第11話「クラウディアのビーチへ」

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【ゲリラライブまであと27日】


…………。


……。


 空の天辺から"サンサン"と降り注ぐ太陽の光熱は、海の水面に反射し、身体から汗を吸い出してくる。


 幸達は、ピーネがようやく起き出してから、ダンジョンの下見と言う事で、クラウディア海岸に3人で訪れていた。


 クラウディア海岸は"海水浴場"として、非常に有名で、シーズンになると人が溢れかえっているらしい。

 海水浴をしている人がいたら流石にピーネは砂浜に降りては行けないので、まず町を訪れた時と同じ様に、離れた所に降りて、幸とキヨラの2人で視察をすることとなった。


…………。


……。


「ここがクラウディア海岸!!

 海!!青い!

 おぉ!砂浜すっごく綺麗だね!」

キヨラは初の海水浴場に感嘆。


「そうだね!

 砂浜には人がいるかもと思っていたけど、全くいない!

 泳いでる人もいないね。

 これならピーネも一緒で大丈夫だね!」

幸は一安心。


 この異世界【シンフォニア】にも、四季と言う概念はある。

 今は梅雨前。

「春」がそろそろ終わりを迎える頃。

 海開きなど、特に誰かに管理はされてはいないようだが、それでもやはり海水浴としては誰も使わないみたいだ。


 2人はピーネを呼びに行く。


…………。


……。


…………。


「凄い!!

 広いぞ!!

 おっきいぞ!!!」

ピーネは海を見た途端、一気に波際まで飛んで行き、脚で水を蹴り、パシャパシャ遊び始める。


 ハーピーは基本的に森に住む魔物だ。

海には、本能的に自ら近寄る事が無かっただけで、やはり老若男女、人目など気にしなければ海は楽しいものなのである。


 キヨラと幸も後に続いて、砂浜を全力ダッシュだ。


「ピーネ、1人で空飛んで行くのずるい!」

砂浜を必死に走るキヨラの声。

宝石のように、光の粒となった汗が、後ろに溢れて行く。


「うぉ。

 砂浜ダッシュきついな!

 ……。

 うっ……。

 ……ちょっとまってキツ過ぎる……。」

幸は体力も0である。

ダッシュは、海際までまだ半ばと言う位置で終わり、天を仰ぎ酸素を必死に取り込む。


 キヨラも早く海で遊びたくて、途中退場の幸は無視でピーネの所まで走りきり、幸は置いてけぼり。

 可愛い女子と砂浜を走ると言う青春満載のシチュエーション、高二の夢の1つは潰えた。


 幸が脇腹を抱え、ずるずると足を引きずりながら、波打ち際にたどり着いた時には、2人はもう満足して上がってくる所だった。


「幸、遅いよ。

 もう十分楽しんじゃった。」

キヨラは言った。


「だっ、だって……。

 砂浜がこんなにきついなんて……。」

幸はそう言いながら、まさか自分がここまで体力がないとは……、と思う。


「幸!

 もっかい"パシャパシャ"するか?

 俺が"海"かけてやろうか?」


 ピーネがそう言いいかけた所で……。


                 "ドタドタドタ"


「あぁ、マドモアゼル……。

 なんて美しい女性なんだ……。

 そのラピスラズリの様な深蒼に僕は青天の霹靂へきれきを見てしまったよ。

 僕の唯一の灯台になってくれまいか?」


 凄い勢いで走ってきた男がキヨラの前で、いきなり膝を突き首を垂れた。

左腕を手に取ってくれと言わんばかりにキヨラに向けている。

 その男は襞襟ひだえりのシャツにスカイブルーのチェスターコートを着ていて、明らかに貴族と言う風な出で立ちであった。軽やかな空青の衣装でも、流石に海には似合わない。


「えっ……。」

ドン引きなキヨラは、幸の後ろに隠れた。


 “ぜーぜー”言っている幸のさらに前に飛び出たのはピーネ。


「ギャウギャウ(なんだお前)

 ギャオー(俺達になんのようだ)!!」

羽を高く広げ威嚇する。


「あっあぁああ!!

 なんていうことだ……、目前にまるでアレスのような雄々しき瞳で私を見つめる赤い姫が……。

 その2つの魅惑の果実に溺れてしまいたい……。

 どうか私の唯一の灯台に……、」

男はキヨラに向けたポーズのまま謳っていたが、言い終わる前に……。


「ワターク!!

 あなたという人は節操も無くまた!!

 最低よ!!」


                 “ドン”


 憤慨した女が、言うと同時に男を海へ突き飛ばす。


「あぁああああ!

 ユラーハァ!!!」

男は両手の小指と人差し指と親指を立て海の彼方へ飛んで行く。


…。


……。


…………。


………………。


……………………*キラッ


 男は星になった。

そして女は、一行の元へ向かって来る……。


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