第24話「ギルドの採取クエスト②」

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……。


…………。


 クエストも受注し、ギルドをあとにして、馬車に乗り込んだ。

騎手に目的地を告げ発進する。


 アルモナは今日も客車でギターを弾くが、いつものハミングバードではなく、今日は昨日もらった呪いのストラトを弾いている。

 このギターは、本当にエレキギターのようで、シールド(アンプとギターを繋ぐケーブル)を差して、アンプ(ギターの音を増幅させて発するスピーカー)に繋がなければ本来鳴るべき音は鳴らない。


    ”チャカチャカ”


 弦がピックに弾かれて小さく音が鳴る。

そんな状態でも、美しい音はまるで綺麗な玉の様で関心する。

 どこが呪いなのだろうか?

今の所アルモナに変化はない。いつもの様に虚ろにギターを弾いている。


 そうこうしている内に、馬車はブオンバプの街門を抜けた。

このまま舗装された道のりをしばらく行けば、森が見えて来るらしい。


{唯臣様ぁ~!!

 おひさしゅうございます!!元執事の羊川でございますぅ~!

 あぁ、異世界でもやはり変わらず愛らしい……。

 無事にすごしてましたか!?

 あぁ!!お肌つやつや!!

 ちゃんと栄養を取られているようですね……。}


   ”チャカチャカ”

 

 アルモナが軽快にカッティング(弦を切るように弾く奏法で、実際に弾く実音とミュートを組み合わせ、歯切れよくリズムを刻む奏法)をする。


{ふむふむ……?

 なかなか綺麗で丁寧な演奏ですなぁ……。

 ってなんですかぁ~!?この美少女ちゃん!!

 ふむふむ、切れ長のおめめに、綺麗な鼻筋、薄い唇。

 おっぱいはちょうどいいサイズで……。

 あらぁ、綺麗な足がスラーっと伸びてますぞ。美しい!私の鼻も伸びます!

 坊ちゃまが好きそうな顔ですなぁ……。

 流石坊ちゃまです!!異世界でもモテモテ!!早速2人目!

 オルフィーちゃんと両手に花!

 さぁ!!そのまま”ガバァッ”と野獣のようにいっちゃってください!!

 私見てます!!}


     ”ヒヒ~ン”


 どうやらルジオンの森に到着したようだ。


 初心者が初めのステージとして選ぶ森。

確かに鬱蒼としている感じも無く、太陽光も十分に入る、歩きやすそうな森だ。

むしろ、穏やかな雰囲気で、川のせせらぎも聞こえて、ピクニックやキャンプなんかに来るのにもってこいではないだろうか。


 唯臣はアルモナの手を引きすたすたと森へ入って行った。


{ほー、ルジオンの森ですか……。

 採取クエストですかね?}


 キアリの草は探すのが困難かと思えば、そこは唯臣。

運の良さであっという間に群生地に辿り着いた。


 目に付いたキアリ草をプチプチと採っていると、すぐ近くで声がした。


「ひゃっはぁー!!

 汚物は消毒だぁ!!」

黒いほっかむりをした悪漢達がキアリ草の群生地に火をつけている。


「おうおうおうおうぅ!!

 俺達が散布しているキモキモDX、良い感じじゃないのぉおお!!

 あれは、突然に起こる38度以上の発熱、頭痛、結膜の充血の他、筋肉痛や関節痛、倦怠感などの全身症状もみられるんだよなぁああ!!

 今巷で大流行しつつあるみたいだぜぇええ!!!」

もう一人の悪漢がインフルエンザの症状みたいな事を言った。


 どうやら、ブオンバプの流行り病は、この悪漢達が仕掛けている様だ。

更に、特効薬となるキアリ草を今、燃やし尽くそうとしている。



{唯臣様ぁ、こんなやつらぶち倒してください~!!}


 唯臣は声の聞こえた方に飛び出した。


「なんだなんだぁ!!

 俺達になんか様なのかぁ!!」

悪漢共は叫ぶ。


 目の前に飛び出て来た唯臣に反応し、”ドタドタ”と唯臣へ向かい走り出して来た。

しかし、である。


     ”ずるぅううん!!”


 悪漢共二人はちょうど唯臣の目の前で盛大にすっころんだ。

キアリ草はどうやら、燃やすとぬるぬるのツルツルになり滑ってしまうようだった。


 角度的にちょうど良い位置で倒れた二人の顎に的確に前蹴りをお見舞いする唯臣。


 悪漢達はグーの音も出ることなく気絶した。


{素晴らしいですぞぉ!!坊ちゃま!!

 小学生の時に習っていた空手が生きましたなぁ!!

 美し過ぎる蹴り姿でしたぞぉおお!!}


    ”ドタドタドタドタ”

荷台を引いて走る音がする。


「むむむ!!

 これは今巷を騒がしている、鷹のネックレスの悪漢達ですな!!」

荷台を引いていた男が物凄い速さで、気絶している悪漢共を縄で締めあげる。


「あなたが捕まえたと……。

 むむむ!あなたはかの有名なソンギブ家のご子息さまだと!!

 それは凄い人に会った!!

 分かりました、この私が責任を持って、この悪漢を警備兵に引き渡します。」

荷台の男はそう言うと凄い勢いでブオンバプに戻って行った。


 風の様に荷台の男は去っていた。


[悪漢ふたりをやっつけた。

 唯臣はレベルが4に上がった。

 力が21上がった。

 素早さが24上がった。

 体力が15上がった。

 賢さが23上がった。

 運の良さが64上がった。

 最大HPが85上がった。

 最大MPが61上がった。

 唯臣は、ドラゴン斬りと魔王斬りを覚えた。]


 悪漢も倒し、キアリ草もちゃっかりゲット。

目標は達成された。


唯臣達はギルドへと戻る。


…………。


……。

 

「お帰り~!

 唯臣どうだった?ちゃんと採取できた?」

フレイアは笑顔で唯臣に喋る。


 唯臣は成果物を見せた。


「おぉ!

 ちゃんとキアリ草ね!

 私が品質を査定してあげるからね。

 どれどれ…………!?」

フレイアは驚きを隠せない。


「えぇええ!!

 唯臣が持ってきたキアリ草、全てが最高品質じゃない!?

 普通は1000枚に1枚ぐらいが最高品質なのよ!?」


「こんなの文句なしに超成功よ!!

 本当に信じられない!!

 2回連続で超成功なんて……!」


[唯臣は、

 採取クエスト~キアリ草を摘め~

 を超成功でクリアした。

 ギルドポイントを7獲得した。]

昇格まで残り185ポイント。


こうして唯臣は2回目の冒険者ギルドのクエストも超成功で完遂した。


…………。


……。


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