第25話「騎士団の訓練2回目」

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 しつこいようだが、リーヘンの毎日は、朝の新聞から始まる……。


「おぉ!!

 今日も唯臣が新聞に載っておるぞ!!」

リーヘンが嬉しそうに立ち上がる


―――ソンギブ家長男またもお手柄!―――


 昨日、ルジオンの森にて、連日街を騒がせている悪漢グループの2名を、唯臣・矢倉・ソンギブがまたもや捕まえた。

 悪漢達は恐ろしい速度の体術により、転ばされ武術で気絶をさせられたと供述している。

 唯臣・矢倉・ソンギブは騎士団入団したばかりでの、この2度のお手柄。

過大な功績として評価されてしかるべきである。

 また、前回の無詠唱の光魔法の話から、体術も心得ているとなると、彼の職業への期待はますますに高まってくるであろう。


…………。


……。


「あぁ、やっぱり唯臣ちゃんは天才ね!!凄いわ!!」

唯臣の頭をなでなでしながら言うオルフィー。


 昨日採取クエストが終わったらすぐに、オルフィーに最高品質のキアリ草を煎じて飲ました。

 直後から、辛そうだった顔が楽になり、回復に向かうかと思えば、朝起きたらもうピンピンしていた。

 最高品質のキアリ草だったからだろう。


「私の息子は本当に凄いのぉ。

 もちろん娘もな!」

そう言いながらリーヘンは唯臣とオルフィーをハグする。


「またパパったらぁ!

 今日も唯臣ちゃんは騎士団の訓練よね?

 頑張って来てね!」

オルフィーは手を振って唯臣を見送る。


 唯臣は会釈して、アルモナを連れて騎士団支部へ向かった。


…………。


……。


 支部へ行くといつもの様にコンシェルジュが出迎えた。


「これはこれは、唯臣・矢倉・ソンギブ様。

 大変遺憾ながら、此度の悪漢討伐の活躍にて、本日はAクラスでの訓練となります。」

お辞儀しながらも、凄く悔しそうな顔をしている。


 唯臣はコンシェルジュの態度に何の感情も抱かず、アルモナの手を引いてAクラスの訓練場へ向かう。


 訓練場へ入るとすぐに声をかけられる。


「おっ!!

 唯臣!!やっと来たか!!

 遅かったじゃないか!」

ジョビリーが腰に手を当てて言う。


「俺達はA組に上がったんだぜぇ!!

 お前より早くにな!」

鼻高々に言うジョビリー。

「来た順番が早かっただけだよ……。

 それに唯臣の方が後から入団してる事を考えれば彼の方が早い……。」

レートがぼそっと言う。



 ジョビリー達は前回の模擬訓練の同率3位が評価され、Aクラスにあげてもらえたそうだ。

となれば当然……。


「たった、唯臣君!

 こ、こんにちは!!」

ブーシェスが会釈する。


 ブーシェスもまた模擬訓練同率1位による評価でAクラスに上がっていた。


 3バカはともかくとして、ブージェスは模擬訓練では何もしていなかったが……。

 相当雑な判断基準である。


「はいはい~。

 訓練始めますよ~。」

そのテキトーな判断をした、死んだ魚の目の教官がやって来た。


「前回のBクラスの模擬訓練でAに上がった奴らもいるからね~。

 今日は基礎の体力アップを目指すトレーニングね~。」


 教官がそう言うと訓練が始まる。

内容としては持久走や、剣の素振りなど、至極簡単なもの。

至って何も変哲な事はなく進行し、5時間程で終了した。


「はいはい~。

 みなさんよく頑張りました~。

 今日はここで終りにしたいと思います~。」

教官がなんの気持ちの抑揚も無く言った。


「あっ、唯臣・矢倉・ソンギブ。

 君は件の悪漢の討伐の件で評価されたから、次回の昇級試験の参加資格が得られました~。

 当日までにしっかり訓練をして、試験でも頑張ってください~。」

教官が言った。


「すっ、凄い!

 唯臣君。

 いきなり昇級試験に出られるなんて!!」

ブーシェスは尊敬の眼差しで唯臣を見つめた。


「ぐぬぬぬぬぅ~!!」

ジョビリーは悔しそう。


 唯臣は会釈をして、訓練場をあとにした。


 唯臣が支部の出入り口へ向かっていると……。


「やぁ。

 唯臣・矢倉・ソンギブ君。」

後ろから男の声がした。


「最近の君の活躍はめまぐるしいねぇ。

 巷で話題の悪漢を2度も撃退するとは……。

 とてもエレガントだ!!」

声の主はタカキ・ワーヤサカだった。


 タカキも一度悪漢を倒し新聞に載っていた。

2回も載った唯臣がどうやら気に入らないらしい。


「君のそのふてぶてしいまでのエレガントさ……。

 気になるね。 

 しかも昇級試験までこんなに早く決めてしまうとはね。

 知ってるかい?

 昇級試験は黄階級までは、トーナメントで一緒くたに対戦カードが組まれるんだよ。」

 タカキが大袈裟なポーズでエレガントに言う。


「つまりだ。

 僕と君が対戦する可能性もあるわけだ。

 ……、決勝で待っているよ。」


 唯臣は、タカキの熱量に押され、ひとまず会釈で返した。


唯臣のこの軽快すぎるステップアップはどこまで続くのだろうか……。


…………。


……。


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