第12話 「ユラーハと恋バナ」
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貴族の男が空を飛び、そして女はこちらを見ていた。
異様な程の透明感のある肌の、美しい顔立ちの女性だった。
彼女もまたスカイブルーのチュニックを身に纏い、水の様に爽やかなヴェールを肩にかけていた。
「わたくし、ユラーハと申します。
皆様に多大なご迷惑をおかけしてしまい……。
申し訳ありませんわ。」
女はそう言いつつも、毅然とした態度である。
「……私達は、大丈夫でした。
変わった方でしたね。
……彼の方が大丈夫でしょうか?」
キヨラは丁寧に言う。そして彼方に飛んで行った男の所在を気にしてみる。
「彼は私の恋人、ワタークと言います。
素敵なお人です。
体力も並みの男よりもあるので大丈夫。」
頬を赤らめてユラーハは言った。
ワタークは、初めてユラーハにあった時に、キヨラやピーネにしたようにして、愛の告白をしたらしい。
ユラーハはそれに、ほだされて、一瞬で恋に落ちたのだそうだ。
しかし、彼は、恋多き男らしく、自分にそういう風に言ったのにも関わらず、色々な女に同じことを言っているらしい。
「最近は海の女に入れ込んでいて……。
キーッ!私というものがありながら……。」
ユラーハは憤慨していった。
「ふーん。
……。
ユラーハは、あの変な男のどこが好きなんだ?」
ピーネが無神経に言う。
「変な所もあるけれど、実はねぇ……。」
ユラーハはそれを聞いて欲しかった!みたいに語りだす。
ユラーハ、ピーネ、キヨラはぺちゃくちゃとガールズトークを始め出す。
こうなると男は居ないみたいに扱われる。
ガールズトークに参入するには、相当のコミュ力、トーク力を持ったヤリラフィーにしか出来ない。
彼女の居ない歴高校2年生の佐倉幸に、そんなアビリティがあるはずもなく、1人ポツンと残されて手持無沙汰になってしまっていた。
幸は先ほど海で遊べなかったことを思い出し、浜辺を歩いてみる事にする。
少し浜辺を歩いていくと、船を送り出すための小さな桟橋を見つけた。
浅瀬よりも、深い海の底が見れると思い、桟橋の切れ目まで来てみる。
そしてそこから見える海の底を覗いてみる。
「わぁー、本当に綺麗だなぁ。
あっ……。
冷たくて気持ちいい。」
幸は、伸びた桟橋から身を乗り出し、腕をつけ海を感じてみた。
――――ここで幸は何かにエンカウントしてしまう――――
幸が海を覗き込んでいると、急に海の底が近くなる。
いや違う、何か栗色の“フワフワ”した物体が近寄ってきていた。
すると、海月と思われたそれは、波に沿う形で流れた。
流れる事でそれが髪だったことが分かった。
二つに分かれたその栗色の間から二つの目が現れたからだ。
幸と二つの目が合う。
幸は、この生き物がなにか分からないうちに、天地すらも分からない状態に陥る。
急にその栗色の髪の生き物が海に浸かっていた幸の手を引っ張ったからだった。
“ドボン”
海は、大きな音を立てて、幸を飲み込んだのであった。
…………。
……。
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