第37話「そして彼女が女王様になったわけ②」
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【ゲリラライブまで後7日】
…………。
……。
キヨラが新たな自分と出会って暫くたった朝。
ケイケス・サオールズの屋敷はもう既に、この新たな滞在客を快く迎えいれていた。
「あっ、おはよー!
キヨラちん!
昨日は良く眠れた?」
かっちりと制服を着たメイドがひらひらと手を振っている。
「マツヒちゃんおはよー!
ぐっすりは眠れたよ!
でもケイケスがなかなか寝かしてくれないからー……、まだ眠たい。」
キヨラも手を振りかえした。
「なかなか寝かしてくれないって……。
キヨラちんが悦に入ってるからでしょ……。ははっ……。」
メイドのマツヒは昨日のキヨラの大立ち回りを思い出す。
マツヒは小麦色の肌をしていて、あっけらかんとしたキラキラしたギャルだ。
「あっ、今日ケイケスのやつ、公務で議会まで行ったから遅くまで帰って来ないよ!
やりたい事やんな!
あっ、先ずはご飯だね!
食堂のおばちゃんとこ行っといで!」
マツヒはそう言ってキヨラの背中を押した。
◇◇◇
キヨラがこの屋敷に来てから3日。
彼女の恐ろしいコミュ力により、屋敷中の奉公人、全て仲良しになっていた。
ケイケスの付き人メイドのマツヒは、ケイケスにとにかく酒を盛り、意識を飛ばしてキヨラを守り、他の奉公人もキヨラが自由に動けていることをケイケスに悟らせない様に動いていた。
そのおかげでキヨラはこの屋敷にて、なに不自由なく過ごし、町民会議の内側からどの様にして、ゲリラライブを成功させるかを推考する時間も作れた。
◇◇◇
「おばちゃん、ご飯ありがとう!
今日もとっても美味しかったよ!」
キヨラは満足そうに言う。
「あいよ!
キヨラちゃんが美味しそうにご飯食べるの見てると、こっちもお腹いっぱいになるわ!」
恰幅の良い料理長が笑顔で言う。
…………。
……。
食堂をあとにしたキヨラは、ケイケスの部屋に戻って来た。
「ゲリラライブまであと一週間か……。
ミナちゃんは常にケイケスと一緒にいるから連れて出たりも出来ないし……。」
キヨラは、ふかふかのベッドに腰をかけ頬杖ついて考える。
占有預かりの楽奴の持ち主は、どこに行くのにも原則的に必ず楽奴を連れて行く。
悪徳非道のケイケスでも、意外に仕事はしっかり行っているので、夜遅くまで、基本的に屋敷に居ない事が多い。
そして必ずミナも連れて行くので結果的にミナが一人になるシーンが一度もない。
「ここの人達もみんないい人だし、やっぱりこのまま当日までここに居て、本番で出た所勝負しかないね……。
これを使ってなんとかするしか……。」
キヨラは机に無造作に置かれた、鞭に手を触れた。
「……幸達心配してるよね。
……みんな、私頑張るから……。」
…………。
……。
夜も更けて来たころ……。
”ガチャリ”
「くっくっく。
キヨラよ。このケイケス様が帰って来たぞ。」
いつもに増して毒々しい羽織で着飾るケイケス。
「……。」
キヨラは後ろ手にしたまま、無視を決め込む。
「はっはっ。
今日もだんまりか。
町民会議までたっぷりと一緒に楽しもうじゃないか……。」
ケイケスはいつものようにマツヒに手を向けて指の股に挟まれるのを待つ。
”トポトポ”
マツヒはアルコールが従来の3倍の濃さのワインを注いだグラスをケイケスの股に挟む。
”クイッ”
ケイケスがワインを喉に落とし込む。
「くっくっく。
こんな美人を好きに出来るなんて領主は最高だねぇ……。
いつも夢見心地で楽しませてもらっているよ……。」
そう言いながらも、みるみるうちに顔が紅潮して行くケイケス。
今日は公務で疲れていたからか、いつもに増して早くスイッチが切り替わり、そそくさと服を脱ぎだす。
「おっけー。
完成したね。」
仕事終了みたいな顔をしているマツヒ。
「そうだね。」
キヨラは立ち上がりマツヒに手を差し出し、その中にそれが添えられるのを待つ。
”シタァン!”
手渡された鞭を胸元で引き鳴らし準備完了。
「女王様ぁ!!
本日もよろしくお願いします!!」
ケイケスはケツを向け懇願する。
「しょうがないなぁ……。」
キヨラは呟く。
…………。
……。
このようにキヨラは、屋敷の奉公人に助けてもらいながら、ケイケスの相手をして危なげなく過ごしていた。
キヨラがケイケスの興味を引いていたから、幸達の動きに対して気に留める事もなかったとも言えよう。
そして、このままキヨラは町民会議の当日を迎えることになったのだった。
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