第7話 side黒音日向

 私は小さい頃からお父さんが自慢だった。

 日本トップクラン【黒豹の牙】そのクランマスターが私のお父さん【黒音 豹牙くろねひょうが】だ。

 私はテレビでも実際にその場でもみんなから人気のあるお父さんである事が嬉しくて自慢した。

 みんな驚いたし、話を聞いてくる。そんな生活が楽しいと思った。お父さんみたいに私もみんなの人気者。将来は探索者になる!そう思ってた。

 ある時までは。


「ねぇねぇ、黒音さんのお父さんってあの【黒豹の牙】のクランマスターなんでしょ!?私、会ってみたい!」


「なぁ、【黒豹の牙】に入れるように掛け合ってくれない?」


「黒音さんってお父さんがすごいだけだよねー。」

「確かに!七光りって言うんだっけ?」


 私はお父さんの光に集まっただけの人しか見えてなかった。私を、私自身を見てくれている人は居なかった。


 だから私は探索者になって私を見てくれる人を探すためにこの学校にきた。

 それなのに、周りにはお父さんのことを聞きつけた人たちがいっぱい来た。


「君ってあの【黒音 豹牙】の娘さん!?」


「うわっ凄い、有名人だー!」


 一瞬で私の周りには人が集まった。私を、私自身を見てくれる人はここにも居ないんだ……


 そんな時、目の前を黒い傘を刺した子が通っていった。傘から少し出た白い髪の毛が印象的な子。でもそんなことはどうでもよくて。

 私を見てない!私をお父さんの娘としてみてくれない人がいた!


 (待って!会って話がしたいの!!)


 私は急いでその子を追いかけた。まるで私から逃げるみたいに走っていってしまうその子を私は全速力で追いかけた。


 ここ、私と同じ教室?やった!あの子と友達になりたい!きっと私を私としてみてくれる!


 私は息を整えて教室に入る。私はすぐにあの子を見つけた。それもそのはず、傘で見えなかったあの子はまるで異世界の人かと思うくらい美人で儚い印象を覚えたから。先に入った人もあの子を見て一瞬見惚れた後席にすごすごと座っていった。


 どうしよう、あの子と話したいけどすごく近寄りがたい。でも、この子なら私をきっと知らない。意を決して私は話しかける。


「ねぇ、それって地毛なの?」


 私は何とか話題を作ろうと話しかける。


「そうですよ、私色素が薄い体質で……」


 まるで雪みたいに白いその髪を触りながら遠慮がちに教えてくれた。


「そうなんだ!校門で見かけて凄い綺麗だなって思ったんだ!」


 これは本当。でも、それ以上にこの子は他の人とは違う何かを感じたから。


「そんな事ないですよ、むしろえっと。」


 私の名前を知らない!やっぱり、話しかけてよかった!でも何だろう、すごく自信がなさそう。こんなに美人なんだから堂々としてれば良いと思うんだけどなぁ。あっ名前聞かれてたんだ!


「あ、私日向!【黒音 日向】!よろしく。」


「黒音さんの髪の方が私は綺麗だと思いますよ。真っ黒でまるで夜空みたいで。」


 私は初めて誰かから自分のことで褒められて嬉しくなった。


「そ、そうかなぁ。えへへ。貴方は?名前、なんていうの?」


 この子となら友達になれる。そう思った。名前を教えても反応が変わらない、それどころか私を褒めてくれた。


「【夜雀 白】と言います。よろしくお願いしますね。」


 本当に名は体を表すっていうのはあるんだな。こんな真っ白な髪の毛見たことない。きっとみんなこの髪の毛を見て驚いてたんだろうな。


「なら白ちゃんだね!よろしく!」


「え?白ちゃん?私のこと、ですか?」


 なんだかすごく自分のことじゃないみたい。まるで教室に入る前の私。ここで引いたらダメな気がする!お父さんも言ってた、男は度胸!


「そうだよ、それに敬語!クラスメイトなんだし無しでね。それと私のことは黒、日向、なんでも好きなように読んでね!」


 少し強引だったかな?でも私も友達を作る方法とかわからないし……


「わかり、わかった。よろしく、日向。」


 やった!友達ができた!ちゃんと私を見てくれてる!


 私は心の中ではしゃぎまくった。ここで引かれたらせっかく仲良くなったのに意味なくなっちゃう。


 その後も少し話していると先生が入ってきて外に列で並ぶように伝えてきた。


「行こう、白ちゃん!」


 私は白ちゃんを連れて列に並ぼうとする。けど急に腕を叩かれてしまった。


 やっちゃった。初めて友達と言える子ができてはしゃいじゃった。嫌われたかな……


「えっとその、私太陽に当たると火傷して、しまうんです・・・だから、その、黒音さんが嫌ってわけじゃ。」


 白ちゃんがハッとした顔で教えてくれる。私はこの時気がついた。


 この子は私と同じなんだ。外見レッテルだけで見られて一人になっちゃったんだ。そんなのほっとけないじゃん!


「なんだ〜そういう事だったんだね。ごめん!私こそ強引に引っ張りすぎたよ。高校で初めて出来た友達だったからはしゃぎ過ぎちゃった。」


 大丈夫、私がいるから。だから私のそばにも居て欲しい。



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