第36話「さよなら バーウの村」
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今後の方向も決まり、一緒に旅することとなった3人は、そろそろこの村をあとにすることを考える。
「長い間泊まっても悪いしね。
すること決まったんだし、勢いでさ動き出そう!
ピーネも起きてるしね。」
今後もピーネの寝起きで冒険がストップすることがありそうと揶揄も含めて言うキヨラ。
「うん!
行こう!
でも、最後に異種族混合村の皆にも挨拶しなきゃね。」
幸は言う。
「おぅ!
俺の翼でひとっとびだ!」
ピーネはすぐにでも猛禽類のように二人を捕まえて飛び去る勢い。
まずは、服屋と鍛冶屋に頼んでいるモノをもらいに行かなければならない。
3人はまずそれを片付けることにする。
「あらぁ、やっと来てくれたのね。
あら!今度はピーネちゃんもいるじゃない!」
オネェが言う。
「そうなんだ!
俺も一緒に行くんだ!」
嬉しそうに言う。
「やだぁ、それ先言っといてよ。
ピーネちゃんの服も持ってくるわ。」
先に用意していた、キヨラの服と、幸の服を渡して、ピーネをじっと見るオネェ。
ピーネは女面鳥身の身体である。
魔物に服を着るという概念があるのかは分からないが、ピーネの場合、下は丸裸で、ヘソから上にだけ、申し訳程度の布を着ていて局部が隠れている感じだ。
「これなんてどう?
これミスリルが入ってるしピーネちゃんの綺麗な赤い髪色にも似あうのよ。」
オネェが持ってきたのは、ブラジャーの様な形の胸当てだった。
「おお!
なんだそれ!
つけてくれ!!」
ピーネはおもむろに来ていた布を外す。
「ほら!
幸つけて!!」
丸見えの局部をブラブラさせてピーネが幸にすがる。
「ちょっと!!
無理だよ!俺には!!」
思わず目を覆い後ろを向く幸。
「あらぁ蒼いわねぇ……。
紳士のたしなみなのに……。」
オネェは楽しそう。
ひとまずもらうモノをもらい。
お礼を言って退散する3人。
次に向かったのは、鍛冶屋だった。
鍛冶屋からケースを受け取る幸。
そこでもお礼を言い、退散した。
幸がもらったケースはミスリル製で非常に軽い。
鍛冶屋も流石職人という所で、ギターはピッタリ収まった。
あんなにかさばって持ち歩きが大変だったギターが、今は取っ手を持って運べたり背中に掛けて背負えるようになった。
「これで旅が劇的にしやすくなるよ……。」
実は泣くほど嬉しい幸。実際ちょっと泣いていた。
言える人達みんなに感謝の言葉を伝えて、幸達は村のエントランスまで来た。
そこには3人のミスリルのセットアップの警備兵と、楽奴であったリズム隊の2人がいた。
「おう、お前ら!
もう行っちまうんだな……。」
名残惜しそうに見つめてくる警備兵。
「うん、ホントにありがとう。
みんなのおかげの大成功だったんだ!」
思わずガシッと3人警備兵に抱き着く幸。
警備兵たちも各々肩を抱き円陣の様な形になっている。
「キヨラ……、行っちまうんだな……。
俺達はここで、村の人達に音楽を伝えていくよ。
……だからここでお別れだ。」
リズム隊がつぶやく。
バーウの村の楽奴は解放された。
音楽の無い世界で生きていた村の人達は、今音楽に飢えている状態だ。
ご飯を食べる時、寝る時、運動する時、様々にいつだって音楽には需要がある。
楽奴だった2人は今引っ張りダコで音楽を奏でているそう。
「……。
そうね……。
色々あったけど、あなた達とここで演奏出来たのはよかったわ。
最後のライブ……、本当に楽しかったしね。」
キヨラは少し複雑な自分の気持ちを上手くは表現出来なかったが、素直に応えた。
「そうだ。
最後にこれを渡さないと……。」
そう言ってキヨラの手の上に差し出した。
「ん?
えっこれって!」
キヨラの手に入れられたものはコイン袋であった。
「あぁ、お前らが旅に出るのは知ってたからな。
楽奴だったキヨラが金なんて持ってるわけないしな。
村の人達にこの話をして、少しずつだけどってみんなで出し合ったんだ。」
警備兵はハニカミながら言う。
「「あっありがとう……。」」
キヨラと幸は温かいこの気持ちを感謝の言葉で返したのだった。
「「「さよなら。バーウの村」」」
…………。
……。
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