第45話「幸達のこれから」
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……………。
……。
今回の旅の最後のクラウディアの海岸は、キラキラと揺らめいて幸達を出迎えていた。
”~♪”
フーガスカは本番が終わっても当然飽きる事も無く、永遠とミミックを叩いて
リズムの海の中を深く、深く潜っていた。
"ヒヒィーン!!ゴロゴロ…"
大きな木製の車輪の着いた"カブリオーレ"と言う形の馬車が、海岸を悠々と練り歩いて来た。
”ブルブルッ!!”
「おーい!
フーガスカ―!!」
幸達はザンスター・サオールズのみんなに別れを告げて、最後にこの海岸へ赴いていた。
ダンジョンコアをユラーハに返した事で、結局、ダンジョン攻略の報奨金の30万プオンは手に入らず、目標としていた馬車の購入は出来なかった。
しかし、ケイケスが、キヨラに対するお詫びと、ゲリラライブの結果ワタークと和解出来た事による、感謝気持ちとして、町民会議の時に引いていた馬車を譲り受けていたのだった。
「あー。
幸達やんー。
どうしたんー?
最後に別れの挨拶に来てくれたんかー?」
フーガスカは馬車に手を振りながら言う。
「別れの挨拶じゃないよ!
フーガスカに言いたかった事があるんだ!」
幸は馬車から降りて歩み寄る。
「俺達は【成す為の旅】をしているんだ。
その旅にフーガスカのリズムが必要なんだ。
俺達の旅に一緒に来てくれよ!」
幸は、フーガスカに手を差し出した。
「えーっ!!
幸達の旅に一緒に連れてってくれんのー!?」
フーガスカは予想もしていない言葉に驚きを隠せない。
「……ありがとー。
その話はとっても嬉しいわー。
でもー、無理やん?
うち、鰭が乾いたら生きて行けへんし。
ミミックがおったら多少は陸におれるけどー。
やっぱりちょっとの間やねんー。」
フーガスカは言う。
「そんなの関係ない!
フーガスカも感じたでしょ?
一緒に演奏して……。
俺達にしか奏でられない音楽があるって!!」
幸は熱弁を続ける。
「実はさ、俺持ってるんだ。
フーガスカも俺達と一緒に旅を続ける為に必要なアイテムを!」
幸がミスリルの袋をガサガサしながら言う。
「ほらこれ!
この”枯れない花瓶”さ!」
幸が出した円錐型の花瓶はクラウディアの太陽を受け黒びやかに輝いた。
「なんなんこれー?
こんなけったいなもんでうちが幸と一緒に旅出来んのー?」
「まぁ見ててよ。」
幸はそう言うと、クラウディアの美しい海をその花瓶の中に取り入れた。
「そしてこれを……、ミミック!
中に入れて!!」
ミミックの頭を”ぽかっ”と叩く幸。
「はいぃぃ!!」
ミミックは花瓶を口の中に入れた。
「この中にさフーガスカは鰭を入れたらいいんだよ。」
ミミックがお腹の中に入れた花瓶は異空間に仕分けされ、どのように異空間の大きさを変えようと、同じ場所に傾くこと無く設置されていた。
「えー。
何これー!
ミミックこんなん出来たんー!?」
フーガスカは驚く。
「私の口の中は自在でございます!」
ミミックが従順な顔をして言う。
「じゃあ、まだまだ色んな音出せるなー。」
フーガスカの目の色が変わった。
音も様々として、とにかく、ミミックの口の中に、たっぷりの海水が永続的に湧き出る、フーガスカの安全スペースが作られたのだ。
移動する時はミミックの口の中に居ればどこにだって行ける。
”ちゃぽん”
質量のあるものが海面を弾いた小気味よい音がした。
「あーっ……。
この感じめっちゃいいかもー。
これやったらー大丈夫そうー。」
フーガスカは花瓶の居心地に大満足。
「よかったぁ!
じゃあ一緒にこれるよね!?」
再度手を差し伸べる幸。
「うんー。
うちも幸達と旅したいー。」
頬を赤らめて言うフーガスカ。
「よし!じゃあ一緒に行こう!!
フーガスカ!
君は佐倉サーカス団の4人目のメンバーだ!!」
”~♪”
クラウディアの浜辺で4人は喜びを奏でた。
新しい仲間を祝う音楽だ。
ザンスター・サオールズでの今回の旅。
紆余曲折あったけれども、当初の目的通り、サーカス団になるための念願の馬車と、そしてリズム隊の要になるカホンを駆る演者、フーガスカが仲間になった。
幸達の【成す為の旅】は、まだまだ続く。
…………。
……。
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