継ぎ接ぎの恋心

●感想
失恋の場面から始まる『恋』のお話であり、恋人の裏切りによって心を砕かれた女性が、新たな恋によって継ぎ接ぎながら再び恋心を取り戻すものの……という、二転三転するお話です。

掌編であり、テンポよく進むため気軽に読み進められる点もグッドでした。

オチもジャンルごと変えてきており、意外性があって良かったです。短いながらも楽しめる掌編で、ちょっとした空き時間に読むにはぴったりの内容だと感じました。

●気になった点(自主企画のため記載)
下記はあくまで私個人の感想ですので、基本は聞き流す程度でお願いします。

・具体性
全体を通して具体性に乏しく、一つ一つの出来事が唐突な印象を受けました。

例:「私を裏切るつもりなのね」
 →『さらに問い詰める』とありますが、問い詰めるのであれば『どうしてなの?」になるかと思います。「裏切るつもりなのね」に繋げるとしたら、その間に、女性物の香水やLINEのやりとりなど「他の女を感じた記憶」や友人に「彼氏に裏切られている」と言われたなど、具体的に「思い当たる節」があればと思いました。

例:『家に着くと私は話の続きを彼から聞こうとした。』
 →本屋で言い出したのはなぜ、という疑問が、家まで着いて行ってしまったことで更に強くなりました。例として「主人公は裏切られていると薄々気づいており、いつもの本屋で挽回しようとしたが、つい問いただしてしまい、彼氏が別れを切り出した」など、突発的であった理由が具体的に欲しいと感じました。

例『彼はやっと表情を変え、新しい女の話を始めた。
「僕は彼女を愛している。君はもう必要ない」
 彼から初めて聞くその言葉』
→具体的に、何がどう主人公と違っていたのか、新しい女性はどう素晴らしいのか、などがないと、主人公がどれほど傷ついたか感じ取り辛く感じました。これはオチにも関わってくるので、ここを具体的にして感情移入させた方が良いと思いました。

例:『彼が私にくれた言葉も気持ちも愛情も、常に私の心の動力となっていた。』
→こちらも上記と同様に、具体的に何があったのかを描写したほうが、主人公の気持ちに入りやすく、オチにつなげやすいと感じました。

例:『今の彼はどちらかといえばさっぱりしている。~』
→ここはオチに繋げる部分として、どちらとも読み取れる出来事や描写、たとえば『全然外に出かけない』などを具体的に描いた方が良いかと思いました。

意図的ではあると思いますが『彼』の外見描写についても、このオチだと多少はあった方がよいとも思います。
台詞も関係性や過去を感じさせるものではないため、例としてベタな台詞ですが『どうしてどうしてって、君はそればっかりだ。どうしてそうなると思う? 考えてもみないのか?』など、関係性や前後を想像させる作りにしても良いと感じました。

・その他
以下は守らなくても大丈夫ですが、一応ルールとしてあるため記載いたします。
『「どうして・・・」』
→一般的には三点リーダを偶数個重ねて使用します。『どうして……』
『え?なにが?」
→一般的には「?」や「!」の後は一字空けを行います。「え? なにが?」

※気になった点はあくまで、個人の感想です。

全体的には読みやすい掌編であり、構成も考えられた楽しい作品だと思いますので、今後の活動も楽しみにさせて戴きます。

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