日向ぼっこしたい吸血鬼〜日光耐性を手に入れるためにダンジョンに潜る〜

第5話 私強くなる！

「え、私日光浴、できないの？そんなのやだー！」

「あぁ、白ちゃんが悲しみのあまり幼児退行してる……。」

　私もう一生日光を浴びれないの？ダンジョンならって思ったのに……！

「元気出して！まだステータス貰っただけだし！それに日光耐性って書いてあるんでしょ？それなら耐性を上げれば日光にも当たれるようになるって。」

「ほ、ほんとうに？」

　泣きそうになってた目を擦りながら私は黒音さんに尋ねる。少し希望が出てきて元気が出た。

「うん、【ダンジョンの悪戯】は強い種族になる代わりにデメリットもデカイの。私が知ってる中だとドラゴニュートかな。身体能力は人が10人がかりでもびくともしないくらいで鱗は並の刃物なら弾くんだけど・・・環境の変化に弱くて。特に寒いところだと冬眠しかけるらしいよ。」

「そうなんだ……。」

　私の場合は日光に当たると死にかけること、かな。でも日が当たる場所に行けないんだから強くないと思うんだけど。それにデメリットを治す方法ってあるのかな？

「その人はどうしてるの？そのデメリット。」

「アーティファクトと後は白ちゃんの日光耐性みたいに耐性系スキルをあげてるらしいよ。」

　何とかなるの？その、耐性系スキル？っていうのを上げれば私も日光を浴びれるかもしれないってこと！？

「そのスキルはどうやってあげるのッ！？」

　私は黒音さんに詰め寄って肩を掴んで聞き出そうとする。黒音さんはビックリしつつも優しく答えてくれた。

「今の私たちはレベル1。魔物を倒す事でレベルアップすればスキルのレベルを上げられるよ。それにパッシブスキルっていう常時発動型のスキルで相殺するって方法もあるからダンジョンに潜るのが一番早いかな。」

　私は力無く黒音さんの方から手を離す。

　ダンジョンに潜る……私があのテレビの中の人たちみたいに？出来るかな。私はいろんな人から遠ざけられるし、一人で潜るなんて。

「ねぇ、白ちゃん。私とダンジョンに潜ってくれないかな。」

「え？」

「えっあっダメ？ど、どうしようかなー。完全にこの後パーティー組む流れだと思ったんだけど。あれ、そう思ったの私だけ？恥ずかしぃ！」

　黒音さんが、私とダンジョンに？こんな私を誘ってくれた？みんなから遠巻きに見られてヒソヒソ陰口しか言われないこんな私を？

　私はこんなこと逃したらもう二度とないと思って焦りながら黒音さんに声をかける。

「どうしよ、白ちゃんと潜りたいしなぁ。でも本人が―———————

「ひ、日向っ！あにょ！」

　あっ噛んじゃった。でも、気にしてられない！

「うわっビックリした。どうしたの？」

「私と一緒にダンジョンに潜ってください！！」

「……本当に？やったー！うん！！勿論！良かったー。白ちゃんと一緒にダンジョンに行くことを楽しみにしてたから断られたかと思ったよ。」

　もし、今までの私だったらここで声をかけることはしなかった。

　私は黒音さんに出会えて良かった。そう、心の底から思った。まるで日陰から私を連れ出してくれる太陽みたいだと密かに私は感謝する。

「いやー私感動しました！新たなる2人の門出に神の祝福があらんことを。でしたら、ギルドでパーティー登録をするのはどうでしょうか。この時間人はあまりいませんし、【悪戯】が起こったことを大勢の前で言うのは良くありませんので。」

　聖さんがとても微笑ましそうな笑顔を浮かべてそう提案してくれた。確かにこんな私がアバターまで変なことを知られちゃったら黒音さんに迷惑がかかるもんね。

「日向、パーティー登録に行こ！」

「うん、でもその前に！」

　黒音さんは私の頬を手で挟んで思いっきり揺らしてきた！？痛くは、無いけど。

「敬語は無しって言ったでしょー！もしかして今まで心の中で敬語だったり黒音さん（・・・・）とか言ってたんじゃないでしょうね？」

　あっ私さっき敬語でお願いしてた！？学校で敬語は無しって言われてたのに！

「友達で、パーティーメンバーなんだから呼び捨てでいいの！」

「いひゃい。分かったからもうやめてー！」

「分かればよろしい。」

　満足したのか私のほっぺを引っ張った後、黒ね、違った。日向は私の頬を離して眩しい笑顔を私に向けてくる。やっぱり日向は私の太陽だよ。

「さてと、そろそろギルドに行こうか！聖さん、白ちゃんの事ありがとうございました。」

「いえいえー、私も久々に青春って感じで眼福でした。これから頑張ってくださいね。白さん、出来るだけこちらに来ないようにしてくださいね？」

　聖さんは私を気遣ってくれたのか応援？してくれた。私を応援してくれるなんて良い人だ！

「はい！私強くなって日光浴するまで死ねません！」

「さっき日光浴して死んだけどね。」

　もう、さっきのは事故だって。気をつけたら死なないかもしれないのに。

　私たちは聖さんに挨拶して神殿を後にする。

「……本当に、頑張ってね。」

　聖は残った神殿の中で小さく声を漏らす。

　神殿のステンドグラスに当たっていた日光が逸れて聖の顔に影が差していた。再び聖は神殿の中に戻っていく。

「それでパーティーって何？」

　楽しい方のパーティーじゃないことは分かってるんだけどよくわからないまま聞いてたんだよね。

「ああっそこからかぁ。えっとダンジョンに潜る時に複数人で潜る集団のことをパーティーって言うんだけど、大体３〜10人くらいが【パーティー】で、それを纏めたのが【レイドパーティー】って言うの。

　基本的にはパーティーでダンジョンに挑んで、強敵と戦う時に臨時で複数パーティーで組む感じかな。」

　へぇ、ということは私たちは二人のパーティーってこと？一人少ないけど良いのかな……

「そうなんだ。私学校以外だと家にこもってだから探索者のことあまり知らなくて。たまたま探索者の動画を見てアバターを作りたいって思ったから。」

　進路先で迷ってる時にたまたまテレビでダンジョンのことをやっててそれでアバターのことしか興味が湧かなかったから他のことを調べてなかったんだよね。

「まぁ白ちゃんはダンジョン探索より日光浴がしたかったんだし知らなくてもしょうがないよ。その分私が教えるから！」

「ありがとう。」

　ギルドの中に入ると本登録する列には数人しか並んでる人がいない。確かに聖さんのいう通りだった。

「それでは次の人ー！」

　受付で順番待ちをしていたら私たちの番になった。

　私は日向と新しい日常に向けて足を踏み出した。