たくさん名前を持つボク

綴。

第1話 ⭐ボクの話⭐

青く澄きとおった綺麗な海に囲まれた小さな島がある。

ボクは、その小さな島に住んでいるのら猫。

名前はたくさんある。


何だか昔の誰かが書いた小説のような始まりだが。。

ボクはのら猫だから、島のイロイロなお家に巡回に行くとその家の主が勝手につけた名前で呼ばれている。

だから、名前はたくさんある。


ボクはいつからこの島にいるのかわからない。何歳なのか、誕生日も知らない。

ただ、この島にパパとママや、お兄ちゃんやお姉ちゃんも、妹や弟とかもいるのかもしれないけれど。


気がつけばボクはひとりぼっちだった。

まぁ、ひとりぼっちでも寂しくはないし。

雨が降れば濡れない場所も知っているし、寒い夜は暖かいお家に入り込める。

とにかくボクはのら猫でも幸せだ。



ボクの瞳は人間から(オッドアイ)と呼ばれているらしい。両方の瞳の色が違うんだって。

体の毛は白くてお尻のところにポツンと黒いプチがあるようだ。毛繕いをしている時に、時々視線に入ってくるから、追いかけたくなるんだけど。

しっぽは生まれつきなのか、くるっと曲がってしまっていて、意地悪なのら猫から、たまにおちょくられる。

人間からは(幸せのカギしっぽ)と言われている。

そんな時はちょっと自慢げにしっぽを振って見せてやるんだ!



ボクは人間の言葉がきちんと理解できるし、その人間の考えている事や記憶が全て見える。

人間の言葉が理解できるのら猫達は他にもたくさんいるが記憶が見えるのら猫はボクだけだろう。多分だけど。

『にゃーーー』

猫なので、言葉は話せない。

だから島の人たちは、のら猫のボクにいっぱいお話してくれるんだ。


ボクにだって感情があるから、時には聞きたくない時もあるんだけど。

お腹が空いた時や退屈な時に相手にしてもらえなくなると困るから、仕方なく聞いてあげるのだ。

あくまでも、仕方なくだ。

たまには逃げる。



ボクはこの小さな島で、いろんな人間とたくさんののら猫達と生活をしているんだ。


そろそろお腹が空いてきたので、今日の巡回をはじめようかな。

朝陽が昇りはじめた、寒い寒い冬の朝だ。


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