第40話「唯臣の功績」
******************************
翌日、朝食。
リーヘンの朝は新聞を読むことから始まるのだ。何度でも。
「おぉおお!!
アルメイヤ殿!!
見てくだされ!!
またしても唯臣が、新聞に載っとりますぞい!!」
リーヘンは嬉しそうに新聞を掲げる。
―――快挙!唯臣・矢倉・ソンギブ未開ダンジョン踏破―――
ソンギブ家の養子、唯臣・矢倉・ソンギブは、先日、ルジオンの森に新たに発生した未開ダンジョンを、一日のうちに単独で踏破した。
ダンジョンの階層は3階と、少なかったものの、未開ダンジョン踏破は、現勇者以来の快挙であり、今後の各国のギルドのパワーバランスに大きく影響をもたらす事が予想されている。
「凄いやん唯臣!一面に書かれとるやん!
勇者以来なんやて、未開ダンジョン踏破。
ギルドのパワーバランスに影響与えるて書いたるわ!」
リーヘンが掲げる新聞を口に出して読むアルメイヤ。
「凄いわぁ!
唯臣ちゃんがどんどんこのソンギブ家の名を上げて行ってくれている!」
オルフィーは唯臣をなでなでしながら言う。
「そうじゃ!勇者様と並んだわけじゃ!!
流石我が息子じゃ~!」
リーヘンはオルフィーごと唯臣を抱きしめた。
「並んだは、まだ言い過ぎやろけど。
……まぁそのうちあっという間に並ぶやろけどな。」
唯臣のステータスを知っているアルメイヤ。
ほっぽり出された新聞の続きを唯臣は読み始める。
すると、次の見出しはタカキ・ワーヤサカが飾っていた。
―――連日お手柄!?タカキ・ワーヤサカ話題の悪漢、大量退治!―――
現在ミグニクトを騒がしている、鷹のペンダントの悪漢集団を、タカキ・ワーヤサカが1週間連続で、毎日退治し、騎士団へと検挙している。
鷹の集団は、構成人数も把握出来ないほど、多岐に渡り悪行の限りを尽くしているが、ここに来ての複数人の検挙は、団体崩壊の糸口を見つける一筋の光明となっている。
唯臣・矢倉・ソンギブとタカキ・ワーヤサカ、冒険者と騎士団の2人の若手の躍進はミグニクトを担う未来の光となるだろう。
「なになに。
タカキ・ワーヤサカ?
ふーん、悪漢連日退治?
お!?唯臣のことも書かれてるやん!
ミグニクトを担う未来の光やて!わははは!」
ブーンと飛んできた羽虫が新聞を見て文章に腹を抱えて笑っている。
「でも、なんかきな臭いなぁ……。
普通に考えて、毎日悪もん退治て、ちょっとおかしいやろ。
蝶ネクタイ付けた眼鏡君かいな。
なんかしてんちゃん。知らんけど。」
てきとーな事を言う関西人。
「あら、アルメイヤさん駄目よ。悪い事言っちゃ。
タカキさんは唯臣ちゃんの好敵手なんですよ。」
人差し指を立てて”めっ!”という感じでアルメイヤに注意するオルフィー。
「なになに~。アルメイヤさんなんてまだ言うてんのぉ~?
もうちゃんでも呼び捨てでも呼んでや~もうそう言う仲やん?」
大阪のおばちゃんみたいに言うアルメイヤ。
「……ふ~ん。
タカキってやつと騎士団の入団の時から因縁があんねんな。」
「そうなの。
次の騎士団の昇級試験で、唯臣ちゃんがタカキさんを破って、黄色階級まで昇級するって、啖呵を切っちゃったの。」
オルフィーが呆れ顔で言う。
オルフィーは、まるで啖呵を切ったのが唯臣の様に言うが、言ったのは自分である。
「でも本当にそろそろ、昇級試験ね。
冒険者の方をとっても上手くやっているんですもの!
騎士団の方も絶対上手く行くわ!
頑張ってね唯臣ちゃん!」
アルメイヤがはっぱをかけた。
唯臣の初めての騎士団の昇級試験はもうそこまで迫って来ていた。
…………。
……。
******************************
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます