第44話「後日談」

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 大いに盛り上がった打ち上げの夜も更け、ザンスター・サオールズには等しく朝が訪れる。

 

 夜更かししたためか昼前にやっと起きた幸は、自分の寝位置の怪しさに驚きつつも平常を装う。

 

 キングサイズのベットの中央を幸が位置取り、右横にキヨラ、左横にフーガスカを腕枕して寝ており、幸の股からはピーネが顔をのぞかせていた。

間違いなく昨日の夜はお楽しみでしたねの布陣。


「……。」


 大丈夫。俺は昨夜はルーコルアは飲んでない。

打ち上げが終わった後、ご厚情で宿屋を借りたが、そこでは何もやましい事は起きていない。


 幸がそう自分に言い聞かせていると……。


                 ”つんつん”


 ほっぺたにドキドキする刺激が伴う。

当然キヨラだった。


「幸、おはよ。

 昨日は楽しかったね。」

意味深な言葉を語るキヨラ。


「そっ、そっ、そ、そそ、そうだね!

 昨日は打ち上げ楽しかった~!

 みんなでいっぱい喋って色々聞けてよかった~!」

幸は精一杯の平然を装う。


「あー……、その後、宿屋を借りてからの事は覚えてないんだ?」

キヨラがいたずらっ子みたいに笑う。


「えっ?なっなんにもないよ!

 ただあとは寝ただけだよ!」

幸は言う。だって何かあったとしても覚えていないのだから。


「……そうだね。

 幸がそう言うなら何もなかったんじゃないかな。」


「本当に!!

 何もなかったから!なかったよね?」

涙目で訴える幸。


「あっ、そういえば、ワタークとユラーハの事はどうなったの?

 上手くいった?」

自分で深掘ったくせにスパッと切って別の話題へ。


「えっ?

 あっ、あの二人のこと?

 そっ、そうだね……。

 上手く行ってると思うよ。」


「そうなんだ。

 幸が何かしてあげたの?」


「うん。

 ワタークに種をあげたんだ。

 絶対にをね。」

幸が自信満々に言う。


「あ~、恋占いのやつね。

 灯台の根元に2つ花を咲かせたら二人の恋は愛になるってね。」

キヨラはうんうんと頷きながら言う。


「でも絶対に枯れないってどういう事?」


「あぁ、それはね……。

 これを使ったんだ。」


 幸が自信満々に取り出したのは、シーガーディアンの塔の4階で手に入れたマジックアイテムだった。

 円錐の形をした大きな物体。


「これがさ、実は、魔法ショップで解読してもらったら、かなりレアなマジックアイテムだったんだ。

 その名も!」

幸は続ける。


「これは中に入れた水が決して枯れなく、どんどん沸いて出て水やりが必要ない花瓶なんだって。」

幸が”えっへん”と鼻をならして言う。


「えっ、花瓶?

 あっ……、枯れない……。」

キヨラは何かを察した。


「そう!

 中に入れたものが枯れないんだ!

 だからこの中に入れた種は絶対に枯れないんだよ!」

幸は自信満々に言う。


 幸が考え付いたこのダジャレのような作戦。

一度この花瓶の中に入れた種を、ワタークに渡したのだが、結果的には上手く行き、種は枯れることなく、灯台の根本で数年後、仲睦まじく育っていくのだ。


「それにね。種はマロニエなんだ。

 ほら、ベースキャンプで泉の側で咲いてたやつ。」


 花と言うよりか、植えたのは木だったという事だ。

つまり、成長にもっとずっと時間がかかると言う事。


「ユラーハは精霊だしさ。

 もっと長いスパンで見たらいいんじゃないかなって。

 決して枯れないマロニエの木が育っていくのを二人でゆっくりも守って欲しいんだよ。」

それが幸の解答だった。


「……なるほど、いいかもね!」

キヨラもその案は満足いくものだった。



…………。


……。


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 ここからザンスター・サオールズの後日談。


 打ち上げの時に話し合っていた通り、ケイケスとワタークが二人で統治する2領主制を敷くことになった。


 町民は大喜び。クラウディアの海も綺麗になり、港町として、ザンスター・サオールズは今後どんどん発展していく事になる。


 そしてワタークはユラーハを嫁にもらうことになった。

人間と精霊だが永遠の愛を誓い合った。


 結婚記念日は、幸達がゲリラライブを行った日。

この日は、として、町民全員で盛大にお祭りをする、町の大切な日ともなった。


 また、2領主制という事もあり、ザンスター・サオールズの領主の大きな屋敷には、ケイケスとワタークが両方住むこととなる。


 マツヒ達、奉公人は使える領主が2人に増えたことで、仕事量は単純に倍になったが、やりがいのある楽しい毎日を送っているそうだ。


 またユラーハは、ケイケスも住んでいる屋敷に住み込むには気が引けるし、自分の家があった方が良いと言う事になり、シーガーディアンの塔は残すことになり、預かっていたダンジョンコアはユラーハに返したのだった。

 今は通い妻、通い夫と言う風に、どちらの家にも行ったり来たりの日々だそうだ。


 シーガーディアンの塔は、冒険者や観光客の集客力を持っているので、ダンジョンとして解放されたまま、ユラーハの家であることはごく少数の身内しか知らない。

 どちらにせよ、依然強力なフロアボスが睨みを聞かせているので、勇者やそれ以上の何者かが来ない限りは踏破はされそうにもないだろう。

 

 今後このザンスター・サオールズは二つの灯台が並び建つ美しい港町として、未来永劫栄えていくのだろう。


 元楽奴達は、バーウの村の同様に、音楽の先生や、演奏家として引く手あまたの活躍をしている。

チャーコとミナは二人仲良く学校の音楽の先生をしているらしい。


 町の人々は音楽が大好きなり、これからは徐々に町に音楽が溢れていく事だろう。



 幸達はダンジョン攻略の報酬、30万プオンは手に入れる事は出来なかったが、【成す為の旅】ザンスター・サオールズの町の結果としては大満足だった。


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