第14話「シーガーディアンの塔」
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その塔を近くから見る。
それは、これ以上首が上がらないと言うとこまで見上げても、まだ少し足りない程の高さで見下ろしてくる。
青い海、高い空、そして、塔の爽やかな水色が、青のグラデーションとなり、視覚的にも、このクラウディアの海岸の美しさを際立たせる一因を買っているようだった。
"ガヤガヤ" "ガヤガヤ"
幸達が到着した時、塔の入り口周辺は冒険者で溢れ返っていた。
「"シーガーディアンの塔"やべぇよ!!
こんなに冒険者を募ってもまだ、誰も一階のボスすらクリアしてないんだぜぇ!」
「これのクリア報酬が30万プオンかぁ……。
命がいくつあってもたりねぇよ!」
冒険者が口々に騒いでいた。
――シーガーディアンの塔――
クラウディア海岸に数ヶ月前に突如として生まれたダンジョンの塔だ。
◇◇◇
この異世界には稀にダンジョンが突如発生することがある。
ダンジョンが生まれると、周りに住む魔物が活発化することが多い事から、通常、ダンジョンの発生と共に、近隣の町は冒険者を募り踏破しようとする。
ダンジョンは洞窟型、城型、塔型など、様々なバリエーションで存在するが、今回のシーガーディアンの塔は、塔型。
塔型の場合、最上階にあるとされる、ダンジョンコアを破壊すれば、ダンジョンは消滅する。
◇◇◇
「人がうじゃうじゃいるね。
流石にこれじゃぁピーネと入るの難しそう……。」
幸は頭を悩ませる。
「でも見て!」
キヨラが看板を指差した。
【シーガーディアンの塔
入塔時間 6時〜17時】
「入塔時間?
塔に入る時間が決められてるの?」
幸が言う。
「じゃあその時間外で来れば人はいなさそうだね。」
キヨラが言う。
この世界では、夜になると日中よりも強い魔物が彷徨く傾向がある。
シーガーディアンの塔は、ただでさえ並みの強さではない魔物が出る塔だ。
冒険者への配慮だと考えられる。
しかし、こちらにはピーネがいる。
レベル52の仲間がいれば負ける気はしない。
一行は少し時間を置いて塔に戻って来ることにした。
…………。
……。
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日は水平線の向こうに落ちて、空は青と赤の均衡の中に星を散りばめる。
海はそれを見守る様に深く
「何か、泣きそうになる眺めだね。」
キヨラは海の遠くを見つめて言う。
時間は18時を回っており、シーガーディアンの塔にごった返していた冒険者は、既に帰路に就き、誰も居なくなっていた。
塔の入り口に3人は立ってみる。
「これがシーガーディアンの塔か……。
結構ドキドキするね。」
幸はギターのネックをぎゅっと握って言う。
「幸!
俺がいるから大丈夫だ!」
ピーネは幸を見てにっこり笑いかけた。
入り口に足を踏み入れる。
中は外見同様、スカイブルーを基調とした、爽やかな空色で壁面が統一されていた。
そのせいか、ダンジョンと言って想像するような、鬱屈とした閉塞感も特になく、枝分かれした道が、ただ幸達を待ち構えていた。
ダンジョンと言うだけあって、道は入り組んでおり、そのままでは簡単にはボスの部屋まで辿り着けそうになかった。
「これがダンジョンか……。
あっ、見てよ!」
キヨラは何かを見つけて、指を差す。
【1階ボスの間 こちら→】
1階はマッピングが完成されており、あとはただボスが倒せないというだけのことらしい。
雑魚敵は全て討伐されているようで、エンカウントもない。
ただ、宝箱もすでに開けられているようで、既に蓋が開いており空っぽであった。
幸達はマッピングされたダンジョンを、ただ看板通りに進んでいくだけの簡単なお仕事をするだけであった。
【1階 ボスの間】
「ただ歩いてただけだったけど……。
着いたねボスの間。」
幸が言う。
「着いた!!
早く入ろう!!
この中には敵がいるんだろう?」
ピーネはやっと自分の出番が来ると“ウキウキ”で言う。
「たぶん大丈夫だとは思うけど……。
無理はしないのと、今日はこの1階のボスと戦ったら帰ろうね。」
キヨラが言う。
この世界で今一番強いはずの人間、勇者のレベルが43。
そして、ピーネのレベルは52。それに加えて幸のギター。
レベルマージンで言えば相当余裕があるとは思われる。
しかし、このパーティーはまだ戦闘を行ったことがない初心者なわけで、不測の事態に対応出来るはずはない。
決して慢心しては行けないのだ。
「そうだね!
これが俺達の初めての戦闘だ!
気を付けてかかろう!」
幸が号をとる。
「「おう!!」」
キヨラもピーネも気合を入れる。
“ギーーーッ”
3人はボスの間の大きな扉を押し開けた。
…………。
……。
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