合わない恋人
梅福三鶯
第1話
「天気の中で何が好き?」
笑う彼女は無邪気に尋ねる。
「晴れ?」
俺が答えれば、むうっとふくれっ面。
「名前に『雨』が入ってるのに、晴れなんだー」
少し不服そうに話す。
「雨ってつまんねえじゃん。憂鬱だし、煩わしいしさ」
晴れ渡った空の方が清々しいじゃん。って、同意を促してみるが、ここで同調する彼女ではない。
「君ー。情緒ってものがありませんなあー。晴れなんて照ってるだけで、わびさびも何もない」
本当、合わないよね。
不思議そうに上目遣いで俺を見る彼女に、そこだけは2人同調する。
俺はコーヒー派。彼女は紅茶派。
理数系が俺なら文系は彼女で、そばが好きなら相手はうどんが好き。何もかも合わない、性格すらも。
それでも2人、手を繫いで歩く。
俺が彼女の歩調から先を行かないように、手で制御されて。今日も週末の時間、2人きりのデート。
何年経っても合わない2人は議論しながら、ゆったりと年を重ねていく。
そんな関係があってもいいじゃないか。恋人たちが幸せなら。
合わないのに好き合うおかしな2人。合わないのに会うと楽しくて不思議な2人。
俺は何があっても、周りから反対されたってこの子との道を進んで行こうと思う。ずっとこの幸せを守って行こう。
未来が握られている2人の手を硬く繫いで。
完
合わない恋人 梅福三鶯 @kumokuro358
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます