第27話「ルジオンの森の妖精②」

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……。


…………。


    ”ブーン”

 羽虫の様に唯臣の手の平に止まったアルメイヤと名乗る何か。


「唯臣に会えるかぁー……。

 あたしどんだけ強運やねん!

 ほら、あたしや。アルメイヤ。

 この顔で分かるやろ?」

両頬に手を置いて、すまし顔で唯臣を見つめる小さい生き物。

小さくとも整った顔立ちが美しい。


 怪訝そうな顔で唯臣はそれを見るが、いまいちよく分からない。


「なんでやねん。

 あたしは運命の女神アルメイヤや。」


 一層怪訝な顔をする唯臣。


「やっ!かっ!らぁ!

 あたしは運命の女神アルメイヤ!あんたを転移したったやろ!

 色々あって、あたしもシンフォニアに転移してきたの!

 ほんで、これ!あたしの場合はそのまま来られへんからフェアリーに転生したってこと!!わかるやろ?妖精!」

ヒラヒラと唯臣の目の前を飛ぶアルメイヤ。


 自分をこの世界に引き込んだ人物だ。

訝しみつつも事情を理解した唯臣は一応会釈をする。

 

「あたしなぁ、こんなんやから全然早く動かれへんねん。

 あんた、どうせもう楽々異世界ライフでもやってるんやろ?

 あたしも付いてくで。

 しばらくあんたと行動を共にするわ。

 あんたんとこおったら幸を見つけやすそうや!」


 唯臣の了承を得るつもりも最初からないアルメイヤは唯臣の肩に止まった。


[アルメイヤが(無理やり)仲間になった]


「まぁまぁ。

 一緒に行こうやぁー、唯臣ぃー。

 あんた今どこで生活してんの?

 ……えっ、ブオンバプ?

 そうなんや、ほなここミグニクトの森かいな。

 あールジオンの森?そない全部の地域知ってるくらいにはこの世界詳しくないんよ。」

マシンガンの様に喋る妖精。


        ◇◇◇


 アルメイヤによれば、この世界に来て、まだだいたい一か月ほど。

その間ずっとこのルジオンの森の脱出を図るために飛び続けていたのだと言う。

 シンフォニアについてのだいたいの知識はあるが、それは現実世界で言う所の、世界史のテストで平均して65点が取れる程度の知識だと言う。


        ◇◇◇


「ほんで……、えっ!?あんた今ソンギブ家におんの?

 ソンギブ家言うたら、楽器作ってる大会社やってるとこやんなぁ?

 あの豪商の大金持ちの家やろ?」

アルメイヤが言う。


 それは唯臣の知っているソンギブ家とは全く違う情報。


「ほんで、その後ろ付いて来てる子は?」

アルメイヤが指さす先にアルモナがいた。


 唯臣はぎょっとした。

どうやらアルモナは唯臣について来たらしい。


「えっ、この子何?

 ガクド?なにそれ?斜に構えて歌う人?」

良く分からない事を言う。


 どうやら、楽奴もアルメイヤの知らない知識らしい。


「なんかシンフォニア、変な事なってんなぁ……。

 ……?

 ん?あそこなんか光ってない?」

アルメイヤがまた別の事を指さす。


 唯臣もその先を見たがどうやら確かに光っているようだった。


「なになに?

 気になるから行ってみよや。」


 唯臣はアルメイヤを肩に乗せ、アルモナの手を引いて向かってみる。


 木々を抜けて、どうやら森の切り目。

崖の下の様な所に出た。

上を見上げると月明りが落ちて来る。

 

 つまり、光っているのは月明り……、という訳ではなかった。


「あっ!ダンジョンやんこれ。

 しかもこの光り方、あれやで。やん。

 あんたほんま凄い豪運やなぁ。そんなんなかなか見つけられへんで。」

アルメイヤは呆れながら言う。


 崖沿いを眺めると、洞窟になっている部分があり、そこが光っていた。


「あんたもうギルド入ってんの?

 やっぱ異世界ファンタジーの花形言うたら、冒険者ギルドやろ?

 えっ、もう入ってるて?

 せやろ。

 ほなら、これは報告する前に踏破やな。

 あんたやったら余裕やろ。」

レベル1にして、恐ろしい能力である唯臣を知ってるからこその発言だ。


「まぁどちらにせよ、一旦身内に報告しに行きいや。

 急にあんた帰って来んくなっても心配するやろ?」

非常に常識的なことを言うアルメイヤ。


「それにうちのことも紹介して。

 あんたの補佐役かなんかで。」

非常に厚かましいことを言う羽虫。


 唯臣は会釈し、一度キャンプ拠点へと戻るのであった。


…………。


……。


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