第4話 ⭐瑠璃さん家⭐
今日は朝から雨だ。
こんな日のボクはお気に入りのお家へ行く。
瑠璃さんのお家だ。
島の中では珍しく新しい、大きな一軒家だ。
ぴちゃぴちゃと濡れた足元を早足で歩いて、たどり着いた。
このお家は屋根がたくさんあるので、ボクは雨の日は必ずここにやってくる。
瑠璃さんは黒くて長い髪の毛をいつも束ねている。スラッとしていて、とても綺麗な顔立ちをしている。島では有名な美人さんだ。
のら猫達は皆、雨の日はここに集まってくる。
『にゃーぁ』
すると、部屋の中から瑠璃さんが言った。
『あら、今日は雨だから、随分とお客様が多いわね!』
瑠璃さんの優しい声が聞こえる。
『にゃぁ。にゃぁ~~』
『あ、オッド!こんにちわ!』
ボクのここでの名前は(オッド)。
そう、ボクの瞳が人間から(オッドアイ)と呼ばれているから。
ボクはこの(オッド)という名前は気に入っている。何だか小説に出てくる主人公みたいでカッコいいだろ?
今日は、娘の結ちゃんもいるぞ。
結ちゃんは中学2年生。瑠璃さんに似ていて、可愛いらしい顔をしている。睫毛がとっても長くて、ボクは結ちゃんの瞳が大好きなんだ。
『おいでー、オッド!』
結ちゃんも、どうやらボクの事がお気に入りのようだ。
瑠璃さんや結ちゃんに名前を呼ばれると嬉しくなって、体をすりすりとして甘えてしまう。
『にゃーーーん』
『黒スケ、チョコ、オッド、ほらご飯だよ!おいで!』
黒スケもチョコもボクと同じ、この島ののら猫だ。
瑠璃さんがくれたのは、猫の缶詰めだった。
(早く食べなきゃ、黒スケに全部取られてしまう!)
ボクは慌てて、口いっぱいに頬張って飲み込んだ。
『ゆっくりとお食べ!オッド、詰まっちゃうよ!』
結ちゃんが、ボクの背中を撫でる。
(結ちゃんだから、我慢するか。)
ボクは食べている時に触られるのが好きではないが、大好きな結ちゃんと瑠璃さんだけは特別に許す事にしている。
黒スケもチョコも缶詰めを食べ終わると満足げに毛繕いをしている。
ボクだって同じだ。
ペロペロと口の周りを舐めて、手で顔を撫でる。
(あー、おいしかった。)
黒スケはガレージの端っこ、チョコは玄関の方に行ってしまった。
『オッド、おいで!』
結ちゃんに呼ばれた。ボクはまた、結ちゃんに体をすりすりとする。
瑠璃さんがボクの頭を撫でてくれる。
『にゃぁぉ~~』
ボクは思いっきり二人に甘える。
(ここはすっごく居心地がいい。)
瑠璃さんと結ちゃんといる時間が1番好きなんだ。
この二人はもともとこの島の人ではなかった。
前に野原さんが言ってた。
『この島に、新しい人がくるんだと!
あの白い大きなお家の勇二さんが再婚して、奥さんとその娘さんが引っ越してくるよ!中学生っていってたかなぁ。ぷちも遊びに行って仲良くなるんだよー。お父さん亡くなってから、細田さんの奥さん一人暮らしで心配だって。
息子の勇二さんも向こうの仕事辞めてこっちで働くんだと。奥さんとその娘さんも一緒に住んでくれるから、細田さん喜んでたわー!』と、ボクに一生懸命教えてくれた。
島には人が少ないから嬉しいって、野原さんも喜んでたんだ。
ある日、結ちゃんがボクに教えてくれた。
『パパはね、結のホントのパパではないけど。ママと結婚したから結のパパになったんだよ!私ね、パパがいなかったから、とっても嬉しいんだ!』
島に来てすぐの結ちゃんは笑顔で、かつおぶしをボクにくれながら話をしてくれたっけな。
ボクは瑠璃さんと結ちゃんに撫でてもらいながら、気持ち良くてゴロゴロと喉を鳴らした。
(今日は1日雨が降ってそうだから、ここにずっといよう)
ボクはこっそりと結ちゃんの部屋の窓の外のスペースで雨をよけながら1日を過ごした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます