第36話「家族の元へ」

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……。


…………。


「おーい!オルフィーちゃーん!

 リーヘンはーん!!」

小さな身体を最大限に大きく使って手を振った。


 唯臣達はダンジョン入り口に戻ってから、キャンプ場に歩いて戻って来た。


「あぁ!!唯臣ちゃん!

 アルメイヤさん!無事に帰って来たのね!!」

オルフィーは駆け寄り、唯臣を抱きしめながら言う。


「偉いわぁ。約束通りお夕飯までに帰って来て。

 ちょうど今夕飯の準備が終わった所だったのよ。

 無事にダンジョンは攻略出来たの?」

オルフィーはニコニコしながら問う。


 唯臣は会釈した。


「おおおぉ!!!

 息子よ!!良く頑張ったなぁ!!

 ワシは感無量じゃぁー!!」

リーヘンも駆け寄って来て、唯臣ごとオルフィーを抱きしめる。


「もうパパったら!

 でも本当に無事に帰って来て良かったわ。

 あら、アルモナ……。ちょっといつもより元気そうじゃない?」

オルフィーが問う。


「ははは!

 楽奴でもやっぱり冒険は楽しかったんちゃうかなー!

 知らんけど。」

アルメイヤの乾いた笑い。


「そうね。

 アルモナもちゃんと無事で良かったわ。

 さぁ、みんなでお夕飯にしましょう!」

オルフィーはいそいそと鉄板に向かった。


 鉄板の前には、新鮮な野菜や肉や魚介など、多種多様な具材をボールに入れて、ロールベッタが待機していた。

それは好きなモノを串に突き刺して食べるオーソドックスなBBQスタイル。

 

 鉄板を囲み、楽奴以外の全員が椅子に座る。

ロールベッタが手際よく膝にクロスと、胸元にナプキンを着けて行く。

 そして、楽奴達は、少し離れた所で楽器を弾き始めた。


 楽しい楽しいBBQの始まりである。

普段はリーヘンがほとんど一人で喋り倒すのだが、今は同じ位アルメイヤも喋り倒す。

 

「なぁ、リーヘンはん。

 楽奴の子らはご飯食べさせへんの?」

アルメイヤがリーヘンに尋ねる。


 楽奴達は各々の楽器を演奏し、聞こえもしないBGMを流し続けている。

唯臣は、串焼きのいくつかをアルモネの為に焼いて持って行った。

 アルモナは、演奏を中断し、串焼きに一心不乱にかぶりついた。


「あぁ?

 楽奴達は主に自由にさせてるんじゃ。

 するとだいたいいつも楽器の演奏を始めおる。

 それがあやつらのやりたい事なんじゃろうなぁ。」

リーヘンは特に感情も無く言う。


 唯臣の行動を見たオルフィーは、同じようにいくつかの串を見繕い、バルオの元へ持って行った。

 しかし、バルオはサックスに夢中で串を食べようとしない。


「……へー。

 じゃあ、着てる服とか、寝る所とかはどうなってんの?」

アルメイヤは続けて尋ねる。


 串を食べてもらえずがっかりしているオルフィーを見かねて、ロールベッタが手伝いに来た。

 バルオがサックスから口を離した瞬間をめがけて、串を口に入れた。


「それも全部自由じゃ。あやつらが望むなら用意するぞい。

 しかし、あやつらは何も望まないし、永遠に楽器を弾き続けるんじゃ。」

リーヘンは答える。


 バルオは、甘辛いBBQソースのかかった噛むたびに肉汁が溢れる肉を咥えて、感情は見えないが、黙々と噛み続ける。


「じゃあ、別に服を買ってあげたり、ベットで寝かせる事も、おかしい事ではないんや?」

アルメイヤは問う。


 ロールベッタは流れでトートにも口の中へ串焼きを入れた。

普段楽奴の世話を一手に担っている彼女にはおちゃのこさいさいなのである。


「まぁ~そうじゃなぁ。

 咎められる事ではないじゃろうな。

 しかし、貴族共は、と言う事が権威を示す事だと思っておるから、一目で楽奴と分かる服装をさせておるなぁ。」

リーヘンが応えた。


 お腹ペコペコだったアルモナはお腹いっぱいになった様で、また、ストラトをチャカチャカと爪弾き始めた。

 すると、バルオもトートーも同じように演奏を始めるのだった。


「なるほどなぁ。

 ようわかったわ!さすがリーヘンはん説明がうまいなぁ!」

リーヘンのそばまで行き太鼓持ちするアルメイヤ。


「そうじゃろ!

 女神どのも物分かりが良くて素晴らしいぞい」

嬉しそうな顔をしながら言うリーヘン。


         「「ガハハハッ」」

 2人は同じように反り返って大笑いをした。

 

 楽しい楽しい家族の団欒。

今日から新しい家族も増えて、これからもソンギブ家はますます楽しい日々を過ごすのだろう。

 こうしてソンギブ家のキャンプは幕を閉じるのであった。


…………。


……。


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