランクアップする前までのランクとは違い、そのダンジョンの特異点。ネームドと呼ばれる魔物を一人で討伐できたものに渡される称号だからです。」


 そうなんだ。日向って凄くダンジョンに詳しいよね。お父さんに教えてもらったのかな。

 私は日向の知識量に感心しながら話を聞いていた。


「そうだ。このネームドが発生すると【魔物濁流スタンピード】が発生する。門の外にまで魔物が出てこようとするこの現象を止めた英雄。

それがSランク探索者たちだ。諸君もそれになれるよう努力すると良い。もっとも、そんなこと……起こらない方が良いんだけどな。」


 先生が少し表情に影を落としていた。何かあったんだろうか。

 私はなんとなく日向の方を見る。そうしたら日向は私の方を見ないでSランク探索者の文字だけを見ていた。


後書き

是非フォローと星を押してもらえると嬉しいです!作者のモチベーションが上がります!コメントも書いてくれればなんでも返します!










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る