第2話 ⭐漁師達⭐

ここは小さな島で海に囲まれている為、漁師さんが多い。

まだ暗い夜中に船を出して、明るくなったら戻ってくる。

たまに気が向くと、ボクはこの漁師達の所に来てお魚を分けて貰うんだ。

『おーい、のら!こっちおいで~』


ここでのボクの名前は(のら)。

のら猫ののらだ。なんとも単純だろ?

ここで貰えるお魚は新鮮で美味しいんだ。

ボクは生のお魚はキライ。

漁師達が仕事を終えて、魚を焼いてお酒を飲み始めた。波に揺れながら踏ん張って、網を必死で引っ張っている漁師さん達の手は、いつもキズだらけでゴツゴツとしている。

その手で撫でて貰うのも悪くはない。


みんなでお魚を焼いて、お酒を飲んで豪快に笑っている。

(あー、いい匂い!これを待っていたんだ。)


近づいていくとおじさんが声をかけてくれる。

『のら~、お前も腹へってっか?食うか?』

『にゃぁ~~』

『ほれっ。ちと、あちぃかな。。。』

と、焼きたての魚の身をお皿に乗せてくれる。


ボクはお魚をペロペロと食べた。

(あー熱いけど、美味しい!!)

『のら~、うまいだろー!俺達が捕ってきた魚だからな。』

(おかわりちょーだい!!!)

ボクは甘えた声を出してみる。

『にやぁ~~』

『そうかそうか、のら、ほれっ!』

おじさんが、またお皿に魚を乗せてくれた。

(はー、うまい!うまい!)

ボクは美味しいご飯を食べていると、匂いを嗅ぎ付けた他のネコ達も少しずつ集まってきた。


『はら~、みんな集まってきたかぁ。みんなも食べろ!仲良くな!』

おじさんは、お皿にまた魚を乗せた。

ボクはお腹が少しふくれたので、他のネコ達に残りを譲る事にした。

『あれぇー、のら。もーいーのか?またこいよなぁー!』


(他ののら猫達にもあげてくれ!ボクは最初の一口で、ちょっとヤケドしちゃったから。)

『おっ、チビもきたかぁ!』

今度は他ののら猫達が食べる番だ。


お魚は美味しいけれど。

漁師さん達が魚を水揚げしたり、魚を分けたりする場所だから。

お仕事が終わると水をホースで撒きながら、デッキブラシでゴシゴシこするんだ。

だから、どうしても地面がいつも濡れていて、ボクはそれがあまり好きではない。

なるべく乾いた場所を探しながら歩いて、濡れた足の裏を乾かすように、ボクはゆっくりとその場を離れていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る