第42話「打ち上げ①」

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 大歓声で終わったザンスター・サオールズのゲリラライブ。


 とうに日も暮れ、クラウディアの海は静かに波を蓄えて揺蕩う。

海とは反して、町の喧騒は一層激しく、賑わい溢れる。


               ”ガヤガヤガヤ”


 そう。

 海の町はお祭り騒ぎ。

何故なら、ライブが終わったら当然があるからである。


 ゲリラライブが終わっても観客は全く帰らず興奮が冷めなかったので、演者だけでなく、観客全員、2000人も参加する大打ち上げとなった。


 町中にあるだけの酒が振舞われ、港のステージと客席には、数えきれないほどの魚介類の料理が並んでいた。

 観客として楽しんだ町中の酒屋と飯屋が、我こそはと提供したのだった。


 幸達はステージから降り、客席に雑多に用意された椅子やテーブルに座っていた。

元楽奴のチャーコ達もすぐ隣のテーブルに座っている。

 

 幸の隣はいつも通りピーネが陣取る。

その横には、ミミックに座ったフーガスカも居た。


「あっ!キヨラ!」

ピーネが叫んだ。


「幸!ピーネ!フーガスカ!

 なんとか無事にゲリラライブ出来たね!」

やっと男どもに解放されたキヨラが幸達に駆け寄って来た。

ボンテージは既に脱いでいていつもの旅用の服に着替えていた。


「キヨラ!

 無事で本当に良かった!!」

駆け寄って来たキヨラにハグされる幸。


 アンコールが終わった途端、大興奮の観客達がステージに上がって来て引っ張りダコになった面々。

やっと解放されたのは打ち上げが開始し、酒が振舞われ始めた頃だった。


「幸はお酒は駄目だよ。」

自分は大きなビールジョッキをニコニコして持ちながら言うキヨラ。


「ルーコルアもないからな!」

ピーネも言う。


「わっ、分かってるよ。」

幸は未成年なので酒が飲めない。


「キヨラさん!」

隣の席から、チャーコが泣きながらキヨラにとびかかって来た。


「チャーコ!無事で本当に良かった。」

キヨラがチャーコを抱きしめながら言う。


 キヨラはチャーコと二人での練習をしている時に、チャーコを守るためにケイケスに掴まった。

 なので、チャーコはキヨラの無事を一番に祈っていた。


「私よりも、キヨラさんよ!!

 本当に無事でよかった!!

 とっても心配したんだから!!」

チャーコは続ける。


「ミナもちゃんと戻って来たんだよ!

 ほら、ミナ!

 こっちおいで!

 キヨラさんに挨拶して!」

チャーコが隣の席に向かい手招きしながら言う。

すると隣で飲んでいた楽奴達もみんな幸達の席へやって来た。


「ミナです。

 皆さん、今回の事は本当にありがとうございました。」

招かれた少女が丁寧にお辞儀をする。


 チャーコとそっくりな容姿でピンク髪の美少女がそこにはいた。


「ミナちゃん!

 解放されて良かったね!

 これでおねぇちゃんと一緒にいられるね!」

キヨラが微笑みかける。


「はい!

 立場上はまだ、占有預かりですが、今度ははっきりと連れていかれるならNO!と言います!」

ミナが言う。


 幸のギターの魔力により、 楽奴の状態から解放されたミナは今はしっかりと意志を持って話している。

 ケイケスも幸のギターの魔力に触れたのだ。少しは嫌な性格もましになっているかもしれない。


「あらあら、次もしミナが連れていかれるなら、私も許さないんだから。」

鍵盤ハーモニカの女がミナを抱きしめながら言った。


「そうだね。

 もうきっとみんな大丈夫だよ。」

幸は根拠は無いが確信を持っている。 


 楽奴の呪縛から解放され、町の人も音楽をちゃんと聴いたのだ。

これからはゴミ処理場に追いやられることなく、幸せに元楽奴達も暮らせるはずである。


 幸の【成す為の旅】2回目のライブ。


 ザンスター・サオールズのゲリラライブ。


大成功の打ち上げはまだまだ続く。


…………。


……。


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