第38話「終わり」

**************************************


 別れを告げた3人は、もう振り返らなかった。

 ピーネは袋を腰に巻き、幸とキヨラを掴んで、空へ飛び立つ。

羽を器用に使って、木々の隙間をすり抜けて行く。

 あっという間に迷わずの森を抜けて、まだ日の高い太陽が昇る空に出た。

 

 森の鬱蒼を抜けて一気に現れた空は、幸の目尻を赤くする。

それは青く高くそして、自由でなにより広かった。


 星城高校の屋上で、椅子になりながら見上げた空は、狭く暗くどんよりしていた。

それは地獄の中みたいだと……、幸は思っていた。


 異世界での空は、幸の心を軽くして何でもできると思わせてくれる。

これからのこの楽奴解放への冒険が大団円で終われると暗示するかのように……。

 

 幸は思う。


      _____異世界でもギターしかなかった_____


 でもそれでもいいのだ。

ピーネ、キヨラという大切な仲間。


 みんなで笑って演奏して、異世界を旅する。

そんな素晴らしい事が他にあるだろうか。


 音楽以外の才能0の佐倉幸。

彼が奏でる“異世界革命の唄”。


 今始まったばかりである。


…………。


……。


**************************************

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る